日本の文学賞

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坂の途中の家

芸術選奨文部科学大臣新人賞

坂の途中の家

角田光代(著)

虐待事件の裁判に補充裁判員として関わった女性が、家庭の光と影を見つめ直す心理サスペンス。

家族心理サスペンス裁判虐待

作品情報

最愛の娘を殺した母親は、私かもしれない。

角田光代の長編を朝日新聞出版が刊行した作品で、のちに朝日文庫版も出た。家庭内の不穏さを描く代表的作品のひとつ。

書籍情報

出版社
朝日新聞出版
発売日
2016-01-07
ページ数
424ページ
言語
日本語
サイズ
18.8 x 12.8 x 2.7 cm
ISBN-13
9784022513458
ISBN-10
4022513454
価格
1000 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

2007年『八日目の蝉』、2012年『紙の月』、 そして2016年――著者の新たな代表作が誕生する! 最愛の娘を殺した母親は、私かもしれない――。 虐待事件の補充裁判員になった里沙子は、子どもを殺した母親をめぐる証言にふれるうち、いつしか彼女の境遇に自らを重ねていくのだった。 社会を震撼させた乳幼児虐待事件と〈家族〉であることの光と闇に迫る心理サスペンス。 感情移入度100パーセントの社会派エンターテインメント! 私は、果たして、文香を愛しているんだろうか。もちろん愛していると思っている。いなくなったらと考えただけで胸がふさがる思いがする。(略)それでも、文香を自分より大切なものと思えるだろうか。かわいい、かけがえのない子どもと思えるだろうか。(本文より)

レビュー

  • 夫婦、親子の関係性を見直したい人におすすめ

    これ、すごい本だった…。 自分をえぐられる。深掘りしすぎて不安定になるくらい。 読む人間の経歴によって違ってくると思うのだけど、子供がいる人は本当に読むのがしんどいと思う。なんていうか、すごくいい本なんだけど、これに耐えられない人もいるかもしれないと思ってうかつに薦められない…。 自分はずっと封印してきた幼いころの自分から子育てしていたころまでを一気に見つめなおさざるを得なかった。本当に読んでて苦しくて、早く読み終わりたくてたまらなかった。そして最後が来るのも怖かった。 物語の中に誰もが自分を見出すと思う。 それだと指摘ができない悪意。「よかれと思って」とかいうのよりもっと質が悪い悪意。残酷さ。自分の中にあるし、自分もそれに怯えている。 そして自分が喜んだり苦しいと思ったりするのは、こうやって自分が見ている世界は、自分の心が作り出しているのだなというのもじわじわ感じられる。一瞬でひっくり返る心、疑い、愛、よろこび、怒り、悲しみ。 人間関係に悩む人、一回こういうのを読んでみるのもありだと思う。 素晴らしい本だ。

  • 本当のテーマはジェンダー問題

    あらすじを読むと裁判員制度や虐待がテーマのように思えますが、実際はジェンダー問題の話だったように思います。私自身、主人公と属性が似た部分もあるのですが、深く考えることから逃げ、社会で常識とされていることや楽な方に流されたり、感じた違和感に蓋をしてしまうことで「何もない自分」になってきているのではと恐怖を感じる部分もありました。さすが角田光代という感じです。

  • 孤独な母親たち

    三回以上読み返している。 その度に戦慄する。 2人の女性の孤独と彼女らを追いつめて来た透明な悪意とに。わたしには子どもがいない。 しかし、この母親たちに子どももいない自分がこんなにも感情移入するのは何故なんだろうと思いながら読んでいた。 そして今回ようやくわかった気がする。 わたしが築いて来た社会的連続性を優しく巧妙に断ち切り、怒鳴りもせず暴力も振るわずにゆっくりと確実に自尊心を奪うパートナーとの生活。 訪れる人は整ったインテリアを褒め、わたしも何一つ欠けているものなどないかのように振る舞う。しかしわたしの手の中には砂粒さえないのだ。 コミュニケーションを取ろうとすればするほど言語はすれ違い、弱った時を見透かすように崖の端で蹴られる。怪我をして自信をなくし、暴力を振るった主に養われ労られ、社会は日に日に遠くなる。 暴力の形も色もさまざまで、自分以外の人には見えない。 自分でもそれが暴力であることをこの主人公のように否定し続けて来た。 ただ、この小説は突きつけて来る。 「あなたは本当に今のようなあなただったの?」 「何に怯えているの?」 「どうしてそんなに無力感に打ちひしがれているの?」 と。 家庭という密室にて、自己愛性人格障害やモラルハラスメントに相対して苦しむ、あるいはカサンドラ症候群の女性たちには辛い小説かもしれない。 しかし「自分自身で思考すること」を取り戻すきっかけにはなるかもしれない。

  • 外からは見えない心の揺れ、じれったい

    主人公は、ある事件の被告に、補充裁判員というまったく一方的な形でかかわる。 法廷で耳に入ってくる検察側、弁護側からのさまざまの情報によって 彼女の心は揺さぶられ続け、自分の中に沈んでいた澱、自覚したくない現実に気づく。 夫と幼い子どもと自分。たった3人の中でしか存在していない、自分。 至らなさばかりをクローズアップしてしまう自分。 社会との接点を見失ってしまった主人公はあまりに影がうすく、儚い。 角田さんがつづる、主人公の思いや感情は発展しようのない繰り言かもしれない。 (じっさい読んでいて、じれったく、ずーんと疲れてしまう。 角田さんの『森に眠る魚』を思い出した) 閉塞した毎日に入り込んでしまうのは、 子育てに右往左往している母だからということが理由ではないと思う。 出口を見つけられないのは、主人公だけではない。 物語の終盤、主人公が補充裁判員としての自分の考えを述べるシーンで、 ようやく私はほっとした。儚い姿の主人公に、細い線ではあるが輪郭ができたように思えた。 主人公のじれったさよりも、イライラさせられたのは 裁判員の一員として登場する歳を重ねた女性と、義母である。 彼女たちは、常識やあるべき姿によって、現実を諮る。 その正義ゆえに他者を慮ることができない。 その狭隘さ。恐ろしさを感じる。

  • 重すぎてリアルで無理でした

    ただの小説とはわかっているのだけど 生後10か月の子がいる私にとってひとつひとつの描写がリアルにとらえられて、重すぎた。 序盤の公判2日目まで読み、以降、進められなかった。 怖いくらい心の中に重くのしかかってくるのはさすが角田光代さん…。

  • 裁判員制度

    角田さんの本好きでほかにもたくさん読んでます。対岸の彼女とか空中庭園とか。 普通の主婦が補欠の裁判員に選ばれ裁判傍聴するうち虐待する主婦の気持ち感情に重なり 自分の事のように裁判見聞きするようになる。。。描写が丁寧で主婦の日常と人間関係軋轢 姑近所の人の人間関係が浮き彫りになりどんな平凡な人間でも1歩間違うと子供を虐待してしまうかもしれないという危惧がある話。裁判の部分がすごく長く見ていてしんどい部分もあったけどよみごたえがありました あわせてwowwow柴崎コウさん主演でドラマ化されててドラマの方も面白いです 心理的に凄く重く考えさせられます。。。

  • 疑心暗鬼

    よく気がつく人は、何でもよく見てるってこと。夫も義母もそういうタイプ。見られて嫌なら一人で育てれば?無理だと思うよ。義母が作ってくれたお料理は重くてたまらないのに、ビールは重くないなんてね。

  • 痛いほどよくわかるのは母親との記憶の方

    未婚で子供なしの女です。両親とも他界し身内は世帯を持った弟のみです そういう女の人生の王道?から外れた女の感想としては正直、子どもに対しての感情は他人事として冷静に読めました 徹底的に冷めた目で見ても興味深く面白かったです 我が身にひきつけて切実さを感じたのは残りわずか数ページに書いてあった理沙子の母親への記憶。。まさに私と同じでした 母は表向きは私を応援してるふりをしましたが自分の不本意きわまりない結婚生活のうさを晴らしたいのかそれとも自分より若い同性への単なる嫉妬なのかわかりませんが、私をことあるごとにけなしまくり私が友人と遊ぶのを嫌い自分と違う自由で幸福な人生を選ぶのを全力で阻止しました 自分のような男に依存するだけの人生を選んで苦しんでほしくないという純粋な母心と、一人の女としては自分とは違ってあらゆる選択肢を選べる時代に生まれた娘に対する羨望と嫉妬でおそらく母親自身も切り裂かれていたんでしょう 母の私に対する態度と弟(母にとっては息子)に対する態度の違いは死ぬまで変わりませんでした よくあることですけど娘は奴隷扱い、息子は王子様→夫で満たされなかった男性からの愛を代替的に満たしたんでしょうね 女の人は思春期をすぎたら母親を冷静に見たほうがいいですよ。母親なんてそんなきれいなもんじゃないです 母親といえど人間、一人の人間の一つの属性にすぎないです(世間はそう見てないようですけどね)

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