作品情報
怖がり作家と最恐編集者が、怪音声を発する霊の正体を追う受賞作。
KADOKAWA の受賞作発売告知では「文字列の幽霊」を改題して『奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い』として刊行したことが確認できます。版元ドットコムでは文庫判、240ページ、ISBN 9784041061374、ISBN-10 4041061377、2017年9月発売と確認できます。Amazon JP では ISBN-10 相当の ASIN 経路を確認対象とし、紙文庫の asin と isbn10 を同値で補完しました。
レビュー要約
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霊の怖さだけで押すのではなく、作家と編集者の掛け合いと、怪異が言葉や噂と結びつく仕掛けが読みどころになっている。軽い語り口の奥に、創作そのものへの不穏さが残る。
書籍情報
- 出版社
- KADOKAWA
- 発売日
- 2017-09-23
- ページ数
- 240ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 10.6 x 1 x 14.9 cm
- ISBN-13
- 9784041061374
- ISBN-10
- 4041061377
- 価格
- 572 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品
臆病作家が怪異に挑む! 第24回日本ホラー小説大賞・優秀賞受賞作 霊の見える新人ホラー作家の熊野惣介は、怪奇小説雑誌『奇奇奇譚』の編集者・善知鳥とともに、新作のネタを探していた。心霊スポットを取材するなかで、姿はさまざまだが、同じ不気味な音を発する霊と立て続けに遭遇する。共通点を調べるうち、ふたりはある人物にたどり着く。霊たちはいったい何を伝えようとしているのか? 怖がり作家と最恐編集者のコンビが怪音声の謎に挑む、第24回日本ホラー小説大賞・優秀賞受賞作!
●木犀 あこ:1983年徳島県生まれ。奈良女子大学文学部卒。「文字列の幽霊」で第24回日本ホラー小説大賞優秀賞を受賞。
レビュー
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意識や思考についてはどうなのか?
長編の「幽霊のコンテクスト」と短編「逆さ霊の怪」を収録。物語内の時系列的には後者が先となるが、本書の中心はもちろん前者「幽霊のコンテクスト」だ。実際に「見える」作家が編集者に言わば「振り回される」というタイプの物語だが、ホラーとは言いながらページが進むごとに「怖い」要素が少なくなるのはどうしても問題となるだろう。ただし、登場する「異様な何か」に対する「解釈」(それがタイトルの「コンテクスト」なのだが)はかなり斬新だと言える。とは言うものの、これも物語内の「解釈」を成り立たせるにはその前提としての「意識の存在」が欠かせないとも思うのだが、そこに触れると話はさらに複雑になるだろうから痛し痒しではあるだろう。全体としては、具体例に乏しい理論派の作品という印象。
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切り口を変え新しい恐怖の形を試行錯誤する作者の姿勢を見たように思う
謎の編集者にリードされる駆け出しの怪奇作家(但し霊が視える)…逆に読者の興味を惹くならワーカーという立場で読者との距離を感じさせない編集者より、創作者である作家の方をミステリアスに描く方が興味を惹きやすそうで良さそうだが、違って作者は創作の工夫とかそうした作品の産みの苦しみやらを作品の中に表現されたかったように思われる。そして、作品からは切り口を変えて試行錯誤された新しい恐怖の形を考えておられる作者の姿勢を垣間見たように思うのだがどうだろう?
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新しいホラー小説
ホラー文庫から刊行されていますが、巻末の筆者の解説(受賞時の言葉?)には「メタホラー小説」とあります。 作家と編集者を主人公とし、「ホラー小説を書く」という目的のもと、怪奇現象をある意味でロジカルに解き明かしていくため、怖さよりはその過程を楽しむ流れになっているでしょう。 この流れが楽しいです。ミステリの範疇に入ると思うのですが、霊の正体・メカニズムはある種SF的な要素も含まれています。 メタ的に、いわば一歩引いた視点で怪奇に挑むことで、パロディ的なおかしさと笑いも生み出されています。 既存の枠に当てはまらない、いろいろと新しい要素のある一冊でした。 何より主人公たちのキャラクターのやりとりと関係性が好みであったので、シリーズものとして続きが出ればと思っています。
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ぜひシリーズ化して欲しい
「奇奇奇譚編集部」というタイトル(ホラー作家は……のサブタイトルはちょっとどうかと思いましたが色々あるんでしょう)。確かに「文字列の幽霊」の方がイケています。 ですが宮部みゆき氏の書評の通り、本のカバーまでにも物語の謎解きの上で大ヒントになり得るフレーズが上がってしまう事、そして何よりこの初見のバディに大きな奥行や広がりが感じられ、ぜひシリーズ化してほしい、彼らのこれまでの話やこれからの話が読みたい!と思わせる力がこの第1作にあったからではないでしょうか。 もう10作ほど刊行されてるような気すらするのは、作者さんの練度によるものでしょうか。 圧のあるホラー、怖さというエンターテイメントは確かに今作では控え目です。 意図的に控えめにしてあるのでは?と思えます。 このままパワーフレーズで畳み掛ければゾクッと来る素敵なホラー描写の出来上がり……な場面で意図的に方向転換というような感じがあり、つまりその気になれば圧あるホラーも書けるのでは。 しかし今回作者さんが最も観せるべきはこのバディ物の基本スタンスと、作者さんの追い求める恐怖と笑いの共存である事から、私は良かったと思います。 ホラーを含め怪奇の世界は大変に枝分かれが多く、純粋に怖い個人的幽霊もの、筋の通った民俗学的なもの、土着もの、人間が一番怖いサイコ系やバイオレンス、都市伝説、異界もの、わけのわからないもの、他…、かと思えば泣ける系もあり、何か間違えば背中合わせの笑いへとひっくり返ります。 今作は映画のようにホラーからの謎解きの構成でしたが(本当に構成力の安定感が凄い)、ぜひとも短編を含めてシリーズ化し、いずれ熊野の処女作の中身やそれにまつわる話、誰も見た事のないホラー小説を読ませてくれたらと期待しています。と同時に、善知鳥によるホラーへの発想の転換も、読み手として非常に楽しみでならないです。 新しい怪奇の世界を開拓しつつ、現代まで連綿と続く民間伝承・怪奇の様々なテイストを楽しめるシリーズになってくれたらと…… そしておそらくまだ本領を発揮されていないと思われるので期待を込めて星4で!
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ホラーではなくオカルトミステリー
日本ホラー大賞優秀賞。 表紙やタイトルからキャラ文芸っぽさが漂う。好みではないけど、メタホラーというジャンルに惹かれて買ったものの…… 確かにメタだけど、これはオカルトミステリーだろう。ホラーというなら多少の怖さは欲しかった。 ただ、ホラーではなくオカルト小説として読んだら出来は上々。ミステリ的な理詰めの道程は楽しいし、真相にはちょっぴり切ないオチと意外性があってよかった。 霊をいきなり轢こうとする善知鳥のキャラは面白いし、メタ的なギャクは魅力的。表紙からもわかるように、バディものとしてはあざといというか狙いすぎな気もするけど……男でもキュンとくるものがある。ズルい。 文章も上手いし、このあらすじをこのページ数で収めてるのは、無駄のない構成というか、そうとう書き慣れてるんだろうなぁ、と。新人かと思いきや、元々別の賞を獲ってからの再デビューのようで、主人公のモデルは作者自身なのかな。 ただ、ミステリ的な謎解きとしての、音素とか文脈がどうとかのくだりは……あんまりしっくり来ないかなって……作者が好きなネタだったのかな? 二本目は意外性もありながら、正体がわかった瞬間の今までの謎が解ける感じがちょうど良かった。一本目よりは、ちょっとホラー的な展開もあったし。より短いページ数でホラー、ミステリ、ドラマの三要素が上手く織り込まれてて、二本目のが上手かったと思った。二作目はもっと良くなってるのかもしれない、と期待できる一作だった。
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魅力的なキャラクター
キャラクターがとても魅力的ですね。 文章も滑らかで、ストーリーも面白い。 肝心のホラーの部分ですが、あまり怖くはないです。 正体がわかるまで、怪異に遭遇している場面の初めの方は結構怖いというかハラハラするんですが。 正体がわかってしまうと怖いというより感動モノかほっこり系。 でも全然怖くないという訳ではないし、ただ怖さで驚かそうとする小説よりもいいんじゃないでしょうか。 続編も読んでみたいなと思える本でした。
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ホラー小説に非ず
評者は本書の理想的読者ではないと思われるので、以下の評もあくまで一個人の意見でしかないことをご理解頂きたいと思う。 その上で申し上げると、本書はホラー小説として破綻している。 何をもってホラー小説、あるいはホラーというジャンルを定義付けするのか、それは十人十色であろうが、少なくとも本書はまったく怖くない。 これはホラー小説を名乗っている限り致命的な欠陥であると言わざるを得ないのではないか。 著者は新人賞である日本ホラー小説大賞優秀賞受賞者であるが、かつて別の筆名で作品を世に出しているので、新人扱いとはいえ素人ではない。 このあたりの経験が、恐らく作家熊野の人物像に一役買っているのではないかと思われるが、その割に物語全体にリアリティが著しく欠如している。 ホラー小説とはエンタメでもあるので、リアリティのバランス配分も難しいと思われるが、それにしても作家と編集者の関係性があまりに異様である(評者は作家でも編集者でもないのであくまで個人的な意見)。 評者の所感としては、本書はホラー小説ではなくミステリー小説である。 両ジャンルに親和性があるのは承知しているが、あまりにもホラー要素が薄弱かつ超常現象をコミカルに描写しているため、背筋が震えることはない。 また、編集者善知鳥の霊に対するほとんど無敵ともいえる対処能力が、緊迫感を皆無にしている。メアリー・スーの名を持ち出すまでもなく、こうした登場人物造形には辟易せざるを得ない。 さらに、作家熊野のキャラクターにしても、怖がりという設定が極めて曖昧である。霊的存在に対する怯えと興味のバランスが取れていないと感じるのは評者だけであろうか。 どうやら巷では主要登場人物2名の関係性(いわゆるバディものとしての)を高く評価する声があるらしいが、評者としては賛成できない。 作中もっとも首をかしげるのは、「究極のホラー小説」という言葉である。 果たして筆者は、この言葉に何らかの具体的なビジョンを抱いているのであろうか。 仮に本書がシリーズ化するとして、最終巻には「究極のホラー小説」が誕生するのであろうか。 たとえシリーズ化したとしても次巻以降を購買するつもりのまったくない評者には知り得ないのであるが、素朴な疑問として提示しておきたい。
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ホラーが苦手な人にもおすすめ
ホラーが苦手でそういう小説は読んだ事もなかった自分が、これはどうかと勧められた一冊。 表紙二人、特に右側の善知鳥のキャラが素晴らしい。やり取りが面白くホラー小説だった事を忘れるほど。よく話が作りこまれていて、推理しながら読み進めていくような楽しみもあった。また選評に「物書きなら」とあったが、小説家のみならず、ものづくりに携わる人間なら彼らの心情にグッとくるものがあるはず。 そして本当に、ホラー小説なのに怖くなかった。霊やそういった類の話は恐怖の根源が「分からない」こと。この作品は「メカニズム」という単語が選考員の口から出てくるほど、いい意味でよく作られている。この心霊現象の、ネタバレ避けの為に言えないほどのアレコレがよく分かる。登場人物二人が面白いのもあるが、いろいろと分かりすぎて怖くないのかもしれない。 帯に「バディものとしてまず楽しく」とあった上でこの魅力的な表紙。その期待にも応えてくれたし、二人に惹かれた本編の後で過去の出会い編が書かれているのは非常にニクいやり方だった。是非ともシリーズ化してほしい期待をこめてレビューを書いた。 ただ自分のような怖がりさえ怖くなく楽しめたので、「ホラー小説」として一応星4評価。怖くないと分かっていて読むと、期待を何一つ裏切られずに読めるのではないかと思う。
関連する文学賞
- 日本ホラー小説大賞 第24回(2017年) ・優秀賞