日本の文学賞

← 受賞作品一覧に戻る
あわのまにまに

山本周五郎賞

あわのまにまに

吉川トリコ

2029年から1979年まで、十年ごとに時間をさかのぼりながら、ひとつの家族に隠された秘密が明かされていく。軽やかな読み心地の奥で、家族の歴史と個人の選択がじわじわ組み替わる連作長編。

家族連作秘密時間の往還

作品情報

家族の断片をつないでいくたび、過去の景色がまったく違って見えてくる。

家族の時間を逆さにたどる構成で、会話と記憶の断片から真実が立ち上がる。ユーモアと不穏さが同居する、吉川トリコらしいサスペンス小説。

レビュー要約

  • 家族の面白さと怖さが同時に立ち上がり、後半ほど秘密の重さが効いてくる構成が強い。

書籍情報

出版社
KADOKAWA
発売日
2023-02-22
ページ数
320ページ
言語
日本語
サイズ
13 x 2.2 x 18.8 cm
ISBN-13
9784041121566
ISBN-10
4041121566
価格
1313 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品

どれだけの秘密が、この家族には眠っているんだろう―― どれだけの秘密が、この家族には眠っているんだろう―― 「好きな人とずっといっしょにいるために」、あのとき、あの人は何をした? 2029年から1979年まで10年刻みでさかのぼりながら明かされる、ある家族たちをとりまく真実。 2029年、韓国からきた兄の家出、おばあちゃんのお通夜で通常運転のママ。2019年、クルーズ船で一緒になった夫婦と年若の青年。2009年、クリスマスの夜のダイヤの指輪、1999年、ノストラダムス後も終わらない世界で「ママは、パパが死ぬのを待ってたんじゃないか」と言った幼なじみ。1989年、親友からその亭主の死を知らせる電話。1979年、おなかの中の三ヶ月になる命。 生き方、愛、家族をめぐる、「ふつう」が揺らぐ逆クロニクル・サスペンス。 〈世相をえぐり取る全6章〉 1 二〇二九年のごみ屋敷 2 二〇一九年のクルーズ船 3 二〇〇九年のロシアンルーレット 4 一九九九年の海の家 5 一九八九年のお葬式 6 一九七九年の子どもたち

●吉川 トリコ:1977年生れ。2004年「ねむりひめ」で〈女による女のためのR-18文学賞〉第3回大賞および読者賞を受賞、同作収録の『しゃぼん』でデビュー。著書に『グッモーエビアン!』『戦場のガールズライフ』『ミドリのミ』『ずっと名古屋』『マリー・アントワネットの日記 Rose』『女優の娘』『夢で逢えたら』『流れる星をつかまえに』など多数。2022年『余命一年、男をかう』で第28回島清恋愛文学賞を受賞。エッセイ『おんなのじかん』所収「流産あるあるすごく言いたい」で第1回PEPジャーナリズム大賞2021オピニオン部門受賞。

レビュー

  • 何回も繰り返し読みたい作品

    順を追って最後まで読んでいきました。 登場人物みんなのことを少し知れた今、もう一度最初から読み直したいし、後ろから一章ずつ逆順に読んでいきたい。 たぶん、最初読んだ時と違った見方が生まれる気がします。 2回目、3回目と色んな読み方をしてくうちに、もっとここで描かれてるみんなの事を理解したり、心を寄り添わせられたらいいなと思う 全部全部明言してしまったら野暮に思えるような事を、作者の方が書ききってしまわない(けど、あっこれってそういう事か。。と察する)書き方が私は好きでした。 人の心の機微をここまで丁寧にすくい取ることが出来て、かつそれを表現する技術や観察眼を持ってる吉川さんはすごいなぁと単純に思いました。 5章のラスト。。。自分がもし美幸だったらどうしただろう 時代ごとの人物の言葉遣いやものの例え、社会の空気感の描き方も上手というか、本当にこの時代ってこうだったと思いながら読みました。 こういう反応をこの時代だったらしたよなぁとか、この表現大昔の漫画で見た、こういう言葉この頃使ってたらしいよねと。。。時代の描き方が秀逸です。 読めば読むほど味わいが出てくるような。。という気がします。もしかしたら、自分も10年後これをまた読んだら今とはまた違った感じ方をするかも。 この作品と出会えてよかったです。

  • 珠玉の言葉も見つかるはず

    私が吉川トリコさんを知ったのは、ラジオの朗読の番組。「芳野がくる」という作品を聴いていて、ストレートに物語が染み込んできたことをまだ憶えています。さっそく問い合わせてみて、短篇集『C級フルーツパフェ』に収められていると知り、文庫を購入し、自分でも声を出して読んでみたのでした。 この作品もスラスラ読めます。 第一章に登場人物の説明があり、時を遡って第六章まで進むあいだに、何度かこの説明を見返したりしましたが。 第一章の語り手のおばあちゃんが、第六章の語り手。ちょうど家系図を十年刻みで辿っていく仕掛けでした。 ストーリーは言えませんが、五十年という時間が動くのですから、登場人物の死も描かれています。その中に、こんな台詞がありました。 「大事な人が死ぬのって、体の一部をもぎとられるみたいにつらいことだけど、自分の中に神さまが増えるみたいな、そういうことでもあるのかなって思うんだ」 最終ページを閉じる前に、きっと珠玉の言葉をもっと見つけられるでしょう。 ある秘密に、どこで気がついても、最後までドキドキさせてくれるはずです。

  • 構成は面白いが…

    一章ごとに10年遡って語られる家族の物語。語り部も章ごとに変わるので分かりにくくて、自分で家系図書いてしまった。手法は面白いし、謎解きの楽しさもある。いくつか印象に残る台詞もある。けれど、内容はライトノベルかな。

関連する文学賞