日本の文学賞

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降りる人

小説 野性時代 新人賞

降りる人

木野寿彦

心身ともに疲弊して仕事を辞めた30歳の宮田は、唯一の友人である浜野から、期間工は人と接することが少なく「人間だとは思われない、ほとんど透明」な仕事だと聞き、浜野と共に工場で働くことに。絶え間なく人間性を削り取られるような境遇の中、気付けば人間らしい営みを求めるようになっていく宮田だったが、実はある秘密を抱えており――。第16回小説野性時代新人賞受賞作。

期間工労働疎外感孤独友情生の哲学ニーチェ社会からの脱落

作品情報

「しれっと生きればいいだろ」

「しれっと生きればいいだろ」。選考委員を唸らせた第16回小説野性時代新人賞受賞作。鬱により仕事を辞めた30歳の男が、友人に誘われ期間工として工場で働く一年を、淡々としたユーモラスな筆致で描く。ニーチェの「ツァラトゥストラはこう言った」から着想した「降人」という概念が作品に哲学的な深みを与えながら、終盤に向かって静かな緊張感が高まる。著者木野寿彦のデビュー作。

レビュー要約

  • 選考委員全員が高く評価し、主人公の描写の自然さと的確さ、名作が読者の心に届く瞬間を目の当たりにしたという声が集まっている。単調な工場生活を淡々と描きながらも、友人・浜野とのユーモラスなやり取りや終盤の緊張感が高く評価されている。

  • 読者の間では主人公と友人・浜野の関係性の妙が特に好評で、単調な日常の中に時折光が見えると感じる読者が多い。余韻の残る作品との声も多く、全体的に好意的な評価が多い。

  • 静かに魂を揺さぶられるという声や、デビュー作とは思えない完成度を称える意見がある一方で、主人公への共感を得にくいと感じた読者もおり、評価は賛否両論に分かれている。

書籍情報

出版社
KADOKAWA
発売日
2025-09-26
ページ数
240ページ
言語
日本語
サイズ
13.8 x 1.8 x 19.3 cm
ISBN-13
9784041166048
ISBN-10
4041166047
価格
2090 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

「しれっと生きればいいだろ」 選考委員感嘆の小説 野性時代新人賞受賞作 〇「滑稽でもあり哀れでもある主人公が、実在の人物に思えるほど描写が自然で的確」(冲方丁/選評) 〇「名作が名作として読者の心に届く瞬間を目の当たりにできた思いで胸が熱くなった。」(辻村深月/選評) 〇「選評を書いているいまも、得がたい余韻がつづいている。」(道尾秀介/選評) 〇「淡々とした、ときにはユーモラスな語り口ながら、最後の一行まで緊張感が失われないのは、主人公の根源的な戦いを、緻密に、正確に、描いているからだ。感銘を受けた。」(森見登美彦/選評) 〇「こういう人の、こういう日々こそを、青春と呼びたい。いや、呼ばせてください。」(尾崎世界観) 心身ともに疲弊して仕事を辞めた30歳の宮田は、唯一の友人である浜野から、期間工は人と接することの少ない「人間だとは思われない、ほとんど透明」な仕事だと聞き、浜野と共に工場で働くことに。 絶え間なく人間性を削り取られるような境遇の中、気付けば人間らしい営みを求めるようになっていく宮田だったが、実はある秘密を抱えており――。 選考委員の胸を打った、第16回小説野性時代新人賞受賞作!

●木野 寿彦:1983年生まれ。福岡県出身、九州大学文学部卒業。工場勤務や事務職を経験。

レビュー

  • 心に沁みてくる

    抑制された筆致に惹かれました。じわじわと心に沁みてきます。

  • 5つ星のうち5.0 👍

    面白かったです。

  • 置いていかれた

    代わり映えしないシチュエーショがずっと続いたあと、最後に相方はいきなり立派なことを言い出し、主人公もしっかりと青臭く人生に悩む。それをしないから良かったはずなのに、なんだよーって置いてきぼりにされた感じです。 降りる人、という思想の深まりもなく、申し訳程度にニーチェとか引っ張り出して、ここもまったく物足りない。 班長のキャラ造形はすごく良かったです。

  • エレメントの手ごたえーネオリベラル・エスノグラフィ

    今、エア・カナダでトロント行きの便に乗り、乱気流に巻き込まれながら『降りる人』の「春」だけ読んだ。春しか読んでないのにもうレビューを書きたくなった。続きは後で書くから許して欲しい。 以前、プロレタリア文学なるものがあったという。それになぞらえて言えばこの小説はネオリベラル・エスノグラフィだと思う。世界の末端から1%の人口がアクセスする国際金融経済が、それ以外の全てを断片化して暗い不安を閉じ込める工場と、そこに運ばれてくる人を輸送するバスと、工場化されたアパートとの、蠢くライフラインのなかで、断片化された力と、ディスタンクシォンと、感情だけが明滅している。そんな場面を確かに捉えている。 けれども作者はプロレタリアの蜂起を語らない。その網目を生きる吉本のような吸血産業もあるが、そういう選択でもない。けれども彼は芸人のような手つきで、この世界を生きている。 面白い、そして、見事だ。僕らは彼とこの時代を生きるのかー。 (続き) 夏、秋、冬、春隣と、続きを書こうと思っていたが、解説なんて物語の先取りは、興醒めさせたくないのでやめておこう。 著者の経験を言葉にする際の硬度が異様に確かなことに撃たれたが、最後の選評全ても読んでおおむね全ての評が異口同音に書いていた。確かに彼の言葉には操作性が感じられないほどに確かさがあり、それが読者を引き込んでくる。 が、帯に書いてあった尾崎世界観と担当編集者の言葉は帯だけだったとは。そこまで含めてやられたなぁ。

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