日本の文学賞

← 受賞作品一覧に戻る
犬の力 上 (角川文庫 ウ 16-4)

翻訳ミステリー大賞

犬の力 上 (角川文庫 ウ 16-4)

東江一紀

麻薬戦争の長い連鎖を、捜査官、カルテル、娼婦、聖職者らの視点から描く犯罪小説。国家、暴力、復讐の構造を重層的に追う。

犯罪ノワール翻訳ミステリー

作品情報

正義が削られていく戦場で、復讐だけが年月を越えて残る。

東江一紀訳の角川文庫版は上下巻で刊行。受賞対象としては翻訳ミステリーの代表的長編で、麻薬戦争小説の金字塔として読まれている。

レビュー要約

  • 作品の構成や題材の切り込み方に強い個性があり、読後に残る余韻を評価する声がある。文体や設定の濃さは読み手を選ぶ面もある。

書籍情報

出版社
角川書店
発売日
2009-08-25
ページ数
574ページ
言語
日本語
サイズ
10.5 x 2.1 x 15 cm
ISBN-13
9784042823049
ISBN-10
4042823041
価格
496 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

血みどろの麻薬戦争に巻き込まれた、DEAのエージェント、ドラッグの密売人、コールガール、殺し屋、そして司祭。戦火は南米のジャングルからカリフォルニアとメキシコの国境へと達し、苛烈な地獄絵図を描く--。

NY出身。現在はコネチカットとカリフォルニアに在住。NY、ロンドン、アムステルダム他で探偵として働いた経歴も持つ。

レビュー

  • 電子書籍出してください

    話の内容のレビューは他の人に譲ります(もちろん星5点はストーリーの点数です)。 で、3部作の「ザ・ボーダー」だけ電書化されてますが、「犬の力」と「ザ・カルテル」はされていないので、読み返そうかなと思っても、紙の本を取りに行くのが面倒で、結局後回しにしてしまう(電子書籍の他の作品を読んでしまう)のですよね。なので、角川さんでもハーパーBOOKSさんでもどちらでもいいので、この2作も電書化してください。

  • 面白いのは間違いない。

    下巻まで一気に読んだ。 登場人物が多く、似たようなカタカナの名前なので登場人物のリストと行ったり来たり。でもそれほど苦にはならなかった。 ハードボイルド小説臭さがちょっと鼻につく部分があったので★-1。

  • 重さ・深さよりもエンターテイメント性に惹かれた

    複数のエピソード、多くの登場人物、彼らのバックボーンを頭の中で整理しつつ読まなくてはいけないのだけど、終止形、体言止めのテンポよい語り口なので読みづらいということはなかった。 麻薬戦争、米墨関係、移民、宗教観などが舞台・背景としてあるけれど、仁義なき戦いシリーズや不夜城シリーズなどを思い起こしたことを考えると、重さ・深さよりもエンターテイメント性に惹かれたんだろうな、わたしは。 上巻最後の方でちょっとタルイかなあと思っていたらウワッという感じで締めてきた。 下巻に向けていいところで終わらせるなあと感心。

  • 圧倒的スケールの犯罪小説

    メキシコ麻薬戦争を描いた本書はどこまでが事実で、どこまでがフィクションであるか分からない。 物語はゆっくりと、あたかも焦らすかのように進んでいく。しかし、ページを捲るほどに読者をグイグイと引き込む魅力を備えている。 DEA捜査官ケラー、麻薬カルテルのバレーラ兄弟、高級娼婦ノーラ、ヘルズ・キッチン育ちのカラン等、登場人物が描写が見事で、まるで映画を観ているような気分になる。ドン・ウィンズロウの作品をはじめて読んだが、圧倒的なスケールで描かれた超一級の犯罪小説である。 「この世でもっともむずかしいのは、悪行を思いとどまることではなく、悪行に立ち向かい、制止することなのだ」 上巻のラストに書かれた文言に唖然とするとともに、いい知れぬ恐ろしさを感じた。

  • 展開がとにかく遅い

    今まで読んだ本で一番面白くない。登場人物が多すぎてメインの話しがなかなか進まない。期待して上下とも購入したが、下巻は読む気がしない。

  • 凄まじい麻薬戦争の実態

    1970年代半ばから2000年初めにかけて、メキシコを主な舞台にした麻薬戦争の実態を事細かに描写した作品である。 米国麻薬取締局のアート・ケラーとメキシコの麻薬カルテルバレーラ一族との血を血で洗う戦いがこのストーリーの縦糸であるが、 これにニューヨーク育ちのチンピラが成長して、マフイアでも一目置かれる存在として、麻薬カルテルと関係する物語や、若い高級 娼婦ノーラと組織との争い、等々サイドストーリーが巧く横糸として紡がれており、一大叙事詩としてこの麻薬戦争が描かれる。 読みだしてすぐ、ジェームズ・エルロイに似た雰囲気だと思ったが、エルロイ程、虚無的でなく、また描写を省くこともない。 残酷な殺人場面を含めて、極めて描写的であり、多くの人間が登場するが、作者の筆力だろう、十分に読者を飽き させることはない。多くの登場人物が、愛し合い、憎みあい、そして騙し、騙される。この書名「犬の力」というのはどうも 悪しき力と言うような意味で使われているようだ。カルテル側には、まさにその「犬の力」が存在しているであろうが、それに 対抗するがごとく、アート・ケラーもその「犬の力」を使うことになる。全編凄まじいエネルギーにあふれた作品だ。数年前大いに 好評を博した作品であることを実感して、読了した。

  • 麻薬戦争のリアル

    麻薬戦争に翻弄される個人を複数の視点から描く小説。日経新聞に取り上げられるくらいリアリティが高い。内面描写はやや弱いが、その分、頭を使い過ぎないで没頭出来るとも言える。 実際の史実に基づいている面も多く、勉強にならなくもない。

  • 圧巻のストーリーテラー

    アメリカもののサスペンス小説は大好きで、触手が動くのだが、壮大な長さと人物相関図が付くほどの登場人物の多さに恐れをなし、好きなくせになかなか手をでない。しかし、いったん読み始めるともう止まらない止められないのですね。そのため、ドン・ウィンズロウの名前はまったく知らなかった。しかし「犬の力」という魅力あるタイトルに魅かれ、『ものは試しだ』と思い購入したのは一昨年なのだが、バタバタしていて先月程やっと読んだ。まあ、なんと桁はずれのストーリーテラーがいる事に驚いた。 アメリカ・南米・麻薬捜査官・マフィア・ギャングの世界が複雑に交錯して織りなされた物語は圧倒的な完成度とパワフルなストーリテリングでぐんぐんで進んでゆく。これだけの情報量を物語に構築してゆく実力は見事なものだ。 物語は下巻にゆくに従ってヒートアップし力強く進んでゆく。ドン・ウィンズロウの緻密で明晰な文章が複雑な人間関係や組織を一挙に纏め上げ、特に下巻はページのめくるのがもどかしいほどに、面白かった。 ただ、少々難を言えば上巻が-(完成度は高いのだが)-物語の背景と人物相関の設計をきっちりみせるため、ストーリーテリングのテンポが若干落ちる。しかし、これだけの情報量を物語に構築するとなると、読者に物語の背景を明確に理解させないといけないので、多少のテンポダウンも作品の質を落とすほどのものでもない。 これだけのストーリーテラーはそう居ない。まるで、全盛期のフレデリック・フォーサイスを彷彿させる実力だ。

関連する文学賞