日本の文学賞

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トンコ (角川ホラー文庫 す 2-1)

日本ホラー小説大賞

トンコ (角川ホラー文庫 す 2-1)

雀野日名子

『トンコ』は雀野日名子による作品で、日本ホラー小説大賞で受賞に選ばれた。角川書店から2008年に刊行された書籍で、受賞作としての位置づけと刊行形態の双方が確認できる。

ホラー怪異身体

作品情報

『トンコ』

『トンコ』は、日本ホラー小説大賞の受賞作として読まれる雀野日名子の作品。刊行情報が確認できるため、受賞履歴から作品へたどれる書籍として扱える。

書籍情報

出版社
角川グループパブリッシング
発売日
2008-10-25
ページ数
253ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784043924011
ISBN-10
4043924011
価格
537 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

トラックが横転し、一頭の豚、トンコが脱走した。そこかしこに漂う兄弟たちの気配に誘われさまよい歩くが、たどりつくのはなぜかドッグフードの袋など。そしてトンコがやっと出会えた兄弟の姿とは……。

すずめのひなこ●1970年福井県生まれ。大阪大学外国語学部インドパキスタン語科卒業。「トンコ」で第15回ホラー小説大賞短編賞受賞。

レビュー

  • 怖さだけにとどまらない。

    これは凄い。動物を主人公に据え、動物目線で進む物語は絵本によくある設定である上に、ホラーなのに特に恐怖の要素はない。にもかかわらず怖いのは、その設定で動物の「動物であること」が語られるからだ。要するに物語では動物が動物のようにしか考えない。示されるのは動物と人間の決定的な断絶。それこそが怖い。ところが「ぞんび団地」は一転、「です」「ます」で文末を締め括るメルヘン調の文体でゾンビになりたい少女とゾンビたちの日常が語られる。その上少女の境遇には理由があって……と二転三転して最後には実に痛ましく幸せな結末が待つ傑作。傑作という点では自殺した妹と、その理由を考えあぐねる兄とのこれもまたおぞましいハッピーエンドに至る「黙契」もそうである。要するに単なる恐怖に収まりきれない傑作三編を収めた短編集。

  • すべからくこの地上の生き物は生きるために死に、死ぬために生きている。

    あたりまえの事のように僕たちは、命をいただいている。「うまい」といって奪い合い「良くない」といってしりぞける。どちらも生きた証に成長の記憶をその身にきざみつけてきたことだろうに、この物語のどこがホラーだろう?食肉の豚の行く末か?はたまた無神経に糾弾する、あるいは無責任に同情する人の有り様か?強いて云えば逃げた彼女に語りかける兄弟姉妹の鳴き声、放屁がホラーであろうか?かつて半村良はその作品で登場人物に「この星は醜い…」と語らせたが、果たしてそうであろうか!?弱肉強食は生態循環であり、すべからくこの地上の生き物は生きるために死に、死ぬために生きている。『ぞんび団地』未成熟な大人が子を持つ不条理と、あっちゃんの健気に涙。『黙契』その選択は卑怯だ!遺された者が救われない。

  • この作者に出会えて良かった

    ホラー大賞受賞という肩書きが、この本のレビューを低くしている。 この作品は自分にとって、「星の王子様」以来の強烈なバイブルになった。 このような感性、視点でモノを書ける人がいる。ドラマを描ける人がいる。 それだけで嬉しい。表題作の「トンコ」は、いつでも大切に思い出したい傑作。 すでに古典として自分の心に根付いている。

  • 短編集です

    ホラー?短編集です。 その1つが書籍のタイトルになっている「トンコ」です。 トラックで養豚場から食肉加工場へ輸送されている途中に、 交通事故にあい、トラックから逃げだしたブタ トンコの 冒険活劇みたいな話になってます。 ネタバレは避けますが、食肉加工される運命にあるブタ自体が ホラーという扱いなんだと思います。 が、怖いというよりはかわいそうという感じです。 その他の話も、ゾンビの団地など、ぶっ飛んだ設定の短編集でした。 ・・怖くはないですね。

  • トンコの気持ち

    食用豚と言う設定がエグイですね。 角川ホラーだと言うのに純文学 ゾンビが出てくるがゾンビに感情移入してしまう・・・・ 読んでるうちに自分もトンコのような気持ちになり ゾンビに涙してしまう・・・・ この作家さんは優しいのでしょうね、、、

  • 出版時の改作が惜しまれる

    新人賞受賞作が出版時に手直しされるというのはよく聞くが、表題作「トンコ」の場合は改作に近く、なぜここまで変えてしまったのかと惜しまれる(読メのレビューでこれを知り、著者ブログで公開された改作前の内容と読み比べた)。 当時の出版社の表現規制に著しく抵触するため改作を求められたようだが、現在は規制基準が変わり、公開の許可が出たようだ。 改作前の「トンコ」は仏教の六道と観音救済をテーマにした、どことなく花輪和一的な雰囲気のある寓話だが、出版された改作では、六道も観音救済が完全削除されている。地蔵たちの豚成仏シーンが規制抵触したかと邪推しているが、お地蔵様軍団が削除されてしまったことでテーマも少々表面的になってしまい、惜しまれる。 作者がこのレビューを読み、改作前のオリジナル版をブログからkindleに移行してくれることを期待。

  • こんな視点のホラーがあったのか。すごいな。

    正直「トンコ」を読み終えた後には疑問しか残らなかった。 この程度で入選するものなか? 茶化したいのか真面目なのか? 安いドラマ の様にありきたりなテーマじゃないのか?(例えば「屠殺」に目を背ける人が 肉を食す事など、人・畜生の愚かさや儚さ、矛盾といったもの) はっきり言って、全てが中途半端に映り作者の真意が読み取れなかった。 つまり、捉えどころがなく、意味不明と評価される事の多い、骨子が薄弱で中 途半端な作品。との印象しかなかった。選考の「ブタで良くここまで書ききっ た」というだけで入選なのではないかとすら思ってしまう。 ※ ここから若干ネタバレ それが「ゾンビ団地」で一気に固まった。「ですます調」と「ナンセンス調」 の相性の良さが極まって、作者の真意が非常に分かりやすかった。実際、父母 視点であれば普通に怖い「真面目」なホラーではないかと思う。 それをあえて子供視点でブラックユーモアや、シニカル、意地の悪い表現に置 き換えて馬鹿馬鹿しい笑いを誘うように狙っている。 それでも、ふと女の子の日常や最期を感じ取った時、悲しみや、けな気さに気付 く事が出来るし、子供のひたむきさに幽霊の執念を同調させてホラー的な要素 も織り込んでいる。そして父母にとって「恐怖」する状況も、最終的に「平穏」 へと向かっていく。 自分は、手紙を読み返して泣く母親には愚かさも感じたが、憐れさも感じた。 なんだか「この家族にとっては、ゾンビや幽霊になって仲良く暮らす方が実際 幸せなんだろうな」という気分になってくる。 作者が言う「怖くないホラー」。 私の感性には、見事にフィットした。 ちょっと大げさに言えば、皮肉の籠った意地悪な視点の根底に、人、モノ、人 間関係……に対する哀しみや慈しみが流れている。そんなアンビバレントな感 性。それを愉しむ事が出来るどっちつかずの人には、すばらしい作品ではない だろうか。 トンコでは☆3だったか、ゾンビ団地で5つに増やす。 黙契が残っているが非常に楽しみだ。それにしても選考委員はすごいな。「ト ンコ」で作者の力量が分かるもんなのか――。それとも他の作品も勘案してい るのか「紗央里ちゃんの家の方がマシ」とのレビュアに一部共感を覚えていた のに。

  • 怖いホラーを期待していると肩透かしを食らう、内容は別ジャンル

    学生時代にリングなどの日本のホラー作品が流行りだった。角川ホラー文庫もその波に乗って本屋の書棚に多く置かれており、自分もいろんな作者の作品に触れたその中の一つにトンコもあった。 当時はホラーというものを広くとらえようという動きがあり、特に角川ホラー文庫は「怖い」作品であればひとまとめに「ホラー小説」と扱っており、殺人鬼も謎の怪物も病原体も一緒くたにしていたので、短編集であることや、家畜の豚が逃げ出してという表題の作品にも偏見なく触れることができたように思う。 読んだ感想はこの作品集、ひとまとめに怖い作品をまとめた「角川ホラー」の体裁をとっているだけで、内容がホラー作品ではない。別のジャンルの作品をホラーとして扱われる家畜の擬人化の生理的な嫌悪や、ゾンビといった要素を埋め込んでいるだけなのだ。 日本ホラー小説大賞短編賞を受賞した表題作も少しだけある「怖い」は添え物程度なので、怖いホラー作品を求めていると肩透かしを食らうだろう。 短編は上手にまとまっているので同作者の作品を求めているならお勧めする。

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