日本の文学賞

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なまづま (角川ホラー文庫)

日本ホラー小説大賞

なまづま (角川ホラー文庫)

堀井拓馬

人間の記憶や感情を学習する異形の生物ヌメリヒトモドキを研究する語り手が、亡き妻を取り戻そうと飼育にのめり込んでいく。悲嘆と執着が、湿った異物感をともなって破滅へ向かうホラー。

ホラー喪失執着異形生物手記形式

作品情報

最愛の人を取り戻したい願いが、異形の生を育ててしまう。

第十八回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。角川ホラー文庫として 2011 年に刊行され、KADOKAWA 公式ページで紙書籍と電子版を確認。

レビュー要約

  • 粘着質な語りと生理的な不快感が強く、好みは分かれやすいが、悲嘆が異常な研究へ変わっていく過程に独自の迫力がある。結末の後味の悪さも作品の個性として読まれている。

書籍情報

出版社
KADOKAWA
発売日
2011-10-25
ページ数
240ページ
言語
日本語
サイズ
10.7 x 1 x 15 cm
ISBN-13
9784043944934
ISBN-10
4043944934
価格
770 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品

胸を撃ち抜く衝撃のラスト!日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。 醜悪で激臭を放つ生き物ヌメリヒトモドキは人間の記憶や感情を学習する。その生態を研究する「私」は、死んだ最愛の妻を蘇らせようとヌメリヒトモドキの飼育に熱中していく。悲劇的な結末に向かって……。

●堀井 拓馬:1987年生まれ。東京都出身。文京学院大学人間学部卒業。2011年『なまづま』で第18回日本ホラー小説大賞長編賞を受賞。

レビュー

  • まだ24歳とは、将来有望!

    そのこなれていない文章に最初は違和感も持ったが、これが粘着質のあるドロドロ世界に実にマッチしていた。 読みながら幾度となく吐き気がこみ上げてきた。 妻の描写が少し男性的目線過ぎるのではないかというきらいもあった。だが、途中から妻の違う一面も現れ始め、それが最後のひねりのきいた展開に繋がっていたので、唸った。 まだ24歳ということで、将来楽しみな作家だ。

  • ニオイ

    この小説は「におい」が重要な役割を果たしている。小説や映画では人間の五感のうち「におい」の描写がないものが多い。本作ではヌメリヒトモドキの放つ悪臭の描写が丁寧で、読んでいると自分にもにおいが移ってしまいそうになるところが秀逸。ただ人物の心理描写がほとんどを占めているので読むのが辛いのが最大の欠点。

  • ホラー×愛

    表紙には血痕がありますが、直接的な暴力や流血はほとんど描かれていません。せいぜい鼻血程度です。 性描写もあるのですが、直接的な言葉でなく「布きれ一枚はさむ余地なく私たちの距離はゼロだった」という調子で表現されています。 怖い話や暴力が苦手な人でも読める内容でした。 夜中にトイレに行けなくて震える類ではなくて、人間の心理の恐ろしさにゾッとする類です。 主人公の妻への想いが、とてもロマンチックな表現で描かれていて私は好きです。 選考委員の選評では「愛の深さのドロドロさ加減が物足りない」という事が書かれていましたが、私には十分描かれているように感じます。 選評といえば、読みにくいという指摘もありました。 「それ」という指示語多いかもしれません。でも、私は気になりませんでしたよ。 不思議と、読んでいるうちにヌメリヒトモドキの妻の愛らしさに私も愛着を持っていきました。 主人公がだんだん狂気に侵されていく姿は見事です。 ホラーだけれども、とてつもなく切ないラブストーリーでした。 最後の一文が秀逸です。 さすが「若き鬼才」ですね。 次の作品も楽しみです。

  • 怖くは無い

    怖さは何も無かったです。 ただ、大きな痰のようなぬめりを飲み込むほどにヌメリヒトモドキを愛する主人公に気持ち悪さを感じ、 想像すると食欲が落ちました。 ほかの方が仰っておられます様に確かに読みやすい文章ではなかったのですが、 このねちっこい文章に、主人公の優柔不断さ、 ありのままの妻でなく自分の都合の良い感情のままの妻を愛し続ける執着心の強さが増された気がします。 こちらのレビューにて「最後の一文が秀逸」という、 この最後がどうしても読みたくなり読んだのですが、本当でした。 こうきたか、と思いました。

  • まあまあ

    テーマは面白いと思ったが、後半は同じようなシーンが多く退屈な場面が多かった。 読み終わった後もあまり心に残らなかった。

  • 純愛作品

    圧倒された。この一言が読み終わった直後の印象である。 読みにくくて意味が取りにくいと感じた箇所が数箇所あったが、逆に洗練された文章だったらこのなんともいえない世界観は描けなかったのではないかとも思う。 純粋な愛に触れたときに主人公がかわっていくさまがとてもよく描かれていた。ひとは変わる。誰かの心を傷つけても自分を偽ることができなくなったら突き進むしかない。それがたとえ、破滅に向かっていくとしても。そんな主人公の変化が見事に書かれていた作品だと感じた。 ヌメリヒトモドキが意味するもの。それは人間の黒い欲望。それと対比された主人公の追い求める亡き妻の変身前の純粋さが作品をより面白くしていると思う。 ホラー作品としては怖くはない。残虐ではないし、ミステリーでもない。 不思議な感覚の作品。とても面白かった。 次の作品にとても期待している。

  • ホラーというよりは純文学?

    前半は期待以上。 文章は、割と読みやすく、巧さのようなものも感じました。 だが、中盤、あまりにストーリーが進まない。 妻への愛の長たらしい一人語り。 後半、数ページで、どんでん返しがありますが、そこは、伏線も効いて面白かった ただ、ストーリーらしきものが薄すぎる。 サイエンスホラーか、と期待しつつ、長い中盤を読み進めるが、 物語としては、ミイラ取りがミイラになった、というだけ。 奇抜な設定にしては、物語がこじんまりとし過ぎ。 ホラーの娯楽小説というより、 妻への愛を語りに語り、最後に愛の真実に気付いて ハッと我に返る中年男の一人語りだった、という読後感。 起伏のない回顧録を、最後まで読ませる小説に仕上げたところは才能があると思う。 小説としては★4です。でも、 娯楽小説としては退屈かも、と、辛めの2にしました。 作品自体の読ませる力は凄く感じました。 今後への期待は、大きいです。

  • 図らずも駄作に楽しまされてしまう妙な奇作

    例によって例のごとくと言おうか、日本ホラー小説大賞の受賞作、ホラー小説なのに一切怖くない小説が登場した。 この長編賞受賞作品「なまづま」を読了した自分の感想は、「図らずも楽しまされてしまった」というところだろうか。 小説そのものの出来を批評すればあまり芳しいものではない。ヌメリヒトモドキという仮想上の生物の生態が注意深く構想されたドラマというところはかなり素晴らしいものの、とにかく主人公の内面の記述がしつこい。その記述も岩井志麻子の作品のような、恐怖を喚起するようなものではなく、ひたすらに妻を喪失した虚脱感ゆえに退廃する心情を何度も繰り返しなされるもので、読んでいて少し苛立たされるものでしかない。 それに途中の同僚を事故に見せかけて殺害するシーンも取ってつけたような感じさえ受ける。この小説がホラー小説だからそれらしく見せるために取り付けられた演出のようにしか見えない。また同僚が主人公に惹かれてゆくシーンもやはり必要はない。物語の本筋からは逸れているし、伏線にもなっていない。 以上の理由でこの小説の出来栄えとしての評価は★一つなのだが、妙に楽しまされてしまったのである。物語の活字を一字一字噛み締めるように読み進めていくのがあまり苦痛ではなく、むしろ心地よささえ覚えたのだ。それは自分の中にこの主人公と同じような虚無感や空虚な感情が潜んでいるということなのだろうか。心地よい反面、この小説の主人公と傷を舐めあっているような妙な心地よさが発見できた。 その点においては★5つである。妙な評価になって申し訳ないが間をとって★は3つである。

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