作品情報
ひとりの青年の孤独が、事件の見え方を変えていく。
第9回江戸川乱歩賞受賞作。講談社文庫版は1982年刊で、断熱材工場をめぐる事件を通じて、地方出身の青年が抱える疎外感と社会の圧力を描く。後年の乱歩賞全集でも再録され、初期社会派ミステリーの代表作として読まれている。
書籍情報
- 出版社
- 講談社
- 発売日
- 1976-06-01
- ページ数
- 301ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784061360426
- ISBN-10
- 4061360426
- 価格
- 398 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
第9回(1963年) 江戸川乱歩賞受賞
レビュー
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リアリズムの傑作、とにかく読むべし。
世の中が分かっている方が書いた本物の推理本である。おそらく、これ程の傑作はそうそう無いでしょう。時代が変わっても、少しも色褪せません。とにかく読んでください。
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地方出身者の孤独
1963年第9回江戸川乱歩賞受賞作品。 田代省吾は地方から上京し、夜学に通いながら日東グラスウールの工場で働いていた。都会への希望に溢れていた田代だったが、単調な作業に辟易し、より大きな企業への就職を夢見るようになる。夜学から大企業への就職の門戸が開けかけたとき、日東グラスウールの常務 郷司の横槍で全てご破算になってしまうのだった。憎しみに駆られる田代。ほどなくして、郷司の他殺死体が見つかる。警察は、田代の殺意の確証を得て、容疑者としてマークするようになる ・・・ 田代は、福島県郡山出身で、なまりが抜けないことから都会の中で孤独を味わっている。地方との格差があまりなくなった昨今では、この設定そのものが時代を感じさせざるをえない。孤独にさいなまれたあげく、殺人事件の容疑者として周囲から白い眼で見られる田代。この鬱屈した状況がラストに効いてくるのである。 作品そのものは、刑事たちの丹念な捜査により、真犯人のアリバイ崩していくタイプのミステリである。そこに昭和38年の世相を上手く取り込んだということになろうか。大都会の冷え切った人間関係を、地方出身者の眼を通して切り取っているのだ。事件の背景には、親子愛が垣間見えるわけだが、その愛情は他者を犠牲にすることによって成り立つという冷徹さがある。 全てが終わったときの田代のつぶやきは、空のない街で夢を追いかけた若者の苦渋が滲み出ている。残念ながら、読者がある程度の年代ではないと、共感を覚えるのは難しいかもしれないな。
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