日本の文学賞

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シングル・セル (講談社文芸文庫 まD 1)

泉鏡花文学賞

シングル・セル (講談社文芸文庫 まD 1)

増田みず子

増田みず子の長編小説。孤細胞のように生きる大学院生と女子学生の関係を通して、他者と共にいることの不可能性と、人間の根源的な孤独を思考実験のように描く。

孤独共生大学院生女性実験小説

作品情報

単独者として生きる二人の共生と別離を描く、静かな実験小説。

『シングル・セル』は、増田みず子の長編小説。孤立した細胞のように外界との接触を制限する人物たちを通じて、親密さと孤独の境界を探る。講談社文芸文庫版が刊行され、泉鏡花文学賞受賞作として作者の代表作の一つに数えられる。

書籍情報

出版社
講談社
発売日
1999-08-01
ページ数
293ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784061976757
ISBN-10
4061976753
価格
1537 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

椎葉幹央は大学院に籍を置く学生、5歳の時母をなくし16歳の時父と死別、以来1人で生きている。学位論文を書くために山の宿に籠るが、そこで奇妙な女性と出遇う。彼女は彼のアパートについて来、住みついてしまう。他を拒否する〈個〉が互いを侵蝕することなく〈孤〉のまま如何に関わるかを鋭利にみずみずしく捉え、生の深淵に迫る力作長篇。泉鏡花賞受賞。

レビュー

  • 理科系小説への誘い

    人間関係がほとんど描かれないという点において、注目すべき小説である。作者は理科系、主人公も然り、ねちねちした印象がない。 しかし、主人公が人との接触を拒むのにはもちろんわけがある。 人間の存在や孤独に、違った角度から光をあてる本作品によって、心の風通しが良くなる読者は多いことだろう。

  • 地味な野心作

    幼い頃既に片親になり、さらに父までも突然の病で失ってしまった視点人物は(植物の)シングルセルのように生きるのだったが……。他人との関わり方への模索は寧ろ現代的なテーマに拡散してしまったようだが、実は自分の親のことさえ良く知らないというのは多くの人たちに当て嵌まるのでなかろうか?

  • ある意味で、私小説の一分野と言えるのでは?

    純文学と言える分野の作品には、時としてややこしい、文章のための文章という様な難解な作品群が見られます。確かにこの作品も、そうだと言えばそうだと言えるでしょうが、兎も角、読ませる文章であることは確かです。 孤立と独居ということがテーマなのでしょうか?固有名詞としての人名は、主人公・椎葉幹央とその相手と言える女性・竹沢稜子だけです。大学院生の指導教授はT、主人公を心配し世話をしてくれる友人はS、父の同僚はG、親族の大伯父に当たる人は「市会議員」と、アルファベットか普通名詞で語られます。読者は幼児期に母を亡くし、青年期に父を亡くして主人公の環境に同情しつつも、自己中心性とある意味でカタワな面を感じるでしょう。時として、その性格に嫌悪感を覚えるでしょう。 なんにしても、そんな人物を描きながら、前半は主人公の眼からアルファベットの人物を中心に過去を語り、後半部分は稜子をリョウコと時には使い分けして、人間関係の淡泊さ、孤立ということを巧みに描き分けています。これが不思議に読ませるのです。それはこの作家の力量というものですが、兎も角、人間が描けていることは確かでしょう。しかし、読む方に負担をかけることも確かです。その意味で「不毛な現代文学」の一分野と言えると感じるのは自分だけでしょうか?主人公と東京農工大出の筆者の専門分野が一緒なのも、私小説的な面を感じてしまいます。

  • 植物的かどうかはわからないが…

    山々に囲まれた宿に主人公椎葉幹央が一人滞在しているところから話は始まり、前半ではそれまでのいきさつが回想的に語られていく。 作品紹介の粗筋に書かれている竹沢稜子が登場するのは、半分を過ぎてからである。最初にはっきり氏名が書かれるが、椎葉からの視点では、しばらくはリョウコとカタカナ書きである。お互いほとんど話を交わさないままで、椎葉がいつ彼女の氏名を知ったのかは書かれていない。最後には結局謎を残したまま椎葉の前から姿を消してしまう彼女には、フルネームを与える必要さえなかったのではないかとも思われる。なにしろそれ以外の登場人物については、T教授、S、G等としか書かれていない作品である。 泉鏡花賞受賞作というので幻想的な作品かと思っていたら、そうでもなかった。二人の出会いの席で語られるシングル・セル(孤細胞)についての学術的な話は、少々不思議な感じのアナロジーを感じさせるが。

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