作品情報
『ピアニッシシモ』は、梨屋アリエの視線が題材の奥にある時間と感情をすくい上げる作品です。
自信のない少女が、ピアニストを目指す同年代の少女に強く惹かれていく物語。友情、憧れ、家族への複雑な思いが、弱音のように繊細な調子で描かれる。 受賞作としての位置づけだけでなく、作品そのものが持つ題材、語り口、余韻を伝える一冊または作品です。
レビュー要約
-
作品の核となる題材への集中と、言葉の密度を評価する読みがある。一方で、背景知識を求める静かな作風として受け止められることもある。
書籍情報
- 出版社
- 講談社
- 発売日
- 2003-05-01
- ページ数
- 189ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784062118606
- ISBN-10
- 4062118602
- 価格
- 39 JPY
- カテゴリ
- 本/絵本・児童書/読み物/童話・文学
梨屋アリエの「真骨頂ワールド」待望第2弾「強弱記号のピアニッシモよりもっと小さい音…その淡い音が確実に存在しているって証をはなってあげたい」松葉と紗英の関係は五線譜の上でどんな曲を奏でるか!
レビュー
-
けっこうえげつない
『ピアニッシモ』です。いや、『ピアニッシシモ』です。 中学生の女の子二人のイビツな交流を描いた児童文学作品です。 一筋縄でいくようなきれいな友情物語ではありません。 『いちばん弱い音が、いちばん強く心に響く 児童文学の新星が描く、揺れる思春期の思いずっと松葉が大好きだった、隣の家から流れるピアノの音。しかし、中学三年のある日、ピアノは譲られてしまう。松葉は行方を追い、新しい持ち主の紗英と出会う。 講談社児童文学新人賞受賞作家 待望の第2弾! 家のなかに、一日のうちのたった三分でもいいから、 ちゃんと私の話を聞いて、 受け流さずに受け止めてくれる人がいてほしい……松葉 独り暮らしができるようになったら さっさと家を出て、すっごい恋愛をして、 好きな人と幸せに平凡に暮らしたい……紗英』 会話のテンポや理論展開が、ドレミと順に進むのではなくドミと一足飛びな感じがして前半は読み難かったのですが、中盤には慣れました。 中盤あたりからは、主人公と大人の意見の対立が、等身大で、毎日毎日鉄板の上で焼かれてイヤになっちゃった鯛焼きのようなもどかしさや苛立ちが非常に共感できました。 後半はピアニッシシモどころではないかなり激しい展開となります。それまで白馬の王子様を待っているだけだった主人公が○技で闘う場面は痛快です。 ラスト。友情は永久に不滅ですハッピーエンドではないのですが、でもきちんと前向きで後味の良い締めくくりでした。 本も厚くないし文章もリズムに慣れれば軽快に読めるのですぐに読了できるのですが、読み応えはありました。 えげつないので、本当に子供に読ませるにはけっこうヤバい本かもしれませんが、良作であるのは確かなので★4です。
-
自分で自分の舵がとれるように
子供のころ、年をとればなんとなく「ちゃんとした」大人になるんだろうと考えていて、そのまま年をとってしまった私なので、この話を読んでボディブローを浴びたような衝撃を受けました。今と未来がつながっていること、まわりの人が抱く自分に対するイメージ以上に大切な何かを1つくらい持つこと。この2つを、常に意識しながら生きていきたいなって思いました。
-
思春期を思い出す作品
ふつうの家に生まれ、ふつうの生活をしている松葉。そんな彼女の前にあらわれた、すばらしいピアノの才能を持つ紗英。松葉は彼女を特別な存在だと思い、心のよりどころを求めていく。 日本児童文芸家協会新人賞というものを受賞した作品だそうです。 とても魅力的なおはなしでした。 自分を特別だと思いたい、周囲の人間に思わせたい。誰だって一度は思ったことではないでしょうか。紗英には、そんな思いに見合うだけの才能があった。そうして松葉はそんな彼女に憧れた。 すごく共感できるお話です。
-
どんなに小さなものでも
現代に生きる子供の気持ちがとても丁寧に描かれています。 そんなに早く大人になりたいわけではない。 けれど、子供のままでは不自由なことが多すぎて。という気持ちにとても共感がもてました。 大人への不条理。自分への苛立ち。世間の矛盾。 たくさんのものを抱えて、押しつぶされそうになっても、最後、我武者羅に突っ走る姿も好感がもてます。
関連する文学賞
- 児童文芸新人賞 第33回(2004年) ・受賞