書籍情報
- 出版社
- 講談社
- 発売日
- 2006-08-10
- ページ数
- 333ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784062135603
- ISBN-10
- 4062135604
- 価格
- 1551 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
第52回江戸川乱歩賞を受賞した傑作長編!終戦直後、シベリアで起きた日本人将校斬首事件と現代日本でのロシア人女性殺人。60年を隔てた情念が二つの事件の真実を照らし出す。王道を行く本格ミステリ。
レビュー
-
歴史の勉強になります。
戦争について、改めて深く考えさせられました。
-
丁寧で平易なミステリ小説
シベリア抑留について調べているなかで手に取った一冊です。 伏線が丁寧に張られているのですが、あまりに丁寧なため、ある人物の初登場の時点で「この人が犯人だろうな」と察しがついてしまいました。凶器や殺人の動機も想像の域を出ません。 それと気になったのは、三十代以下であるはずのヒロイン、主人公の妹が、まったく年齢相応の喋り方をしていない点です(10年前に書かれているとはいえ)。おばさん口調が気になってしまい会話の内容が頭に入って来ない。熟女ものとか義母ものの官能小説の登場人物みたいだよ! 色々批判的な感想を述べましたが、俳句から犯人の手掛かりを探っていく行程は面白いですし、ミステリとして楽しみながらシベリア抑留についての知識を得られるので、大変意義のある一冊だと思います。 本書でシベリア抑留や、収容所で詠まれた俳句について興味を持たれた方は、参考文献にも挙げられている『収容所から来た遺書』を併せて読むことをお薦めいたします。
-
シベリアに眠る人々を忘れない
第52回江戸川乱歩賞受賞作。 シベリア抑留のなかで不可解な死を遂げた鴻山中尉。 その第一発見者である高津二等兵が、58年後、シベリア抑留生活を 詠んだ俳句集(手記)を自費出版させようとする。 さらに舞鶴港で、そのシベリア俘虜収容所の看護婦をしていたロシア人 女性殺害。一緒にいた男性は行方不明。その男性の名字は鴻山。 冒頭から事件のすべての題材をさらけ出し、読者を物語へと誘う力を 強く感じます。 高津の手記が、シベリアと舞鶴、ふたつの殺人事件を解決するプロット がおもしろく、構成力があります。 高津がシベリア抑留生活の傷を背負って孤独に生きてきたのと反対に、 自費出版専門出版社の営業担当槙野の中途半端な態度、まわりのことに 振り回される生き方に、現代社会の生ぬるさを浮かび上がらせます。 しかしミステリーを解く段階で、失速。警察も高津の手記のみに頼って しまう。つまらない。 ただし、最後に高津の身体的特徴をキーポイントにしたのはいいです ね。カタルシスを覚え、とりあえず胸をなでおろす展開になっていま す。 おそらく著者はシベリア抑留生活を描きたかったのでしょう。 その描写は迫力があり、忘れてはならない戦争の傷ということを、今 一度、胸に刻みました。
-
若者に、読んでいただきたい
戦争が、ここまで、人格を踏みにじっていたとは、いまさらながら、驚かされました。 題材にした作者は、素晴らしいです。
-
作者は上手く纏め上げている
現代に発生した殺人事件の原因を、過去の出来事に求める、 やや古いタイプの作品である。文章がこなれていないのと、展 開にメリハリがないので、最初は読み進めるのに多少の努力 を要した。 ミステリーとしてみると、60年前の事件が殺人まで犯す動機と なり得るのか、疑問である。日本国内ではなく、シベリア抑留中 の出来事であり、証拠も何も無いのに、殺人まで犯すだろうか。 トリックも、発想は良いが、いささか無理があるような気がする。 作品後半の、元シベリア抑留兵が書いた手記と俳句から、現代 の殺人事件の謎解きをする展開は面白い。手記の中で語られる 悲惨な抑留生活や、現代に生きる人々が手記と俳句から殺人 事件を推理する姿は、この作品の読み所である。 ただ、謎解きをするのが、警察と編集者の二手に分かれてしまい 中途半端な印象を受けた。どちらかに重点を絞った方が良かった のではないか。また、会話が妙に回りくどかったり、判りにくかっ たりするのが気になった。 ミステリーとしては構成やトリックなど凡庸と言えるかも知れない。 素材は違えども、似たような内容の作品を、何度か読んだ気もする。 しかし、シベリア抑留生活や俳句等の素材を、作者は上手く乱歩 賞の規定枚数に纏め上げている。乱歩賞受賞作として、一定の 水準に達している事は間違いないと思う。
-
久しぶりの本格派推理小説!
最近再び推理小説を読み始めて、買ってみたのが本書。多くの文献を参考に歴史の暗部に着眼したミステリーの組み立ては、久しぶりにスカッとした読後感をもたらしてくれた。途中やや中弛みの感もあるが、イントロの記述が読み手を一気に引き込み、その勢いでラストまでという飽きのこない作品だといえる。
-
現代と戦争をつなぐもの
感動した。何よりもまず、テーマがしっかりしている。 推理小説として、たとえば江戸川乱歩の世界を期待して読んでしまうと、「なんだ、つまらない」と読む人もいるだろう。当然である。この小説は、人間ドラマを描いているからだ。 そこに、謎解きの要素が入ってくる。俳句の解釈と、殺人との関係、自費出版のことなど、細かいプロットに目がいってしまうと、派手な殺人事件がない、エンタテインメント性に欠けるところも、確かにある。 しかし、戦争について、実にわかりやすい文章で描きながら、現代に生きる私たちに、祖国とは、愛とは、家族とは、そして日本で現代を生きるとは何かを伝えようとしているテーマ性は、大いに評価できる。 小ぶりの作家、小手先の、軽いエンタテインメント性だけでないようのない小説が多い中、ひさしぶりに重量感のある作家が誕生したといえるだろう。 自作は。あまり急がなくてもいいので、本書のような、きっちりとしたテーマのある作品を期待したい。
-
力作だが二番膳茶のミステリー
この手を題材にしたものは,たくさん前例があり、オリジナル性に欠けるので良いストリーであっても感心できませんでした。ただし、読ませる力はある作者で、読んでも損の無い作品なのは確かです。
関連する文学賞
- 江戸川乱歩賞 第52回(2006年) ・受賞