ドーン (100周年書き下ろし)
人類初の火星着陸を成し遂げた宇宙飛行士を中心に、英雄化、監視社会、個人の罪と記憶を描く長編です。近未来の政治とメディアの中で、人間の同一性が揺らぎます。
作品情報
ドーンは、日常の手触りの中に異界の気配が差し込む物語です。
宇宙船DAWNで起きた出来事は、帰還した英雄の人生と社会の熱狂を静かに変えていく。科学技術が進んだ未来を背景に、個人が背負う秘密と世界の視線が交錯します。
レビュー要約
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短い形式の中で不穏な余韻を立ち上げる点が評価されている。説明を抑えた語りが、読後に想像を広げさせる。
書籍情報
- 出版社
- 講談社
- 発売日
- 2009-07-10
- ページ数
- 493ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784062155106
- ISBN-10
- 4062155109
- 価格
- 2370 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
最高の純文学にして究極のエンターテインメント! 2033年、人類で初めて火星に降りたった宇宙飛行士・佐野明日人。しかし、宇宙船「DAWN」の中ではある事件が起きていた。世界的英雄・明日人を巻き込む人類を揺るがす秘密とは?
レビュー
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実用的エンタメ文学
分人という概念で人間の善とも悪とも言い切れない複雑性が認識しやすくなった。自分自身の中に存在する分人一つ一つにとって適切場を自分自身で意識的に設けていこうと感じたし、自分が愛せないような分人が発生してしまう関係性からは距離を置こうと感じた。しかし、明日人と今日子のように終わらせたくない関係においては互いに見せてこなかった別の分人を公開し合うことによって、その関係性において発生してしまっていた息苦しい分人を緩和させることができるのだろう。端的に言えば本音をぶつけ合うということになるかもしれないが、それよりもより正確な表現だと思う。また人間は世の中の役に立つから生きていていいのではなく、生きているから世の中の役に立ちたいと考えるのだという文言も心に残った。現実の清濁を正確に把握し認めた上で前向きに生きられるような考え方を示唆してくれる小説を書くから心に染みる。面白かったというだけでなく一定の答えと疑問を残してくれるから実用的だと感じられる。
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社会派純文学
とても面白く読ませてもらいました。 個人の問題、人類とが抱えている問題、その両方に物語でアプローチしている作家さんは珍しいと思います。構造が斬新で、とても挑戦的な作家さんの姿勢に、芸術家としての心意気を感じました。文章表現もところどころ、唸らせる素晴らしい表現があって、この作家さんを芥川賞に選んだ審査員の方々は見る目があったと思います。まだ全ての作品は読んでいませんが、他の作品もすべて読むつもり。一番期待している作家さんです。
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タイトルとの関係は?
難しかった。火星探査に大統領選挙という、それぞれ関心 深いテーマであったのだが、登場人物が主に外国人でカタカナの名前だったこともあり、背景を理解できず、何となく、ふわっとした感じで読み終えてしまった。最初の登場人物関係図も見返そうともしなかったし。 タイトルの夜明けは、何を意味していたのか。
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40代以上は「1Q84」 30代からは「ドーン」
「1Q84」が携帯電話やネットのない時代を描いていたのと対照的に、ありとあらゆる未来のメディアが登場して、それはもう博覧会のよう。ただ、それは希望に満ち溢れた輝かしい世界のものではなく、現代にもあるメディアの負の要素を背負っている。彼ならではの想像力と取材力が駆使されていて、共著 「ウェブ人間論 (新潮新書)」 に続く「近未来メディア論」のような論文がこの本を元に簡単にできあがりそうなほど。 そんな贅沢な内容を、論文ではなく、最高のエンターテーメント小説にしたてたのがこの本。平野氏はオピニオンリーダーというだけではなく、間違いなく文学者。 候補者の言動に直前まで結果が左右されるアメリカの大統領選、そして誰もが心浮き立つ火星への宇宙旅行。こんな壮大な舞台が用意されているから、いっきに読めてしまう。 「私たちの側に立つのかテロリストの側に立つか」というブッシュ元大統領のセリフにカチンときた人には爽快な内容になっている。 「決壊」 では絶望的に提起された、自分自身と向き合うと、分化していく果てのない自分、そして夫婦間や親子のような最小の、核となる人間関係には、ここで夜明けが用意されているから、 「決壊」 の続編として読まなければ、救われない。 1984年から今を見据えても、状況は一層困難に、複雑になっているだけで、夜明けは見えてこない。30才代・・・携帯やネットのある社会に違和感のない世代、進化していくメディアにそれでも明るい側面を見出そうとする世代には、ぜひこちらを薦めたい。
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人間はディブをそれなりにたくさんかかえて、いろんな自分を生きることでバランスがとれている
本書『ドーン』(『ドーン(DAWN)』とは本書の主人公らが乗った火星探査宇宙船の名前であり、「夜明け」を意味する)は、平野啓一郎が、人間の基本単位として「分人」という概念を、自身の小説の中で初めて登場させた作品ですが、本書における近未来世界では、この分人の概念がある程度浸透しているとの前提にたっているがため、多少戸惑いを感じるかもしれません。 分人主義の意味は、もちろん本書だけでもしっかり説明はされているのですが、個人的には、本書読了後、「分人主義」の概念をより分かりやすく説明するために執筆された新書『私とは何か「個人」から「分人」へ(講談社現代新書)』を読むことで、より理解を深めることができましたし、本書に対する関心も高まりました。 私は本書を先に読んだのですが、これから読む人は、ひょっとしたら新書を先に読んでおくと本書に対するスムースな理解に役立ち、物語に没頭できるかもしれません。 本書は、この「分人主義」の概念を理解するための分かりやすい極端な環境として有人火星探査船が舞台の一つに選ばれたのではないかと感じます。 6人のクルーたちが、火星までの往復に2年半もの間、ろくにプライバシーもないような閉鎖された宇宙船という狭い空間においてともに生活を送る。そのストレスたるや、とてつもなく過酷なものと想像しますが、そのような閉鎖空間での長期にわたる生活が過酷だと感じられるのは、クルーたちにおける多様な分人化が阻害されているからではないか、というのが作者の考えです。 身の回りに、多様な考えの人がいればいるほど、それに対応する自分も多様となる。その対人関係ごとに多様となる一つ一つの人格はいずれも本来の自分であり、それらを分人(ディブ)と呼ぶと、個人とは分人の集合体ということができる。これが「分人主義」の考え方だ。 「6人の人間がずっと一緒にいると、たった一種類のディブしか生きられない。人間はディブをそれなりにたくさんかかえて、いろんな自分を生きることでバランスがとれているのだと思う。外に向かって発散されないディブが内に増殖していくことは、精神衛生上すごく悪い」(文庫本174ページ) 本書はこういった「分人主義」の概念を根底に物語が展開されるのですが、近未来を舞台としていることから監視社会の進んだSF小説的ガジェットが登場したり、アメリカ大統領選をめぐる政治的取引が取り上げられたりと、(人物名等も含め)多くの情報が取り込まれている感もあり、割とスラスラと読めた『決壊』『マチネのおわりに』『ある男』『本心』などと比較すると、多少の引っかかりがあり、何度か数ページ戻って読み返しながら読み進める、といった作業が必要でした。 そのため、本書が伝えたいことを理解したうえで、改めてもう一度読み返すと、物語に集中して、初読よりぐっと面白く読めるかもしれません。
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いい取り引きでした。
スムースでとてもよい取引でした。機会があれば、またおねがいします。
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ここまで長くする必要があったのか
初めてこの作者の作品を読みました。 前半部分はミステリー要素もあり、どんどん読み進めていけたのですが、 後半、大統領選がメインになってくると、話の主題が変わってしまい、 あまり読む気力も無くなり、最後のあたりは毎日少しずつしか読めませんでした。 この本の中で語られる男女の恋愛の話と大統領選の話は一つにまとめる必然性があまり 感じられず、盛り込み過ぎではないでしょうか。 本は分厚いですが、薄っぺらい読後感しか抱けませんでした。 他のレビューを読んでみると、この作者はこういった系統の作品が多いようですね。 ちょっと自分には合わなかったようです。
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近未来的であり現代的
そのような印象を受けた。 作品の中に出てくる『ディヴィジュアル』という考え方。 たしかに人間はそのようにTPOにあわせて変化する場合がある。 久しぶりに物語として楽しめて読めた作品だった。 全般的に多少湿っぽい重さがある。 この世の先端をゆく宇宙飛行士の悲哀を感じる。 この本にて宇宙へと旅立ちたい方はどうぞ。