作品情報
喪失後の時間の中で、悔いと記憶が静かに折り重なる。
「異郷」は『文學界』2010年1月号初出で、『遍路みち』に収録された第37回川端康成文学賞受賞作。講談社公式は『遍路みち』を、吉村昭の死から三年余りを経て書かれた小説集として紹介している。
レビュー要約
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夫の死をめぐる作品群として、私的な喪失を抑制された筆致で描く点に読み応えがある。重い題材ながら、日常の細部から悲しみが立ち上がる構成が印象に残る。
書籍情報
- 出版社
- 講談社
- 発売日
- 2010-04-01
- ページ数
- 199ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784062160988
- ISBN-10
- 4062160986
- 価格
- 449 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
楽しいことも嬉しいこともあったはずなのに……悔いのみを抱いて生きてゆく遍路みち 夫・吉村昭氏の死から3年あまり、生き残ったものの悲しみを描く小説集 洗面所のコップの中の2本の歯ブラシを見ると、1本も虫歯のないことを自慢していたことを思い出した。夫の母親が、おまえは口もとがいいね、と言っていたという話をからかいながら口にすると、かれはふざけて口角を少し上げて笑ってみせた。育子はその笑顔を思い出して嗚咽した。――<「遍路みち」より>
レビュー
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死ぬ時は一人
五つの短編それぞれに味わいがある。読者の年齢によっても違うだろうが、六十代半ばの私にはスーッと心に入ってきた。 短編のうちの一つ、「木の下闇」が特に印象深い。看護婦として一人で暮らしてきて老人になった女性の孤独が静かに迫ってくる。 養女にした少女が成人になるとさっさと出ていってしまったエピソードなど思うようにならない人生の一端が淡々と綴られている。
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吉村昭氏のファンが読むべき本
吉村昭氏のエッセイは何冊も読んでいるが、氏の最後の時のことは当然どの本にも書かれていない。 この本のなかには吉村氏の見事といえる最後の姿が書かれているので 私のように津村節子さんには興味0の人でも、吉村ファンならば十分読む価値がある本だといえる。 ・夫婦はお互いの著作は読まないようにしていた。 ・津村さんがどこかから帰宅するときは、吉村氏が必ず向かえに出ていた ・温泉街に別荘的なマンションを持っていた。 など、これまで知らなかった情報も書かれていた。
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取り乱す妻の姿
いかに吉村昭という人が偉大であったか…。いつも冷静で潔癖な節子さんが妻として恐ろしく取り乱している…。そんな風に思ってしまった。 私はずっと吉村・津村夫婦作品の大ファンであるし、人間的にもお二人を尊敬するものであるが今までこんなに取り乱した姿の節子さんを作品上で見るのははじめてである。今までのご夫婦の私小説的な作品の中、吉村昭が夫人の節子さんにべたボレなのを堂々と表現しているのに対し、節子さんは同じ事柄を描いてもぐっと夫に点の辛い描き方であったように思う。ちょっと吉村さんに冷たいのでは?と思えるほど夫の身勝手さ、を書いていた。ところがこの本に納められた「遍路みち」「声」「異郷」では潔癖症の節子さんが、吉村さんの死にうろたえている自分をそして妻としての嘆きを素直に表現しているのである。今まで意識的にのろけるのを避けていたのだろうが、ここにはいつになく素直に夫に脱帽する妻としての節子さんがいる。無心論者の吉村さんがじっと死病と対峙している時に、話をしたいであろう夫の気持ちを汲みきれず出版の準備に追われていた自分の姿を悔恨する節子さんの切なさ。その妻の姿をじっと見守るる病床の吉村さんも切ない。それにしてもかの吉村昭にこれだけ最後まで愛された節子さんは幸せであるとつくづく思う。
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しみじみとした情感
ご丁寧な対応有難うございました。
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死は自分だけのものではない
遍路みちは短編集ですが、全て、津村氏の体験に基づいています。 夫との生活、療養、看病、そして死 ご夫婦共に作家ですから、普通のご家庭とは違います。 でも、悲しみはどこでも同じですね。 ガンで死ぬ逝く人は、死と対峙しつつ生きる時間があります。 それもつらいことでしょうが、それを見守っている家族も辛いですね。 亡くなったら、本人はもはや何も感じることができないわけですが、 残された家族は、日々悲嘆と向き合って生きていかなければなりません。 そして、悲嘆から少しずつ立ち直っていく、 死と悲嘆を考える良い機会になりました。
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心地よい文章
夫吉村氏が亡くなって3年ということだが、日常のことを読みやすい文章で、読後心地よさを感じた。 ミステリーのややこしいものを読んだ後にはお勧めです。
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吉村昭亡き後の妻の苦しみを綴る
吉村昭の死後、妻・津村節子が出した短編小説集。 収録5作品のうち4作品に吉村昭が出てくる。うち3作は、吉村昭が亡くなった後の作者が描かれている。 仕事に追われ、夫が死を覚悟していることに気づくことができず、介護も十分に出来なかった事を深く悔いる作者は、四国遍路、下北・恐山、熱海へと出かける。夫との数々の思い出が作者の胸に去来し、悲しみが消えることはないのである。 本書所収の「異郷」は、2011年の川端康成文学賞の受賞作品。川端康成は吉村昭が尊敬した作家の一人で、吉村昭は何度も同賞の最終候補となったが、受賞には至らなかった。今回の津村節子の受賞は、吉村昭ファンとして感慨深いものがある。
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人はいつまでも立ち止まれない
ひとつの死に接して、 本当は立ち止まってしまいたいのだけど、人は進んでいかないといけない。 自分がこの立場になったとき、このように自分がふるまえるのだろうか? そう考えながら読んでいきました。 ゆっくりと、こうしたことを考えながら読んでいくといいと思います。 自分も普段ならこれぐらいの量の本なら1、2日で読み終われるのですが、 今回はもっと時間をかけてこの感覚を味わっていました。
関連する文学賞
- 川端康成文学賞 第37回(2011年) ・受賞