作品情報
裁かれた命:死刑囚から届いた手紙は、受賞時の評価点を手がかりに作品世界へ入っていける一冊です。
死刑判決を受けた青年が担当検事に送った手紙を起点に、人が人を裁くことの意味を問い直すノンフィクションです。事件、裁判、家族史を丹念に追い、司法と倫理の重さを浮かび上がらせます。 講談社から単行本が刊行され、のちに講談社文庫版も刊行されている。
レビュー要約
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刊行情報と紹介文からは、受賞時に評価された題材の明確さと読み進めやすい構成がうかがえる。人物や状況の輪郭を追いやすい点が読みどころになっている。
書籍情報
- 出版社
- 講談社
- 発売日
- 2011-03-29
- ページ数
- 349ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 13.5 x 2.5 x 19.5 cm
- ISBN-13
- 9784062168366
- ISBN-10
- 4062168367
- 価格
- 2820 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
高村薫氏推薦 〈彼ははたして死に値する極悪人だったのか。40年目の疑問が私たちに襲いかかる。〉 忘れられた死刑事件が、人が人を裁くことの意味を問いかける 1966年(昭和41年)、東京・国分寺市で一人の主婦が被害者となった強盗殺人事件が発生した。4日後に逮捕された22歳の犯人・長谷川武は、裁判でさしたる弁明もせず、半年後に死刑判決をうけ、5年後には刑が執行された。 その長谷川死刑囚が、独房から関係者に送っていた手紙が残されていた。とくに事件の捜査検事だった土本武司は、当時、手紙に激しく心を揺さぶられ恩赦へと動き出そうとしたほどだった。 昨年、NHK-ETV特集で放送され大反響を得た内容に、その後の継続取材で判明した新事実を積み重ねた長編ノンフィクション。裁判員裁判のもと、誰もが死刑事件と向き合う可能性があるいま、必読の一冊。講談社ノンフィクション賞受賞後第一作。 【筆者より】 死刑囚が遺した手紙から、長谷川武という一人の青年の人生を辿ってきました。命の重みを受け止めようとしなかった司法の現実が明らかになり、戦前、戦後の時代の渦の中を生きた、ひとつの家族の姿が浮かび上がってきました。(中略)裁判は法廷の中だけで判断を迫られますが、本書で見てきたように、法廷に現れる資料は万全ではありません。限られた材料で判断を下さなくてはならないという裁判の大前提、そして人が人を裁くことの不完全さを、裁く側は頭に入れておかなくてはならないと思います。
(ほりかわ・けいこ) 1969年広島県生まれ。フリーのドキュメンタリーディレクターとして番組制作に取り組むとともに、ノンフィクション作品を発表している。『死刑の基準―「永山裁判」が遺したもの』で、第32回講談社ノンフィクション賞受賞。他の著書に『チンチン電車と女学生』『日本の戦争BC級戦犯60年目の遺書』(ともに共著)がある。主な番組は、ギャラクシー賞テレビ部門大賞を受けた『死刑囚永山則夫 獄中28年間の対話』や『ヒロシマ・戦禍の恋文』など。
レビュー
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趣味読書の方はぜひ
趣味は読書、ノンフィクションしか読みません。その中でもこの本は色々考えさせられます。これから読む人がいるので詳しくは書けないですが、読む価値ありです。
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事件の動機背景がドキュメンタリーの書いて有ります。
世代間があるが犯罪に至るまでそうして50年前の出来事ですが、死刑制度に一石を投げた本です。
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国家による死とは
死刑制度における問題点を 一人の元検事と死刑囚を通して 丁寧に取材し、提起している。 堀川氏の粘り強い取材力、筆力に 圧倒される。 大変読みやすく、重いテーマであるのに、思わず読み進めていく力がある。 日常を暮らす市民が 見て見ぬふりをしていることに 目を向けさせるだけでなく、 年月が経ち、すでに刑が執行されている強盗殺人事件を振り返ることで、 罪と罰について深く考えさせられた。 絞首刑が執行されているのは 世界の中で日本だけである。 そのことについて、 思考停止してはならない。
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2026年、今、読むべき本
著者の取材力は他の著書でも実証されている。 本書でも、困難な中にも諦めずに、突破口を見付ける、その執念に驚かされる。 ところで、安倍事件の判決で、裁判所が、山上被告の情状酌量を考慮だにしなかった。 そのような状況だからこそ、今、正に、読むべき本であろう。 今年5月放送のNHKドラマ「有罪、とAIは告げた」に、本書の趣旨が描かれている。
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まだ、甘い。
本書の意図がやや不明であるが、悔悟した人間を果たして死刑に処してよいのかという疑問は、古くからあった。 ノンフィクションとしての調査には限界があることは承知しながらも、真に知りたいことがわからないのは、読む者にとって不満となる。ノンフィクションであろうが、納得のできないものは納得できない。 なぜ、長谷川は、自動車修理工場をやめなくてはならなかったのか。やめてから二ヶ月後に自殺することにしていたようだが、その間の生活費を事前に準備しておくことはできなかったのか。三件も泥棒に入ったことが理解できない。その間に逮捕されれば、自殺もできなくなってしまうのではないか。 母静子の自殺から敷衍してみると、静子には、自殺しなければならない理由があったようだ。その理由とは、愛する息子が死刑で亡くなったからではなかろう。己が罪を恥じての自殺という印象を受ける。そのことについては、作者は、なぜか、微妙な筆致ながらも母親とその妹の闇の世界への関与をにおわせている。 彼が、誕生日に、しかも父親が亡くなった時刻に自殺するということは、父親への愛情よりも、母親への憎悪すら感じさせるものである。「強盗日記」とは、母宛の遺書のようだが、その緻密性と無計画性が同一人格に存在するのが不思議だ。 死刑制度を考えるとき、レビュワーは、簡単に廃止とはいえないと考えている。 特定の人間に生殺与奪の権とその手段を与え、己が生き方を磨かせたときに出現した「武士」という人間の一典型の思考と行動の様式に、日本人は大きな影響を受けてきた。故あって、人を殺したときも己が命で償い、切腹して果てるとき、我々の根源的な報復感情は、いささか沈静する。 裁かれるのは、命ではなく、罪であり、償いとして差し出すのが命である。作者の考察は、まだ甘い。
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受刑者の手紙
初犯の若き罪人が死刑に処されるまでの日々が記されたもの。 裁判長の心の内など初めて知ることばかりでとても興味深い。 著者が丁寧に取材されてるのがわかり、とても読み易い。
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一度読んで考えて見たい
一死刑囚が残虐な罪を犯して、死刑囚として断罪され、執行されたこの事実の背後に、一人の人間を巡る複雑で重い人間関係があり、裁く者、裁かれる者という立場を超えた人間への眼差しがあった。死刑制度を巡り生まれる人間の悲劇を痛感した。改めて死刑制度における命を裁く意味が重く問われているようだ。
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死刑の意味とは
今のところ今年最も心を揺さぶられた本。私は最近アマゾン・キンドルで購入して、iphoneで車の中で読み上げさせているのだが、この本の最後の方は涙が出て止まらず非常に困った。 死刑囚の話を読むと心が矛盾に悩むことが多い。それは、死刑を通じて死刑囚の心に生の尊さ、真の後悔と改悛の情というものが生まれてくるような気がしてくるからだろう。本書中にも出てくるが、死刑囚になってしまったことで死刑がふさわしくない人間になってしまったりすることだ。 物語(ノンフィクションだが敢えて)の主人公は長谷川武という死刑囚である。1966年、強盗を何度か重ね、最後の反抗では強盗に押し入った家で頑強に抵抗した主婦を殺した強盗殺人犯である。 この事件だけを見ると極悪人であり、事実裁判では最高裁まで判を進めたがいずれでも極悪非道な点を強調され、1人の被害者ではあっても死刑に処せられている。これは現在の基準では厳しすぎると言えそうだが、しかし強盗殺人の残虐さは否定出来ない。 ところが、この事件の捜査検事として長谷川への死刑求刑を行った土本武司のもとに長谷川からの手紙が獄中より届く。当初はその裏を考えた土本も次第にそのようなことがないことを知り、文通を重ねていく。 さらに控訴審での弁護を担当した小林弁護士への手紙。これらの手紙が示すのは、残虐な強盗殺人犯とはかけ離れた心情の吐露であった。そもそも長谷川武は虫も殺さぬような穏やかな青年であり、鈑金工としての腕前はピカイチで到底殺人どころか、何らかの犯罪に手を染めるような人間とみなされてはいなかった。その彼が、なにゆえ犯罪を犯すに至ったのか、正確なところはわからないが、残された手紙、関わった人の証言から少なくても要因までは考察されていく。その過程の中で記述される長谷川の獄中と母親や弟の生活の様子、そして犯罪後に関わりを持った土本と小林の言葉、死刑に向かう長谷川に向き合った教誨師の言葉、それらの示す事実の全てに涙を禁じ得ない。 とはいえ、何人かの書評が指摘しているように本書には被害者のことがほとんど書かれておらず、それがために読み進めるうちに被害者がいることをつい忘れがちになってしまう。被害者家族からすれば、長谷川の改悛など知ったことではないだろう、ということを考えると読者として気持ちの置き所に困ってしまうのはよく分かる。 それでも本書が貴重なのは、読者にこのような死刑囚がいたことを通じて、犯罪を生み出す社会の要因、刑罰としての死刑の妥当性に再考を迫ることにあると感じる。 尚、改めて再読した。長谷川が死刑になる直前、教誨師の立ち会いのもと母親と面会した場面、その後の母親の最期、そして長谷川とは会ってもいなかった、しかし彼の罪を心に背負って貧しいながらも真面目に生きた異父弟の一生が最終章では次々と描かれる。実に緊迫感ある著述であり、また死刑の意味、人生の意味、そして罪と罰の意味について考えさせられる。
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- 新潮ドキュメント賞 第10回(2011年) ・受賞