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雲をつかむ話

読売文学賞

雲をつかむ話

多和田葉子

『雲をつかむ話』は、多和田葉子による受賞・候補対象作。人物の選択や時代背景、事件の推移を通じて、読者を作品世界へ引き込む構成を持つ。

文学賞対象作人間ドラマ物語性

作品情報

『雲をつかむ話』は、受賞歴と書誌情報を確認できる多和田葉子の作品。

『雲をつかむ話』は、多和田葉子による受賞・候補対象作。人物の選択や時代背景、事件の推移を通じて、読者を作品世界へ引き込む構成を持つ。 書誌識別子は、Amazon JP、NDL/CiNii、出版社・書店情報で単独書籍または収録書籍として確認できたものだけを記録し、雑誌号や掲載媒体の識別子は流用していません。

書籍情報

出版社
講談社
発売日
2012-04-21
ページ数
255ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784062176309
ISBN-10
4062176300
価格
1760 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

犯人と出遭った心躍る話は、みんなに話してきかせたくなる。エルベ川沿いの家を訪ねてきた背の高い男。ブレーメン出身の「鱒男」。路面電車で見た双子の片割れ。本名で呼ぶことのできない「マボロシさん」……。雲を見ていると「互い違い」な出遭いの数々が浮かんでくる。野間文芸賞受賞後第一作、待望の長編小説。 人は一生のうち何度くらい犯人と出遭うのだろう――。 わたしの二ヵ国語詩集を買いたいと、若い男がエルベ川のほとりに建つ家をたずねてきた。彼女へのプレゼントにしたいので、日本的な模様の紙に包んで、リボンをかけてほしいという。わたしが包装紙を捜しているうちに、男は消えてしまった。 それから一年が過ぎ、わたしは一通の手紙を受け取る。 それがこの物語の始まりだった。

1960年、東京生まれ。早稲田大学卒業。ハンブルグ大学修士課程、チューリッヒ大学博士課程修了。1982年よりドイツに在住し、日本語とドイツ語で作品を手がける。1991年『かかとを失くして』で群像新人文学賞、1993年『犬婿入り』で芥川賞、1996年シャミッソー文学賞、2000年『ヒナギクのお茶の場合』で泉鏡花文学賞、2002年『球形時間』でBunmamuraドゥマゴ文学賞、『容疑者の夜行列車』で谷崎潤一郎賞、伊藤整文学賞、2005年ゲーテ・メダル、2009年坪内逍遙賞、2011年『尼僧とキューピッドの弓』で紫式部文学賞、『雪の練習生』で野間文芸賞など受賞多数。 主な著書に『ゴットハルト鉄道』『旅をする裸の眼』『海に落とした名前』『ボルドーの義兄』などがある。

レビュー

  • 本当に雲をつかむような話

    本当に雲をつかむような話だ。この作家の作品は、感覚的にわかるので、好きです。ストーリーは、あるようであって、ないようであって、やはり、あるらしい。現実なのか、夢なのか、自分なのか、他人なのか、今なのか、過去なのか、ドイツのどこにいるのか・・・。そんな感覚が好きだ。 (引用) 目の前に男の顔がある。肌の色はくすんでいるが、瞳の中では滝に打たれる石のように飛沫が激しく動いている。わたしと目が合うと、幼友達でも見つけたようにその表情がパッと開いた。初対面である。誰かに似た顔。思い出せない。乾いて紅色に燃える唇が開いて、息といっしょに、ぼっぼっと音節をぶつけてくる。口のまわり、目尻、額の皺たちの活動も活発で、小刻みに小さな波が岸に打ち寄せてはまた引いていく。(引用終わり)

  • なにものかに囚われる漠然とした予感

    「雲をつかむ話」(多和田葉子)を読んだ。とりとめもなく語られていく事柄が、実はある一点を軸に回っており、なにものかに囚われる漠然とした予感若しくは恐怖なのかもしれない。多和田さんの紡ぐ緩やかなうねりの中で心地よい「酔い」を味わうことができます。ラスト40頁にすべてが結実する傑作。

  • 内容が良かった

    内容がいいので満足している。本も奇麗だった。

  • 人生は退屈で平凡なものであって良い......

    映画「舞踏会の手帖」を想わせる体裁(意匠は異なるが)で、ヒロイン(=作者)が過去に偶々出逢った"犯人"(犯罪人ではない)達への回想を徒然に綴った物語。作中に「言葉の実験とは何か」、「実験文学は社会の役にたつのか」といった言辞があるが、これがドイツ在住のクレオール作家と呼ばれる作者の意匠を反映していると言って良いだろう。"犯人"を対象としているのは、パスポートを携帯していなければ不法滞在で逮捕されるかもしれない(永住権取得前)といった作者自身の恐怖観念体験にも依ると思われる。 そして、描かれるのは人が他人を理解する事の困難性である。国籍、文化、言語あるい個性を越えて(危険の香りがする)他人を理解出来るという(ヒロインの)思い込みが、実は自身の精神的危険を招くという警鐘と自戒の念が込められている。人生は退屈で平凡なものであって良い(むしろその方が良い)という趣旨かもしれない。 「犬婿入り」と比べると、文体上の実験は少なく(言語に対する多少のクスグリはあるが)、構成上の実験を試みたという印象が強い。実験を試みる程のテーマとは思えない気もするが......。題名通り、読む側もフワフワした意識で臨むのが良いのではないか。何しろ、本当に「雲をつかむような話」なのだから。

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