作品情報
『夜は終わらない』は、受賞作としての輪郭を通じて、人と時代の関係を見つめる作品である。
星野智幸の『夜は終わらない』は、小説として記録されている受賞作である。単行本または収録書の書誌情報を確認し、識別子を記録した。作品紹介では、物語や詩歌が扱う関係性、記憶、時代感覚を中心に、公開情報から確認できる範囲で整理している。
レビュー要約
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題材の切り取り方と人物描写を評価する声がある一方、静かな展開や重い主題をじっくり読む作品として受け止められている。
書籍情報
- 出版社
- 講談社
- 発売日
- 2014-05-23
- ページ数
- 522ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784062189668
- ISBN-10
- 4062189666
- 価格
- 550 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
婚約者が自殺したとの一報が入った玲緒奈。千住警察署で悲しみにくれる彼女には、次に殺さなくてはならない別の婚約者がいた。セックスや結婚を餌に次々男を惑わし、財産を巻き上げ、証拠を残さず葬り去るのが日常なのである。そんな玲緒奈には不思議な癖があるのだった。 「生きてる意味があることを証明しないと。ね? 私が夢中になれるようなお話をしてよ」 あの世に送る前、男に語らせるのだ。それは、生い立ちでも、創作した話でも構わない。面白いかどうか、で命の長さが決まっていく。最期の気力を振り絞り話を続ける男たち。鬼気迫るストーリーが展開され、物語のなかの登場人物がまた別の話を語り始めたり、時空を超えた設定のなかにリアルなものが紛れ込んだり……全体の物語のなかにさまざまな短篇が入りくみ、海へと流れる大河として眺望できる大傑作。
1965年、アメリカ・ロサンゼルス市生まれ。88年、早稲田大学卒業。新聞社勤務後、メキシコに留学。97年、『最後の吐息』で第34回文藝賞を受賞しデビュー。2000年、『目覚めよと人魚は歌う』で第13回三島由紀夫賞、03年、『ファンタジスタ』で第25回野間文芸新人賞、10年、『俺俺』で第5回大江健三郎賞を受賞。他の著作に『毒身温泉』『ロンリー・ハーツ・キラー』『アルカロイド・ラヴァーズ』『在日ヲロシア人の悲劇』『虹とクロエの物語』『われら猫の子』『植物診断室』『無問道』『水族』などがある。
レビュー
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読み終えたあと世界が変容する、圧倒的な物語の力
千夜一夜物語に材をとった日本の現代文学といえば古川日出男の「アラビアの夜の種族」という傑作があるけれど、語られる物語の多様さ・豊饒さ・現代性から、こちらに軍配があがる(でもどちらも大好き!)。緊密に織り上げられた物語の迷宮に引きずり込まれる快感は他に類を見ない。最近読んだ国内外の現代小説が軒並み霞んでしまった。周り中の読書好きにオススメしたい。
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子供っぽい。
イメージが単純。読売文学賞だから買ったが、嫌いな辻仁成ににている。深みがない。カヲル子以後読めなくなった。
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面白い事は面白いが象徴性を欠いている
星野智幸さんといえば、短編や中編で蜂蜜の滴を滴らせたように非常に文章が美しく巧い作家だった。しかしその分ストーリーテリングの才はかけているのかな?というのが僕の正直な感想だった。だが、この本は面白い。隅々まで神経の行き届いた力作だ。 だが、である。読み終わった正直な読後感は『この小説って何がしたいの?』だ。簡単に言うと純文学としての核ががしっと掴めないのだ。延々と繰り返される男達の物語が、余りに多すぎて読んでいて「何が言いたいの?」とい疑問が読書中ずっと頭から離れなかった。正直に言えば本作で星野さんの言いたい事が理解できなかった。 それと決定的な弱点は多様にちりばめ過ぎたモチーフのせいか、作品に象徴性が無いのだ。 実験作としてのメタフィクションでもないし、何なのだろうか?僕はモチーフを絞り込んで論点をしっかりと中核におけばここまで多様な企みを持ち込む必要もなく、象徴性を持ち、ぐっと明晰な作品になったと思う。
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個人的にはかなり面白かったので、ここでの評価の低さが意外に思える。
星野智幸の作品は、以前に『植物診断室』を読んだことがあるだけで、その時は 文章力は相当ある人だが、作者本人を思わせる主人公や、その他の登場人物に あまり魅力がないし、話作りもそこまで巧みとは思えないという、漠とした感想を 抱いたのに過ぎなかった。 しかし、作家というのは書き続けていると段違いに力をつける場合があるもので、 とくに本書中盤以降での語り口の巧みさには、正直驚かされた(他のレビュアーも 書いているように、明らかに「木嶋佳苗事件」を連想させる出だしを読んだ時点では、 そこまで期待してもいなかったのだが)。美文だけでなく、身も蓋もない口語表現も 適宜練り合わせた文章は、見かけ以上に強靭で隙が無いように思えたし、何よりも、 アラビアンナイトに倣った何重もの入れ子構造の物語が、次から次へと澱みなく繰り 出されるあたり、この人はいつの間にか小説の「奥義」みたいなものに肉薄して(笑)、 大した道具立てもないところから、いくらでも自在にリーダブルな物語を紡ぎ出せる ようになったのではないかと思わせるものがあった。 時間をかけて読んでいると、以前読んだ部分を忘れてしまって話が分りにくくなるので (本来は、一つ一つの物語が完結しないうちに延々と新たな物語の方にズラされていき、 宙吊りにされたまま惑乱を覚える過程自体が醍醐味なわけだが)、なるべくまとまった 時間が取れる時に、あまり長い中断を入れずに読んでしまうことをお薦めする。
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書評と違った書籍だった・・。
新聞の書評を読んで、急に家内が読みたいと言って注文した。でも途中で、”期待した内容と違っいる”と投げ出した。「あなたみたいな人が読んだらいいわ、お勧めよ」という結果になっていて、星2つにした。
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星野さんならではの作品
暴君に千一夜に渡り物語を語ったという「アラビアンナイト」と男女がひっくり返っています 本作での暴君は玲緒奈という女性で、語るのは男性 不幸な子供時代を過ごし、印象の薄い顔をメイクで胡麻化し、男を手玉に取って生きてきた玲緒奈が、今ここに存在している実感を得たいがため男たちに強要する物語 男の語る不思議な物語が徐々に玲緒奈の人生と重なっていきます まるで、これまでの玲緒奈の人生を全て知っているかのように… 自分の日常とかけ離れていると思っていた玲緒奈の日常の中に、ふと自分との共通点を発見した時は嫌な感じがしました それは、現代人の多くが普通に持っているのに気付いていない、気付かないふりをしているものなのかもしれません 小説の出来云々はわかりませんが、大変インパクトの強い作品でした
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豊穣なファンタジーの世界に圧倒される
冴えない容姿でありながら男を夢中にさせてはカネを奪い、殺して捨てる女、とくれば先年の首都圏連続事件の被告人・木嶋佳苗を思い浮かべるが、星野智幸氏が本書のモデルにしたのは千夜一夜物語(アラビアンナイト)である。千夜もの間、イスラムの暴君に対して物語を語って聞かせることで自らを延命させたシェヘラザードという女性が主人公だった。 現代の暴君である玲緒奈は、裸にして縛り上げた男に「死にたくなければ、私を夢中にさせるようなお話をしてよ」と命じる。すでにここでは男と女が逆転していて、話をするシェへラザード役は男に替わっている。そして奇想天外なさまざまな話が次々に現われては消えていく。 媚薬によってカワイルカと恋に落ちる話 「何もしないことが演技だ」とする演劇集団の話 魔人のジンとジンナの話 星をつくる星工場での推進派と反対派の抗争の話、等々。 これらの話が交互に語られて、いつしか融合していくのだ。 ひとつの話の中の登場人物が別の話を語り出し、その中でまた別の語り手が生まれて、人物が入れ替わる。入れ子構造の多重な物語群が、互いに関係し合いながら、時間が前後に動き、核酸と集合を繰り返す。登場人物は簡単に殺されて、ふたたび生れ変る。人間もいれば魔人もいる。切ない愛の話、エロティックな話、SF世界の話。反原発を思わせる話。なんと多層的で豊穣なファンタジーの世界なのだろうか。一貫したストーリーはほとんど考慮されていないので読者は翻弄され、やがてイメージを追うことしかできなくなる。 男が懸命に語る膨大な物語の力が、聞き手と語り手の関係を少しずつ変えていく。二人はまるで共犯者のような心情で結ばれていくのだ。繰り返される、物語における立場の入れ替わりは、他者への想像力の有無を問いかけるからである。拡散した物語も次第に収束していき、最後は意外な結末が待っている。星野智幸氏のこの大胆な実験小説は読者を選ぶであろうが、今の時代に生きること、感じること、考えることを問いかける作品であることは間違いないだろう。 500ページを読むのに苦労して★ひとつ減とした。
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傑作
神話、無意識の領域に入っている。今年一番面白かった本。また読み返すだろう。
関連する文学賞
- 読売文学賞 第66回(2014年) ・受賞