日本の文学賞

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僕の昭和史 (講談社文芸文庫 やA 11)

野間文芸賞

僕の昭和史 (講談社文芸文庫 やA 11)

安岡章太郎

『僕の昭和史』は安岡章太郎による、人物の記憶や関係の揺らぎを通じて、時代や人生の陰影を描く作品です。受賞作として、題名が示す主題を軸に、読後に残る余韻を重んじた一作として位置づけられます。

記憶家族時代喪失

作品情報

『僕の昭和史』は、短い題名の奥に人物、時代、土地の気配を重ねる作品です。

講談社刊行の『僕の昭和史』に収められた作品です。『僕の昭和史』は安岡章太郎による、人物の記憶や関係の揺らぎを通じて、時代や人生の陰影を描く作品です。受賞作として、題名が示す主題を軸に、読後に残る余韻を重んじた一作として位置づけられます。

書籍情報

出版社
講談社
発売日
2018-08-12
ページ数
816ページ
言語
日本語
サイズ
10.8 x 2.7 x 14.8 cm
ISBN-13
9784065126752
ISBN-10
4065126754
価格
3190 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/評論・文学研究/外国文学研究/ロシア・東欧文学

植民地朝鮮で過ごす幼少期が「僕」の昭和の始まり。受験失敗、厳しい陸軍の日々、敗戦、生活困難のなか書かれた文壇デビュー作「ガラスの靴」。芥川賞受賞の頃には復興も進み時代が大きく変わり始める。六〇年安保の年、アメリカ南部留学は敗戦国日本の戦後の意味を考える視座をもたらした。そして高度経済成長や学園紛争といった新たな変化。激動の昭和を個人的な実感に基く把握と冷静な筆致で綴った記念碑的名作。

安岡章太郎(1920年5月30日~2013年1月26日)小説家。高知県生まれ。1941年慶應義塾大学文学部予科入学、44年に陸軍に応召、満州へ送られるも胸部疾患で現役免除。戦後復学するが、脊椎カリエスを患い、48年英文科を卒業。51年、文壇デビュー作「ガラスの靴」が芥川賞候補となり、吉行淳之介、阿川弘之らとともに「第三の新人」と呼ばれる。53年、「悪い仲間」「陰気な愉しみ」により芥川賞受賞。60年、『海辺の光景』で野間文芸賞、67年、『幕が下りてから』で毎日出版文化賞、74年、『走れトマホーク』で読売文学賞、82年、『流離譚』で日本文学大賞、89年、『僕の昭和史』で二度目の野間文芸賞、91年、「伯父の墓地」で川端康成文学賞、96年、『果てもない道中記』で読売文学賞(随筆・紀行賞)、2000年、『鏡川』で大佛次郎賞等、数々の文学賞を受賞。2001年、文化功労者。

レビュー

  • 安岡の自分史、それが昭和と重なっている

    Iは昭和改元から終戦の詔勅まで、IIは60年安保騒動の後アメリカへ行く直前まで。IIIは連合赤軍事件あたりまでだから、昭和45年くらいだろう。やはり面白いのはIとIIで、IIIはアメリカ留学体験とか世相批判などが中心で余り面白くないが、最後に元の文学仲間でフィリピンで戦死した人物の死の真相を執筆時の昭和の終わる頃に知る条り、これが最後にジンとくる、小説巧者の面目ありと言うところか。Iでは、旧制高校入試に落ち続けてやがて文学に名を借りてある種の退廃生活を送るよく知られた話を中心にしている。ここでは戦争に至る大事件、あるいは開戦の知らせそのものが、庶民にとっては現実感のないままどんどん進んで行くと言う感覚を記すあたり、やはりこれが本当なのだろうと思う。軍隊に行きソ満国境地帯で駐屯、半年ほどの軍隊生活を送るが肋膜炎で病院送り、部隊はルソン島へ転戦しほぼ全滅したから、安岡は病気にならなければこの後戦死していただろう。IIでは、戦後脊椎カリエスにかかりそれを抱えて生活のため奔走し、病床で書いた原稿が認められて作家となる。戦後の混乱期の生活実感(闇屋とか)が興味深かった。自分の作品については、初めての長編で自殺した文学仲間をテーマにした”舌出し天使”と母の死を書いた”海辺の光景”だけに言及しており、特に後者には書くべきことを書いたと言う自負が感じられた。3冊の合本なので分厚いが、読みやすい文章が続くので休日で読める。昭和の次の平成もそろそろ終わりだと思うと感慨深い。

  • 読後の充実感は、今一つ

    淡々とした語り口は、好感の持てるものでしたが、読後感として、今一つ心に残る充実感、重さがなかった。

  • 所詮は反米か

    これは安岡の自伝と昭和の政治史・世相史が重ねて書かれているが、全三部構成で、第三部になると自伝がなくなって政治世相史だけになってここはつまらない。自伝については、書いてないこともあって、三年浪人していた間に両親とどういう話になっていたのかが全然分からない。父との関係は円満ではなかったようだが、それは「海辺の光景」を読んでも感じたが、そこは掘り下げないといかんだろう。それと映画ばかり観ているが、どこで作家になろうと思ったのか書いてないし、どういう文学作品を読んだかも書いてないから自伝としては良くない。何だかいきがかりで作家になったみたいだ。あと「群像」の編集長の大久保房男は、慶應出身者に甘いんだが、石原や有吉はパージしながら安岡には実に甘い。 1984年から88年にかけて書かれているが、反米意識が全体に強くて辟易する。87年には大韓航空機撃墜事件も起きているし、ソ連や中共が恐ろしい国であることはだんだんわかってくるのだが、安岡はそれで米国に守ってもらうしかないと思わなかったのか。あと社会主義というものについてどう思っているかがまったく書いていない。戦後のやや左知識人にありがちなことである。あと土佐藩の志士の子孫で、父が獣医とはいえ軍人だから、支配階級の視点になっているところが鼻についた。なお私は新潮文庫版で読んだから、最後に田村義也との対談がついていた。

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