真実の口
中学三年生の冬、湊、未央、律希は雪の夜にうずくまる幼い少女を見つけ、交番へ連れて行く。感謝状を受け取った一年後、虐待事件の報道をきっかけに、あのとき少女の意思を聞けていたのかという疑問がよみがえり、三人は彼女を探し始める。善意と正しさをめぐる選択を描く物語。
作品情報
あの夜、少女を保護したことは、本当に正しかったのか。
いとうみくが、正しい行いだと信じた三人の高校生が、かつて出会った少女の事情を知ろうとする過程を描いた児童文学作品。助けようとする気持ちと、相手の声を聞くことの難しさが交差し、子どもを守るために大人や社会が果たす役割も問いかける。
書籍情報
- 出版社
- 講談社
- 発売日
- 2024-04-11
- ページ数
- 272ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 13.5 x 2.1 x 19.4 cm
- ISBN-13
- 9784065344118
- ISBN-10
- 4065344115
- 価格
- 1650 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
第65回 日本児童文学者協会賞受賞 第41回 うつのみやこども賞受賞 ※うつのみやこども賞は、小学校5・6年生の選定委員が年間10回の選定会議を行い,その中から最も“友だちにすすめたい本”を選考する賞です。 夏の読書感想文全国コンクールの課題図書に作品が選ばれる常連であり、野間児童文芸賞、ひろすけ童話賞、河合隼雄物語賞など児童文学の主要な賞を続々受賞した、いとうみくによる書きおろし最新作。 中3の冬、受験を控えた青山湊(あおやま・みなと)、七海未央(ななみ・みお)、周東律希(すとう・りつき)の三人は、 祠の前にしゃがんでいる小さな女の子を見つけた。雪はやんだようだが、気温は下がっている。何もしゃべらず、動こうとしない少女を放っておけば、凍死してしまうかもしれない。三人が下した判断は、この子を交番に連れて行くというものだった。それから四週間後、校長室に呼ばれた三人を迎えたのは、警察官たちだった。適切な判断と思いやりに感謝状が贈られたのだ――。 高校生になった年の夏、三人はファストフードで再会する。七海が「これ見て」と出したスマホの画面には、親による子どもの虐待事件のニュースが映し出された。もちろん、あのときの女の子とは別人のニュースだ。しかし、三人それぞれがあのときの女の子の様子に不審なものを感じていた。名前や住所を尋ねてもけっして口を開こうとしなかったこと、交番に連れて行こうとしたとき暴れて抵抗したこと……。「もしかして、わたしたちすごい誤解をしてたってことはないかな」。警察から感謝状を贈られた三人は、自分たちの行動が間違っていなかったかをたしかめるため、あのときの女の子を探し始める――。 児童文学界のトップランナーが、人の善意とは、正しい行いとは何なのかを模索する高校生たちを描き切る。
神奈川県生まれ。『糸子の体重計』(童心社)で日本児童文学者協会新人賞、『朔と新』(講談社)で野間児童文芸賞、『きみひろくん』(くもん出版)でひろすけ童話賞、『あしたの幸福』(理論社)で河合隼雄物語賞、『ぼくんちのねこのはなし』(くもん出版)で坪田譲治文学賞を受賞。『二日月』(そうえん社)、『チキン!』(文研出版)、『天使のにもつ』(童心社)などが青少年読書感想文全国コンクールの課題図書に選ばれた。他の著書に、『かあちゃん取扱説明書』(童心社)、「車夫」シリーズ(小峰書店)、『夜空にひらく』(アリス館)などがある。全国児童文学同人誌連絡会「季節風」同人。
レビュー
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切なる願いが沁みてくる
大人が信用できないとき、 子どもに何ができるのか? 差し出された問いが胸に突き刺さりました。 主人公は他人への関心が薄い高校一年生。 当たり前のように平穏な日々を 過ごしてきた彼は、虐待が疑われる 幼い少女【ありす】に出会い、 中学時代の仲間とともに思わぬ形で 関わっていくことになります。 彼らが勇気ある決断の末に目にしたのは 想像を超えた驚きの真実でした。 少女の切なすぎる境遇が、 繰り返し胸に迫ってきますね。 物語の核となる高校生たちの「暴挙」は、 切羽詰まった状況を踏まえれば、 決して責められないと感じました。 トコトン重厚なストーリー展開なのですが 重いテーマも子どもに親しみやすく 描き上げる著者の特色が 存分に発揮されてましたよ。 とくに友人兄弟のキャラが良くって、 そこかしこで楽しい気持ちにさせてくれました。 人と人の繋がりの機微に グッとくるシーンも多かった! なかでも終盤、ピンチに意外な人物が 進み出る場面で滂沱ですよ。 「言ったれ!もっと言ったれ!」って、 もう、感情移入しすぎるほどに。 加害者の事情が描き込まれている部分は、 問題が単純でないことを物語っていて、 深~く考えさせられましたね。 やはり、子どもが子どもらしく居られるために 大人としてできることをしないといけないと 痛感しきりです。 あなたからそう遠くないどこかにも 【ありす】は居る。 もしも「おや?」と感じる場面に出くわしたら あなたならどうしますか? あらゆる年代の読者に そう訴えかけてくるこの作品に、 世の中をより良い方向に変えていく 力さえも感じました。 (対象年齢は11歳半以上かな?)