日本の文学賞

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夢を叶えるために脳はある 「私という現象」、高校生と脳を語り尽くす

小林秀雄賞

夢を叶えるために脳はある 「私という現象」、高校生と脳を語り尽くす

池谷裕二

脳は何のために存在し、なぜ人は大きな脳を持つのか。高校生との三日間の集中講義を土台に、人工知能との比較、生命と死、時間や自己をめぐる問いをたどりながら、「私」という現象を脳科学から考える本。

脳科学自己人工知能生命と死高校生との対話

作品情報

脳を知ることから、「私」という存在をあらためて考え直す講義の記録。

脳研究者の池谷裕二が、高校生に向けて行った集中講義を一冊にまとめた脳科学書。ディープラーニングと神経回路の比較を手がかりに、生命に死が必要な理由や、人が不完全であることの意味を考え、「私」をめぐる哲学的な問いへ読者を導く。

書籍情報

出版社
講談社
発売日
2024-03-28
ページ数
672ページ
言語
日本語
サイズ
13 x 3.8 x 18.8 cm
ISBN-13
9784065349182
ISBN-10
4065349184
価格
2347 JPY
カテゴリ
本/ノンフィクション/科学/医学

【第23回 小林秀雄賞 受賞作】 累計43万部突破!ベストセラー『進化しすぎた脳』『単純な脳、複雑な「私」』に続く、高校生への脳講義シリーズの最新刊がついに刊行。 なぜ僕らは脳を持ち、何のために生きているのか。 脳科学が最後に辿り着く予想外の結論、そしてタイトルに込められた「本当の意味」とは――。 なぜ脳は存在するのか、僕らはなぜこんなに大きな脳を持ってしまったのか、時間はなぜ存在するのか、この世界は現実なのか、人工知能にとって人間とはなにか、私とはなにか―― 数々の問いを巡らせていくと、全てがつながり、思いもよらない答えを導く。 人気脳研究学者である著者が、3日間にわたっておこなった圧倒的迫力の講義録。 「というわけで、「ああ、そうか、ならば生きなくては」と僕は感じる。能天気なヤツかもしれない。 君らはどうかな。そうは感じないかな。 僕はね、どうせ生きるんだったら、せっかくなら楽しく生きようよ、と思わずにはいられない。だって、生きているだけで役に立っているんだよ。そんなシンプルな喜びって、他に何があるんだろう。 そうした生命の本質的な原理を、脳の研究をしながら、強く感じる」(本書より) 「いま一番思い入れがあって、一番好きな本」と自らが語る、渾身の一冊。 本書でシリーズ完結となる。

池谷 裕二(いけがや・ゆうじ) 1970年、静岡県藤枝市生まれ。薬学博士。現在、東京大学薬学部教授。脳研究者。海馬の研究を通じ、脳の健康や老化について探究を続ける。文部科学大臣表彰(若手科学者賞)、日本学術振興会賞、日本学士院学術奨励賞などを受賞。「ERATO 池谷脳AI融合プロジェクト」の研究総括も務める。本書が完結編となる高校生への脳講義シリーズは、他に『進化しすぎた脳』『単純な脳、複雑な「私」』(ともに朝日出版社/講談社ブルーバックス)がある。その他の著書に『記憶力を強くする』(講談社ブルーバックス)、『脳には妙なクセがある』(扶桑社/新潮文庫)、『パパは脳研究者』(クレヨンハウス/扶桑社新書)など、共著に『海馬』(朝日出版社/新潮文庫)、『脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか』(講談社)などがある。

レビュー

  • 嫉妬を感じるほどの知性

    科学の限界、脳の限界をきちんと踏まえて、最先端の知見を語れる人ってほとんどいないと思う。そして、その知見に対して吟味を重ね自分の意見を、説得力を持って展開できる人はさらにいないと思う。そして、その持論さえも、客観的に、俯瞰的に「違うかもね」ってさらっと言える人は著者ぐらいではないだろうか?これは本当に様々なことを考えつくし、いろんな意味で悟った、余裕がある人間でないと取れない態度であると思うし、読者に対しとても真摯な態度だと思う。 普通、新書でもなんでもそうだけれど、このような科学、哲学、医学ものは、どこか疑問や納得のいかないところが残り、不完全燃焼や消化不良で終わるのだけれど、それを一つもと言っていいほど残さない。その綿密な論理構成。良質なミステリーを読んでいるよう。いや、ミステリーよりもミステリアス。良質な食事をとった後、とても身体が喜んでいる時のような満足感、読後感。それは、一つに著者が議論において、どこかのプライドが高いだけの学者のようではなく、内省力のないどこかの頭でっかちでもなく、ひたすら思索に対し慎重で丁寧である紳士的な態度をとるからだろう。このようなバランスの取れた天才は、そうはいない。 嫉妬に近い賞賛で、池谷先生ってほんと素晴らしい!って、心から思える。そんな本だった。 一つケチをつけるとすれば、死の意味の議論が珍しく雑だったところ。説得力が他に比べ欠けた印象。あと、この本の議論を通して、人生とはつまり・・・、と同じ結論に戻ったとしても、それはメビウスの輪を一周してきたものとそうでないものでは全然違う!と言っていたけれど、僕も確かにそう思うけれど、何が全然違うのか?それも説明不足、説得力がなかった。僕にとっても日頃よく考えるとても大事な2点だったので、もう少し詰めて欲しかった。 それでも、やはりこの本は、いろんなことを知りたいのに、考える材料が少なすぎたり、最新の知見を体系的に理解できていない者たちにとって、最高のガイドブックである。ただし、池谷先生の考えは池谷先生のもので、この本は宗教書的なものとして読まれてはいけないと思う。つまり、池谷先生が言っていることで満足し、結局、エントロピーが増大・・・・・。なんて思考停止に陥る読者になってはいけない。それこそ、先生が一番悲しむこと。なぜなら、一番伝えたかったことが伝わらなかった人達だから。確かに、飲み込まれそうになるほど圧倒的な知識力、カリスマ的アイデアに溢れているけれど、そこは一読者として踏みとどまり、先生のように徹底的に客観的で強く、どこまでも深く内省的な人間でいたいと僕は思うのだ。。3部作はこれで終わりらしいので、この先は自分でゆっくり考えていこう。

  • ちゃぶ台返しに唸った

    最後の方(3-94 p.619)でものすごいインパクトのあるちゃぶ台返しがあり、「うっ⋯言われてみれば確かにそうだ」と思わず声に出た。池谷さん自身も「この観点こそが、今回の講義の中では、おそらくいちばん強烈な疑問として残る」と書いている。(何のことかはネタバレになるので割愛します) ドナルド・ホフマンという認知心理学者の「世界はありのままに見ることができない なぜ進化は私たちを真実から遠ざけたのか」という本に、人が客観的実在(というものがあるとして)を正しく認識している確率を計算すると、何と0%であるという、進化ゲーム理論による証明が載っていたが、それを思い出した。 脳、心、認識、そういったものに興味がある人なら、買って損をすることはありません。池谷本の中で間違いなく最高傑作。

  • 長編の著作になるハズです

    脳科学を軸にしながら、ヒトが持つ「思考」「直感」「楽しむ力」といった特性を掘り下げた一冊です。本書は単なる科学的な解説書にとどまらず、私たちの倫理観や幸福感、AI時代における人間の価値について深い洞察を与えてくれます。 印象的だった内容 本書を通じて、私が特に印象を受けた点をいくつか挙げてみます 1. 知見の深化は「間違い」から生まれる 池谷氏は、仮説が間違っていると分かったときに初めて知識が深まると述べています。この視点は、日常生活や学びの場面でも重要だと感じました。 2. 倫理観と生物学のつながり 「正しさ」や「善」といった倫理観が、人間の身体的性質に依存しているという指摘は新鮮でした。この観点から考えると、普遍的な倫理とは何なのかを改めて問い直したくなります。 3. 脳の特性と人工知能の違い 脳が「思い込み」を基に世界を解釈する一方で、人工知能は「直感」や「大局観」を得意とする。これにより、ヒトの脳には限界があることが浮き彫りになります。それでも、「楽しむ能力」がヒトの最大の特徴であり、AIには欠けているという主張には深く共感しました。 4. 時間と脳の関係 脳が記憶を使って時間を感じる仕組みや、「未来」だけを認識できるように進化してきたという視点には驚きがありました。時間という概念をどう捉えるかで、私たちの生き方も変わるのではないかと思います。 5. 幸せのあり方を基準にする 最後に、「ポストヒューマンの時代を考える基準は『幸せ』であるべき」という主張は、本書全体を貫くテーマとして心に残りました。 最後に 『夢を叶えるために脳はある』は、科学的な探求を通じて、ヒトの特性や可能性を見つめ直す機会を提供してくれる一冊です。AI時代を迎える現代において、本書は「私たち自身をどう捉えるか」を考えさせる重要な示唆を含んでいます。単なる脳科学の知識を超え、人間とは何か、そしてどのように幸せを追求していくべきかという普遍的なテーマを投げかけてくれる本でした。

  • 世界一の名著かもしれません!!

    サイエンスの楽しさとロマンが凝縮されています。間違いなく、これを読まずして人間やってはいけません。

  • 自分と世界の常識を覆してくれる

    人生でこれほど多くの箇所をハイライトした本は、他にありません。すべての文章をハイライトしたいくらいです。今まで読んだ一般読者向けの自然科学の本の中でも、ダントツに面白く、世界をとらえる視点が圧倒的に広がります。 この本の最も素晴らしい点は視点の広さです。脳科学に基づいて、人間の認知能力の驚異と同時にその限界を明確に示しながら、宇宙における人類と個人の存在意義について、科学的根拠に基づいて希望に満ちた考察を展開しています。私は、脳の仕組みへの素朴な興味からこの本を手にとりましたが、想像をはるかに超える学びと、読書後も続く深い思索の旅へと誘われました。 著者は、我々の世界の認知は、種としての人間が生き延びるために都合よく解釈した脳内シミュレーションに過ぎず、人類が世界の真理を真に「理解」することは原理的に不可能であることを示します。これは、科学技術の発達によって驕慢になりがちな現代社会の人々に、謙虚さを促すメッセージにもなっています。 また、この本を読む副次的な効果として、脳科学以外にも興味を広げてくれます。脳の働きを説明するためにシグモイド関数という面白い関数が登場したり、和歌、カントの言葉や宮沢賢治の詩まで登場します。生物学のみならず、数学、物理、化学的根拠から文学と哲学的な表現に至るまで、あの手この手で脳の仕組みを解説してくれる中で、多方面に知的好奇心が広がります。 筆者は「自分の生き方に対して問うべきは「人生にどんな意味があるか」ではなく、「どんな意味のある人生にしたいか」です」と述べています。筆者が読者に見出してもらいたいと思っている人生の意味が、本の全編を通じて感じられるでしょう。

  • 脳から宇宙そして投資へ

    誕生の瞬間から、いや胎内にいる時から、脳は暗い頭蓋の中で周囲からの視覚、聴覚、触覚、運動感覚等を、電気パルス信号「ピピピ」を受け取ることで、「予測」をしているらしい。 視覚、聴覚、触覚、運動感覚は脳に到達する際は、単に電気パルス信号「ピピピ」でしかない。 色は電磁波の波長、音は空気振動を電気パルス信号として受け取り、色味や音色は脳が自発的に創作しているだけであると著者は述べます。 脳は暗い頭蓋に閉じ込められて、ひたすら外部をシミュレーションして、「あ∼でもない。こ∼でもない」とアノテーションつまり注釈付けを行っているのです。 脳の学習とディープラーニングの学習は基本的に同じです。 1.困難学習 2.地形学習 3.交互学習 私は学ぶ対象について、最近は理解し易いかどうかを基準としなくなりました。 一知半解で進めていると、あるとき腑に落ちることを何度も経験しています。 これは「困難学習」に相当すると思います。 完全理解は遠い訳ですから、最終的な正解つまり「位置学習」に至らない「地形学習」でもあります。 「私はもう理解した」と思い込むことは、脳にとって何の得にもなりません。 また人工知能の教師あり学習でも故意にデータの一部をマスキングすることで汎化能力を引き出すことが行われています。 そもそも交差検証法クロスバリデーションも同じことです。 私は脳を予測マシンとして活用するために、「情報のシャワー」として、フェイスブックに興味対象の情報を収集しています。それもできるだけ良質な情報を量多く収集しています。 そうして集めた情報にサマリーやコメントを残しています。 これは脳が行っているアノテーション(注釈)に相当すると思います。 興味の対象は、ベイズ統計学、脳科学、機械学習、宇宙科学、投資と多岐にわたります。 日々これらの学習対象をローテーションで複数学習しています。 これは「交互学習」に相当すると思います。 脳も人工知能もシミュレーションに基づいて暫定解を出しています。 宇宙の大前提として熱力学第二法則いわゆるエントロピー増大の法則があります。 エントロピー増大が平衡状態に至ることを応用して、ランダムなマルコフ過程のシミュレーションを試行して最大事後確率分布を求める手法がマルコフ連鎖モンテカルロシミュレーション(MCMC)です。 人間の存在は、秩序へ向かっているようで実は環境破壊によって地球のエントロピー最大化つまり無秩序化を促進しています。 このエントロピー増大法則に基づいて宇宙は熱的死に向かっていると宇宙物理学者は考えています。 その時間は気の遠くなるほど長い時間です。10の102乗年とも言われています。 銀河、星、生命、人類は結局、秩序を無秩序へ促進しています。 著者はこのメカニズムを"渦“にたとえて、位置エネルギーを運動エネルギーに変換していると述べています。 宇宙おける「入れ子構造」はフラクタル(自己相似)と同義で、宇宙の老化を促進していると著者は述べています。 私は宇宙の大原則として、エントロピー増大、ベイズルール、フラクタルを想定していたので、池谷先生の仮説には正直、我が意を得たり感があります。 ベン図で書けば、エントロピー増大 > ベイズルール > フラクタルになるでしょうか。 ヒトどうしの会話は、脳の指令による情報集めとも考えられます。 この味気ない結論は、誰にもお勧めしません。 ある意味で「メタ認知のオーバーフィティング」以外の何物でもないでしょう。 むしろ知らないほうが幸せかもしれません。 そして、あらためてMCMCが合理的なシミュレーションであることを認識しました。

  • クラクラ感はさらに深く

    私たちの現実が脳による仮構にすぎない(でしかありえない)という主張の根拠もまた、「現実の脳」を研究した結果であるわけだから、実は本書のキモのポイントは、もう一重ループしていることになる。 なんてこった! 異なる「位相」を往復するのは、認識が現実をめぐって行うことだけではなく、ここに見られる「先端科学の成果」と「伝統的な哲学の知見」をめぐっても、往復が見られることは指摘したい。

  • おもしろい。ロマンがある。

    めちゃくちゃおもしろい! これまで信じていた世界が、実は曖昧なものだったんだなと衝撃を受けました。「常識」が常識でなくなる感覚がすごく面白いです。 しばらく読んでは自分なりの考えをする、って楽しみ方をしています。「事実」って思ったより少なくて、すべてが可能性に満ち溢れてるんだなあとわくわくします。 難点は分厚すぎて寝る前に寝転びながら読みにくいことだけです。(この本は紙で読みたいです) 進化しすぎた脳も読みましたが、こちらが最新なので迷っている方はこちらでいいと思います。

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