日本の文学賞

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太陽諸島 (講談社文庫 た 74-7)

毎日出版文化賞

太陽諸島 (講談社文庫 た 74-7)

多和田葉子

多和田葉子の連作長篇三部作の完結編。言葉でつながる仲間たちが、失われた故郷を探してバルト海を旅する。

長篇言語連作

作品情報

国境を越え、言葉を携えて、仲間たちは海へ出る。

『地球にちりばめられて』『星に仄めかされて』に続くサーガの終着点として刊行された作品。

書籍情報

出版社
講談社
発売日
2025-10-15
ページ数
388ページ
言語
日本語
サイズ
10.7 x 1.7 x 14.9 cm
ISBN-13
9784065412237
ISBN-10
4065412234
価格
869 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

世界文学の旗手が紡ぐ、初の連作長篇三部作、完結! 響きあう言葉とともに地球を旅する仲間たちの行方は――。 国境を越えて人と人をつなぐ、新しい時代の神話 ヨーロッパで移民として生きるため、自家製の言語「パンスカ」をつくり出したHirukoは、 消えてしまった故郷の島国を探して、仲間たちと共に船の旅に出る。 一行を乗せた船はコペンハーゲンからバルト海を東へ進むが、 沿岸の港町では次々と謎めいた人物が乗り込んできて――。 言葉で結びついた仲間たちの、時空を超えた出会いと冒険を描く、多和田葉子の新たな代表作。 『地球にちりばめられて』『星に仄めかされて』に続くサーガ、ついに完結!

多和田葉子(たわだ・ようこ) 小説家、詩人。1960年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。ハンブルク大学大学院修士課程修了。文学博士(チューリッヒ大学)。1982年よりドイツに在住し、日本語とドイツ語で作品を手がける。1991年『かかとを失くして』で群像新人文学賞、1993年『犬婿入り』で芥川賞、2000年『ヒナギクのお茶の場合』で泉鏡花文学賞、2002年『球形時間』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、2003年『容疑者の夜行列車』で伊藤整文学賞、谷崎潤一郎賞、2005年にゲーテ・メダル、2009年に早稲田大学坪内逍遙大賞、2011年『尼僧とキューピッドの弓』で紫式部文学賞、『雪の練習生』で野間文芸賞、2013年『雲をつかむ話』で読売文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。2016年ドイツのクライスト賞を日本人で初めて受賞、2018年『献灯使』で全米図書賞翻訳文学部門、2020年朝日賞、2023年に本作で毎日出版文化賞、2025年ネリー・ザックス賞など受賞多数。著書に『ゴットハルト鉄道』『エクソフォニー 母語の外へ出る旅』『ボルドーの義兄』『地球にちりばめられて』などがある。

レビュー

  • 野性の生物かなにか

    三部作の最終章ということで、大団円を妄想していたのだが、物語は比較的静かに進行していった。だがなぜか、そのことに少しほっとさせたりもした。大芝居がかった何かが現れたら受け止められないような心地だったからだ。登場人物たちは、一つの人格の分裂した形のように、付かず離れずアメーバのようにうごめき、決して離れない。それはどこかこそばゆい。そもそも、人間とはそういったものかもしれない。大きな一つの生き物の構成のひとつひとつとして、動いているミツバチのように。 個として生きることを際立たせてきたようにみえる作者が、人間たちのつながりを求めているようにも思えて、その変化が一体どこからきているのかが、気になった。それは今後の仕事で語られるのだろうか。 ヒルコとクヌートの愛の会話の美しさに陶然とした。どんな性的な描写よりもなんて美しく、エロティックなのか。アカッシュが最後にヒルコにお願いした言葉に泣いた。それは誰もが願っている幸福のひとつではないだろうか。会話のひとつひとつ、描写のひとつひとつに、ぐっとくる文を読ませてくれるのは、いつもの安定感。多和田葉子さんは、絶滅危惧される「純文学」のサンクチュアリそのものという気がする。だから、読んでいると、美しい森や湖に棲む野生動物に時々はっとさせられるような、強く儚い陶酔感がある。

  • 神さま(作者)に翻弄される登場人物たちが可哀想

    2巻では、主人公の母国に行こうと一致団結していた?はずなのに、明らかにたどり着けない航路を。 作中の描写で詳細に描かれているとおりのパーソナリティだったら、そんな風になるはずないでしょ? 本を楽しむ楽しみたい読者としては、良い音楽美味しい食事のようにただただ美味なのだが。でも、登場人物たちの身になったら違うなと。もしも自分が、今どき流行小説のファンタジーのような物語世界転生とかあった場合、この作者の世界には、絶対転生したくないわ。 まあでも、もしかしたら、こういうのが本当に現実的なのかもしれない。人間がもれなく、ちゃんと大事なところで、確実に選択できるのだとしたら、世界がこうなったいるはずがないもの。

  • 終わり方の物足りなさ

    欧州含め海外に10年以上住んでいて、多和田葉子氏の経歴から興味を持ち少しずつ作品を読んでいます。 Hirukoのパンスカ語での会話の簡潔さと、日本語での独白の豊かさの対比などリアリティがあります。日本が本当に存在するか、自分の日本での記憶は確かにあったことなのか、などたまにぼんやり考えることもあるのでHirukoの立場で読み進めていました。それだけに終わり方には物足りなさを感じました。ページ数的に日本に辿り着くことはないだろうと思っていましたが、日本がなくなってしまったのかどうかは知りたかったので残念に思います。この作品は星3つとしましたが、シリーズを通しては知っている街も多く出てきて楽しく読みました。

  • なーんだ

    最も期待はずれなのは、ツクヨミが、こんなノーテンキな子だなんてってことです!三貴子の中でも神秘的で、超絶美形に違いないと思っていたのに!闇の輝きをまとっての再登場を期待したい! スサノオがクシナダ→ナーダ→ナーガ媛にあっさり懐柔されて純朴な家父長に納まっちゃうのは神話通りですけど。 蛭子は同時にヒルメなのかと考えてたけど、どうなんでしょう。 わたしはパンスカはわかりませんが、他の登場人物の名前もなにがしか神話的な意味があったのでしょうか。 ユングが患者のイメージの中に原型を見だす如く、物語の中に神話的原型を見だすのは、別に目新しい方法ではありません。これではあたらしいものがたりというより古式ゆかしい物語ですねって感じです。 いっそ海の女神が持ち流離って、それぞれの登場人物がどんなに善意の塊であれ、地球の穢れとして祓われてしまえばよかったのに、とか思っちゃいました。

  • フィクションの力を実感

    本作で三部作完結です。あらためて三冊を通読してみて、ロードムービーを見ているような感覚に襲われました。 生まれや国籍、言語も異なる人びとが人工言語を介して仲間になり、共に失われた祖国を探して旅立つ。登場人物それぞれの語りが積み重ねられ、そのたびに視点や切り取り方、聞こえ方が移動する。語り手それぞれの違いがグラデーションとなって現実の多層性を描き出していきます。多和田マジックとでも言うしかない魅力です。 今回航海するバルト海沿岸はロシアのウクライナ侵攻以来関心を集めているエリアです。緊迫した現地の情勢を見聞きするなかでは、作品中の沿岸諸国の人びととの会話をどう受け止めたらいいのか、正直なところ戸惑う時もありました。しかし、作品中のこうしたコミュニケーションも現実の多層性の現れなのだとすると、一つの立場や勢力に偏った世界の見方を改める方が健全なのだろうと思い至りました。フィクションの力を実感させてくれる作品です。

  • 昔のジャンプ打ち切りのようなラスト

    これまでを楽しめた方は、同じように楽しめると思います。 ただ、3巻続く物語であれば、もう少しきっちり締めて欲しかったです。 ふわっと余韻のある終わり方でも無く、半端で途切れたように感じました。 期待が高かった分、残念です。

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