鏡のなかのアジア (集英社文庫)
谷崎 由依(著)
『鏡のなかのアジア』は、チベット、台湾、京都、インド、マレーシアなどを舞台に、土地の記憶と言葉の魔力が交錯する幻想短編集です。現実のアジアを写しながら、鏡の内外が反転するような不思議な読後感を残します。
作品情報
土地の記憶と言葉の響きが、鏡のなかで別のアジアを立ち上げる。
集英社文庫版は二〇二一年七月発売、二五六頁。単行本初版は二〇一八年刊行。第69回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞作として紹介されている。
レビュー要約
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場所の湿度や歴史を直接的な紀行にせず、言葉のずれと入れ子構造で幻想へ変える点が評価されている。静かで濃い文体を好む読者に向く。
書籍情報
- 出版社
- 集英社
- 発売日
- 2021-07-15
- ページ数
- 256ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 10.5 x 1.2 x 15.2 cm
- ISBN-13
- 9784087442762
- ISBN-10
- 4087442764
- 価格
- 616 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
言葉の魔力がいざなう、まぼろしのアジアへ── 遙かな歴史を持つチベットの僧院、台湾の雨降る小さな村の不思議な出来事、熱帯雨林にそびえる巨大樹だった男の過去…… 珠玉の幻想短編集 九つだけの家が建ち、shito、shitoと雨の降る村へ、出稼ぎから男が帰ってくる。だが、家にいたのは女房と、顔中に髭を生やした熊のような男。もしかして、おれはほんとうは死んでいて、あの見知らぬ男はおれの生前の姿なのだろうか──?(「Jiufenの村は九つぶん」)チベット、台湾、クアラルンプール……。遙かなる土地の記憶を旅する幻想短編集。第69回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞作。
レビュー
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幻想と現実がシームレスに
掌編から中編よりの短編まで、バリエーションに富む楽しい一冊。 視覚的、幻想的な作風は万人受けではないかもしれないが、好きな人はとてもピンと来る、そういうタイプの本だと思う。 現実のアジアと幻想の東方の国の境、 過去と現在、未来の姿が魅力的かつシームレスに繋がっていく。 文中に散りばめられている比喩が新鮮。オリジナリティが高いのに、どこにも不自然さがなく、気づけば幻想世界の中に居る自分に気づく。 最終話の「天蓋歩行」が特に良かった。
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悪くない描写もあるが、少し粗が目立つ。
それなりに神経が細かく行き届いた、独得な手ざわりの描写がしばらく 続いたかと思うと、文の落としどころが微妙に通俗に思えたりするという ことの繰り返しで、どの短篇も乗り切れないうちに終わってしまった。 登場人物たちの境遇が、どこか曖昧に想像されたものでしかなく、もう ひとつ印象に乏しいのに比べて、京都の大学を舞台にした三番目の作品 だけは、学生たちのまだ幼い感じの心情が割合に生き生きと描かれている ように感じたが、ここでも台湾人の内面だけは少しぼやけているようだし、 どこか「劣化版多和田葉子」のようにも思えてあまり感心できなかった。