作品情報
「かわいい」と思う気持ちの危うさが、社会の歪みとともにあぶり出されていく。
集英社から刊行された長編小説。児童福祉、ルッキズム、ネット炎上、ゲーム文化などを束ねながら、他者を愛でる行為の本質を問う。
レビュー要約
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さまざまな社会問題が矢継ぎ早に現れながらも、当事者の言葉に嘘のなさがある点が強く受け止められている。
書籍情報
- 出版社
- 集英社
- 発売日
- 2025-07-18
- ページ数
- 384ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 10.5 x 1.6 x 15.2 cm
- ISBN-13
- 9784087447934
- ISBN-10
- 4087447936
- 価格
- 902 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
【第8回渡辺淳一文学賞受賞作】 矛盾だらけのめちゃくちゃな世界で、 自分だけはせめてまっすぐでありたい。 小児性愛、ルッキズム、ソシャゲ中毒、ネット炎上、猫を愛するということ…… この現実(ルビ:カオス)と向き合う覚悟はあるか? 総合出版社・立象社で社会派オピニオン小冊子を編集する橘泰介は、担当の著者・黒岩文子について、同期の週刊誌記者から不穏な報せを受ける。児童福祉の専門家でメディアへの露出も多い黒岩が、ある女児を「触った」らしいとの情報を追っているというのだ。時を同じくして橘宛てに届いたのは、黒岩本人からの長文メール。そこには、自身が疑惑を持たれるまでの経緯がつまびらかに記されていた。消息不明となった黒岩の捜索に奔走する橘を唯一癒すのが、四人一組で敵のモンスターを倒すスマホゲーム・『リンドグランド』。その仮想空間には、橘がオンライン上でしか接触したことのない、ある「かけがえのない存在」がいて……。 「かわいい」に狂っていく――。 誰かを「愛でる」行為の本質を暴く傑作長編! あなたは心の底から誰かのことを、かわいいと思ったことがありますか。かわいい、そう思った瞬間にその子のかわいさが絶対的事実として確定し、さらに増幅し、そうしてもうただかわいい、かわいい、と思いを重ねていくほかなくなる、そんな経験がおありでしょうか。(本文より) 【著者略歴】 古谷田奈月(こやた・なつき) 1981年千葉県生まれ。2013年『星の民のクリスマス』(「今年の贈り物」改題)で第25回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。17年『リリース』で第34回織田作之助賞を、18年「無限の玄」で第31回三島由紀夫賞を、19年『神前酔狂宴』で第41回野間文芸新人賞を、23年『フィールダー』で第8回渡辺淳一文学賞を受賞。
レビュー
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熊
ラストめめめっっちゃよかったな。かわいいという感情の広さを文字に言葉にしてくれた。
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書店員さん、青田刈りして
怒涛の展開の連続で、 嵐がきて、嵐がきて、嵐がくる。 描かれている登場人物、だれもがリアルで、 だからこそ、ある人同士が関わると嵐が生じ、 別の人同士が関わると別の嵐が生じる。 こうして、嵐が生じ続ける。 虐待、毒親、スマホゲーム、出版社の社内事情。 全てがリアルに描かれている。 全てが同時進行でどんどん展開され、 ぐちゃぐちゃになりながらも、前に進んでいく。 すごい。この一言に尽きる。 なのに、小型書店には置いておらず、 大中型書店の新刊コーナーの端に置かれているのみなのが 残念でならない。 2022年8月31日の朝日新聞の文芸時評で、 鴻巣氏が取り上げてくれたから私は本書に出会えたが、 本書に出会えない人がたくさんいそうで、もったいない。 本屋大賞を受賞しても不思議でない作品であり、 書店員さんには今すぐ新刊コーナーの真ん中に置いて欲しい。 1人でも多くの人に、本書に出会って欲しい。 嵐に入ったら抜け出せないように、 一度読み始めたら抜け出せない。 そしてその体験は、嵐のようにあっという間に過ぎていく。 古谷田氏が本書にかけた熱量がビンビン伝わってくる作品だ。 こんな素晴らしい本が、 新刊コーナーの端に追いやられているのは悲しい。 書店員さん、青田刈りしておくべきですよ。 ストーリーとは直接関係ないが、p.94の神父の言葉に感動した。 「五体満足の健康体で、そこそこ裕福。そうでなければ生きられないなら、 あるいは、そうでなければ人類という種全体の重荷になるなら、 そうでない者は生まれてこないほうがいい。 そのほうが合理的だ。事実、生物はすべて合理的に進化してきた。 人間もしかり。でも実際には、生まれてくる。貧しい者にも、 体の自由がきかない者にも、この世の入口の扉は分け隔てなく開かれている。 つまり誰もこの世界に拒まれてはいない。だからわたしたちが病気や障害や 貧しさを理由に誰かを重荷に感じるならば、それはむしろわたしたちのほうが 思い違いをしているということだ。この大きく豊かな大地に、 間違った立ち方をしているということだ」 日々世知辛さを感じている私には、とても響いた。
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期待はずれ
ラジオで高評価の書評をされたので、読んでみようと思ったけど半分で挫折。ゲームを話をダラダラされても、何も現実感がない。現実らしい箇所を捉えて読もうとしたが結局諦めました。
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おれたちにはそれぞれのロールがある。役割が。
「わかる?いつもこんな感じなんだよ。むかつくほど見慣れた構図なんだ。選ぶ権利なんて誰にもなくて、家の戸一枚で運命は分かれる。この状況をちょっとでも均等にするには、だからなんとかその戸をこじ開けるしかない。荒れたっていよ。荒れたほうがいい。力を貸して。それで何人かは救えるから」 ※※※ 仲間の打ち込むテキストは、いつもまるで声のようだ。それぞれのアバターに合った音が文字に宿り、それがそのまま響いてくる。リンドグランドではその響きは完全に澄んでいて、木や草や風の一部のようにさえ感じられる──実に美しくMMORPGというものを描いたフレーズだと思う。 リベラル系の社会運動に関わる中で挫折を経験し、それ以降、代償行為のようにMMORPGでヒーラー職としてパーティーメンバーを助ける主人公・橘が、ある事件を機に再び現実の事態に深くコミットしていくようになる。 ただただゲーム小説として出色で、書き手がゲームを深く愛し、また信じているのが分かる。押井守『アヴァロン 灰色の貴婦人』、藤田祥平『手を伸ばせ,そしてコマンドを入力しろ』あたりと並べたい傑作。 それだけに、この小説が国内のゲームメディアから総スルーされているのがひたすらに悔しい。 I○NとかAUT○MATONとか電フ○ミとか、今これ特集するなり著者にインタビューするなりしとかないと、絶対後悔する。 本当にゲーマーに読んでほしい小説。この作品が描く希望に深いところで響きあえるのは、ゲームを深く愛した人だけだと思うから。 この小説の中でゲームと現実は等価で、それゆえに小説らしいやりかたで──同じ言葉で架橋するようにふたつの世界が繋がっていく。 ケア、サポート、フィールド、回復、支援、実戦-実践、役割-ロール。 「誰かを助けたい」。 メディアと報道、ポリティカルコレクトネス、猫、メンタルヘルス、格差、「親ガチャ」、政治運動、SNS、etc,etc.描かれていることは多岐に渡るが、柱になっているのは児童福祉とMMORPGのふたつだと思う。というか、そのふたつを重ね合わせることで物語を描こうとしている、ともいえる。 ゲーマーとして、あるいはオタクとして、リベラルに、善良にいたいと思うけれど、それはいつも苦しい戦いではある。社会を見渡せば見渡すほど、何度もうんざりさせられ、新鮮に絶望させられる。 それでもこういう物語があるからまだやれるなと思う。 「この戦いもロール制でいこう」。 現実の過酷さというドラゴンをいつか打倒していくために。仲間を待ち、ゲームを続けよう、それぞれのロールで。
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かわいいという感情の実態
色々な愛情というものが世の中には存在して、中にはタブーとされているものもあるが、それははたして本当に許されないことなのだろうかとか色々なことを考えながら読んだ。ソシャゲで繋がった人達の友情は昭和を生きた人間からは新しい友達の見つけ方で素敵だなと思う。
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作者の本気度・熱量が伝わってくる
私の敬愛する作家は、島田雅彦・平野啓一郎・吉田修一。東野圭吾とか宮部みゆきとかはあんまり好きではない。 そんな私が、偶々手に取って読んでみたら面白く一気に読めた。 久々に骨のある作品に出会えてよかった。
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一気に読んだ
いろんな登場人物が出て同時進行でいろんな人間の人生がある、日本の小説やドラマはこういう話が本当に少ない。 でも実際はいろんな人間がいろんな場所でいろんなタイミングで絡み合って世界は成り立っている。 だから自分は海外小説や海外ドラマの方が好きなんだけど。 まとまりがあるようでないこの疾走感が久々に夢中になって本を読みました。 全くゲームしない自分ですが、夢中になる小説でした。
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掴みどころがない
帯には様々な現代用語が並び、作品紹介や書評には「完全小説」「全部盛り」などという興味を引くようなことが書いてあるが、 実際は、様々な要素を物語の装飾のように使ってるだけで、深堀はされていない。 また、登場人物の人物像や性格が上手く描かれていないため、最後まで読んでもどういう人物かわからない。 主人公は39歳の設定で、時々それが強調されるが、言動からはどうしても20代に思えてしまう。 重要人物の黒岩さんも、ある事件がきっかけとなり、本人にしか理解できないようなセリフを吐くようになるが、まったく唐突だと感じた。 その事件までの人物像の描き方が不十分なので、なんでそこまで変わってしまうの?となる。 著者が自分の書きたいことを充分に書けてないが、それができれば面白くなりそう、とも言えるかも。
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