日本の文学賞

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そういう生き物

すばる文学賞

そういう生き物

春見朔子

高校時代の同級生だった二人が再会し、暮らしを共にしながら距離を縮めていく。ささやかな日常のずれを描く第40回すばる文学賞受賞作。

再会同居女性日常関係性

作品情報

同居する二人の間に、少しずつ親密さが芽生える。

第40回すばる文学賞受賞作。2017年に集英社から単行本刊行。

書籍情報

出版社
集英社
発売日
2017-02-03
ページ数
144ページ
言語
日本語
サイズ
13.7 x 1.7 x 19.5 cm
ISBN-13
9784087710540
ISBN-10
4087710548
価格
708 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

第40回すばる文学賞受賞作。 千景とまゆ子。高校の同級生である二人は、10年ぶりに偶然再会し、思いがけず一緒に暮らし始める。 薬剤師の千景は、とある男との逢瀬を重ねながらも、定年退職した大学の恩師「先生」に心を寄せている。 叔母のスナックでアルバイトをするまゆ子は、突然家に尋ねてきた「先生」の孫とカタツムリの飼育を巡り交流を深めつつ、千景をそっと見守る。 すれ違いの生活ながら、長く離れていた二人の距離は徐々に縮まっていく。そんな中、高校時代の友人の結婚式が近づき、二人はかつての自分たちの深い関係と秘密とに改めて向き合うことになる。そして……? 一番近くにいるのに、わかり合えない二人。なのにもかかわらず、寄り添う二人。 愛と性、心と体の狭間で揺れ動く孤独な心象風景を、瑞々しい文体で描き出す、第40回すばる文学賞受賞作。 【著者プロフィール】 春見朔子(はるみ・さくこ) 1983年北海道県生まれ。北海道札幌市在住。

レビュー

  • 知的で感受性豊かな文章力

    情景や登場人物の心理が、細かく表現されていてすっきりと、とても読みやすかったです。 千景とまゆ子の立場からの話が、丁度良いページ数で交互に書かれているのも、次にどう繋がるのかと期待しながら面白く読み進めました。 私の中で、透明がキーワードになりましたが、文章自体も綺麗な表現で、作者の透明感溢れる美学が伝わり、これぞ純文学だなと思いました。 最後に千景とまゆ子がどうなってゆくのか気になりますが。 他の本も読んでみたいです。

  • 私はもう、愛と性を一人の相手でまかなうことなんかあきらめたのだ

    すばる文学賞は女性優位な新人賞という印象があったが、軽く調べたところ2010年以降では女性10人男性5人、2000-09年は女性11人男性8人が受賞者で(佳作含めて)、言ってみれば純文学界のアファーマティブアクション! というのはどうかわからんが、女性作家が性愛について書く、というのは、すばる文学賞受賞作としては定番だ。 まあ2000年の「塔」は男性作家が同性愛について書いていたりだし、02年「スチール」もそうか。03年は両作品とも刹那的な性愛を書いているし、13年もそうかな。05年はなんかオーソドックス。まあ、受賞作を全部読んでるわけではないが、まあ「すばる」っぽい。以下ネタバレあり。(MtoFの芥川賞作家としとは藤野千野がいる) MtoFの人の実際のところと合致するのかはよくわからない。また、即物的なことをいうなら性器を切除してるのかとかは謎。まあ法律上男のままなら家裁に申請もしてないし、切除もしてないのだろう。あとスナックで働けるかはかなり疑問。 で、狙ってやってるのかよくわからないがまあ狙ってるとして、「信用できない語り手」で、「疑似家族もの」かなあとさせておいて、実は、ってのはなかなかうまい。けどそれ以上の物はないかなあ。

  • 生物

    『そういう生き物』です。第40回すばる文学賞受賞作。雑誌初出は2016年で単行本は2017年発刊。 ダブル主人公で、二人の視点が早いテンポで交互に入れ替わって進む方式は、珍しいわけではないけど、本作に限っていえば結果的には充分成功していたと感じました。 前半は、なんというか随所に見られる表現が妙に古くさく、時代の最先端を描くべき純文学で大丈夫かと心配だったのですが、そういうことか、と腑に落ちる中盤の展開以降は別人に変わったかのように筆が冴え、良い感じに最後まで行きました。全体としては印象的な文章表現もところどころあったし、面白かったし、とても良かったです。 線虫だとかカタツムリだとかが出てくることでも分かる通り、本作は生物フレンズというか、男と女のあり方を哲学的とか文学的に考えるというよりも生物学的に考える作品として秀逸だったと思います。考えてみればタイトル通りだ。主人公の一人がセックスをするシーンが出てきても、それはセックスじゃない。本作にセックスは無い。あるのは交尾。人間だってつまるところ動物というか生物なんだから、ということで、読者が登場キャラクターの交尾を線虫とかカタツムリのように観察している感覚は、考えてみれば新鮮かも。 人間という動物にしても、結婚していないから不安なオバさんや、結婚しているからこそ諸々縛られていた先生など、モチーフが分かり易くありがちと言われてしまうかもしれないけど、その分読者としてはとっつきやすい作品でした。 ただ、生物を描いた本作品は、セイブツであると同時にナマモノでもあると思う。発表されてから時間が経つとあっという間に古びてしまう作品だろうなとも感じました。純文学作品というのは大概そうですが、本作品はナマモノだからそっち方面の足が早そうです。だから、読もうと思った時には早めに読んでおいた方が良さそうです。★5

  • 流行のテーマ。 ※ネタバレあり

    第40回すばる文学賞受賞作品。 とても平易な文章で読みやすい。最初の方ではラノベを連想したほど。構成はちょっとだけ変わっていて、二人の主人公の視点がごく短いスパンで替わりばんこに書かれている。短い、というのがポイント。 テーマの一つは多分、トランスジェンダー。それにしても最近純文学系新人賞って、同性愛とかジェンダー問題をテーマにしたものがよく受賞するなあ。何故? 流行なんだろうか。 内容はそんなに目新しいものではなかったけれど、「心が女/男」という表現に対する作中人物の回答は興味深かった。確かに普段、「私は男だ!」とか「女だ!」とか強く意識することはないだろう。「かんがえたことない」のが普通なのかもしれない。 でもこのテーマでカタツムリを出すのはちょっとあからさますぎるよなあ、と思ったり。ミスリードを狙って読者を驚かせようとしているだけに、カタツムリってわかりやすすぎるヒントで勿体ない。

  • トランスジェンダーって、もはや現代純文学のパラダイムかも。

    「そういう生き物」は、トランスジェンダー的なテーマを扱った作品です。 学生のころ恋人同士だったが、いまは女性同士となって同居している二人の微妙な関係性。 もともと、男/女 という観念は社会的に押し付けられたものでしかないのかも知れない・・・ 経験的に言っても、そういう面は絶対に否めない、と、この小説を読みながら考えさせられました。 この作家さんの性や人間同士の関係性に対する洞察力はハンパない気がしました。 ・身体が男で、異性として意識する対象が女 ⇒ 男性 ・身体が女で、異性として意識する対象が男 ⇒ 女性 ・体が女性で、異性として意識する対象が未定 ⇒ 本作の主人公2人? そんな図式さえ浮かんできました。 山崎ナオコーラの「父乳の夢」(すばる2017年3月号)もトランスジェンダーっぽいテーマであり、 このテーマは、もはや現代純文学のパラダイムではないかという気さえします。 他のレビュアーさんも書かれていたように、確かに今、この手の純文学作品は多いらしいです。 私自身は「新潮」「すばる」「群像」「文藝」「文学界」に掲載の小説をすべて読んで言っているわけでも ないんですが、純文学の文芸誌をいくつも愛読している方も、トランスジェンダーが時代を解くキーワードだ とおっしゃっていますし。 トランスジェンダーについて考えたい方には一読の価値のある作品だと思います。

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