日本の文学賞

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鏡の背面

吉川英治文学賞

鏡の背面

篠田節子

女性たちのシェルターを支えていた聖母のような人物が火災で亡くなる。しかし、遺体が別人だと判明したことから、慈善と献身の背後に隠された過去が少しずつ露出していく。善意、依存、救済の危うさを大きな物語で問う長編小説。

シェルター善意と偽装女性の共同体依存社会派ミステリー

作品情報

聖母の死から始まる謎は、人間の善意の裏側へ読者を連れていく。

『鏡の背面』は、薬物依存やDVから逃れた女性たちが暮らす施設を舞台に、救済者として崇敬された人物の死と身元の謎を追う。人を助けることの光と影、共同体の中で生まれる信仰に似た感情、過去を隠して生きる人間の弱さを、篠田節子らしい厚みのある物語で描く。

レビュー要約

  • 序盤の設定よりも、死者の正体をめぐる展開から強く引き込まれるという反応が目立つ。重い主題を扱う一方で、人物の見え方が反転していく構成が読み応えにつながっている。

書籍情報

出版社
集英社
発売日
2018-07-26
ページ数
544ページ
言語
日本語
サイズ
13.4 x 3.7 x 19.4 cm
ISBN-13
9784087711523
ISBN-10
4087711528
価格
2200 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

聖母が死んだ。 薬物や性暴力によって心的外傷を負った女性たちのシェルター「新アグネス寮」で発生した火災。「先生」こと小野尚子は取り残された薬物中毒の女性と赤ん坊を助けるために死亡。スタッフがあまりにふさわしい最期を悼むなか、警察から衝撃の事実が告げられる。 「小野尚子」として死んだ遺体は、まったくの別人だった。 スタッフ中富優紀は、ライター山崎知佳とともに、すべての始まり、「1994年」に何が起こったのかを調べ始め、かつて「女」を追っていた記者にたどり着く。 老舗出版社の社長令嬢、さる皇族の后候補となったこともある優しく、高潔な「聖母」の正体とは……。 一方、指導者を失ったシェルター内では、じわじわと不協和音が……。 疑念渦巻く女の園、傑作長編サスペンス。 【著者略歴】 篠田 節子(しのだ せつこ) 1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。97年『ゴサインタン』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、09年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞を受賞。著書に『夏の災厄』、『インコは戻ってきたか』、『夜のジンファンデル』『長女たち』など多数。

レビュー

  • 読み応えがある

    最初から最後まで止まらない面白さ。途中で篠田先生得意のホラー寄りの展開になるのもたまらない!最後にはきっちり解決して読後感最高でした。

  • 真実は小説よりも奇なり、っていうけど。

    篠田さんのファンなのでなんでも買って読んでいます。ただ、これはつらかった… 設定がやはり無理で、筆力でグイグイと読ませるものの、力技でねじ伏せられたような読後感が強かった。まあでも他の作品でも似たような力技は見られるので、それが篠田さんの魅力そのもので、何だかんだ言ってもそれに魅了されて自分も読み続けているのだろう。 本筋に関しては残り1/5になったあたりでちょっと予想がついたものの、前半のドキドキ感が大きかったので最後までたどり着けました。登場人物の描き方が秀逸で、本筋にあまり感動しなかったものの、それだけで楽しめました。

  • 絶妙なリアリティ

    奇抜なだけのミステリーではなく、現実に起こりそうで起こらなそうな、絶妙なところを突いてくるお話だったので、グイグイ引き込まれました

  • 圧倒的な面白さ 謎を一つ一つほどきながら向かう先にみつけたものとは

    薬物や性暴力によって心的外傷を負った女性たちのシェルター「新アグネス寮」で突然発生した火災。「先生」と皆に慕われていた小野尚子は、取り残された薬物中毒の女性と赤ん坊を助けるために炎に飛び込んで死亡してしまう。 スタッフが悲しみに暮れていると、警察から「小野尚子」として死んだ遺体は、まったくの別人のものだったと告げられ、皆呆然とする。それだけではなく、その遺体は、以前、連続殺人事件の容疑者として警察に調べられていた女だというではないか。 スタッフ中富優紀は、ライター山崎知佳とともに、何が起こったのか、死んだのは一体誰だったのか、そして「先生」はどうなったか、貪るように調べ始め、かつてこの「女」を追っていた記者にたどり着く。 華族出身で日本のマザーテレサとまで賞賛されていた女性と連続殺人犯かもしれない女との接点とは? この謎めいた、そしてどうもかなり悪そうな女性を追いかける過程がとにかく面白くてワクワク、ゾクゾクしました。 作者の作品は、本作品も含めて、とにかくテンポが良い。文章のリズムが心地よく、どんどんノンストレスで読んでいける。正にプロの文章だ。 途中から、この小説が終わってしまうことが惜しくなってしまった。結末を知りたいけれど、終わりを迎えてしまうのが惜しくなるくらいに面白かったです。

  • 篠田節子の真骨頂

    女性の厚生施設を運営している聖女のような「先生」が、落雷による火事の際に、入居者の母子を救おうと火の中に飛び込んで、母子は救えたものの焼死する。 運営するスタッフも入居者も途方に暮れているさなかに、警察から連絡があり、その「先生」の死体は別人のものだった。 そして、その死体である別人は、過去に連続殺人事件を疑われ、週刊誌で書かれたことがあった女性だった。 真相を追うのは、施設の代表の女性、「先生」を取材したことがある女性ライター、昔その記事を書いた老いぼれの元週刊誌記者・・・。 なかなか味のあるキャラクターを配役としている。 そして、社会からドロップアウトせざるを得なかった施設入居者の女性達の描写が、いつもながら秀逸。 結婚詐欺にからみ連続男性殺人を起こした昨今のいくつかの事件がモチーフとなっている。 さらに、真相を求めてフィリッピンの異世界へと展開するが、これは篠田節子のお得意の異境ものの真骨頂。 最後の終わり方も見事と思う。 人間はかくも複雑である。 ところで、気付いたのだが、このタイトルの「鏡の背面」は、コンラート・ローレンツの名著と同じ。 人間の認識の背後にあるものを問う、ということで借りたのであろうか。 最後の参考文献には挙げられていなかったが。

  • 設定はおもしろいけど

    設定も文の読みやすさも中盤までの内容も面白かったけど、ラストそんな感じかあって終わり方だったのが少し残念。あとは元記者の長島がでてくるまでがちょっと話が進まなくてなかなかページが進まず辛かった。 この著者の本はこれが一冊目なので他のも機会があれば読んでみたいけど、こちらの本は他人に薦めるほどではなかったかな…

  • 良かったです。

    半田明美は小野尚子以上に小野尚子になった。 感動しました。

  • 読みやすい本でした。

    テンポが良くて読みやすかったです。1人になりすまし続け亡くなるまでバレない、って、現実味はありませんが、この作品だからこそ納得できるストーリーだったと思います。推理小説の要素も有って読み応えがありました。

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