作品情報
消えていく世界のなかで、サトミは現実の輪郭を探す。
第34回すばる文学賞受賞作。2011年に集英社から単行本刊行。
書籍情報
- 出版社
- 集英社
- 発売日
- 2011-02-25
- ページ数
- 144ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784087713916
- ISBN-10
- 4087713911
- 価格
- 1483 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
ある日突然、私のそばから人や物が次々に消え始め、それらは最初から「無かった」ことになっていく…。当たり前の日常が孕む不確かさと、今ここにある世界のきらめきを色鮮やかに描きだす。第34回すばる文学賞受賞、鮮烈なデビュー作!
米田夕歌里(よねだ・ゆかり) 1980年千葉県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸専修卒業。 在学中から小説の執筆を始め、本作品で第34回すばる文学賞を受賞。
レビュー
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すばらしい作品
わたしはだいたい「消失」を扱ったものに弱いのです。小川洋子さんの「密やかな結晶」にしても三崎亜紀さんの「失われた町」にしても、ものや人が「消える」のである。そして、そのことに関する記憶や記録も一切書き換えられていて、失ったことにすら気づかなくなる切なさにぐっとくるのです。 このトロンプルイユ〜に関してはすごく現実的なところで実は「消失」や「書き換え」が行われていることに戦慄さえ覚える。我々の実世界で起こっているとしてもなんら証明しようが無いからだ。そしてその怖さを余すところなく伝えている作者の筆力に感心するばかりである。 比喩を一切使わない硬質な文体、地震による不安な感じ、だんだんと変容を遂げる「現実」、すべて計算され尽くしたような無駄のない描写、すばらしいです。 さらに、ミントの缶の色合いの鮮やかさ、立体化する天の川の描写、どれをとってもわたしの好みにストライクでした。 さらに読み返してみると、サトミにとっての「誰か」は久坂さんのようであり、久坂さんの「誰か」は遠野さんのようなのです。実は久坂さんと遠野さんは裏表の関係で、これこそトロンプルイユ(だまし絵)ではないかと深読みさせてくれるのです。
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面白かったです
個人的に、女性作家の小説で初めて面白いと思った作品です。 内容は、主人公の女性の周りからある日突然物や人が消失していくが、自分以外誰も気づかず、初めからなかったことになってしまうというもの。 話としては今さら珍しいものではないが、その世界観の描き方が非常に面白いですね。 特に、なんら原因追究や問題解決に奔走するでもなく、割と容易に主人公がその現象を受け入れるところです。 ここが女性作家ならではの感性だと思ったのですが、ストーリーの起伏云々よりも丁寧にその世界を描こうとする気持ちの表れでしょうか。 主人公の心情もほどよくオブラートに包まれており、最後まで読みやすかったです。 大袈裟で派手なだけの多くの小説よりは、よほど好感を抱きました。 ただ、若干意味の分からない文章があったり、粗が目立ちました。 その点だけ残念でしたね。
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うーん
すばる文学賞受賞作ということで読んでみましたが、この作品が、1000以上の応募の中から選ばれたなんて、信じられません。
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手法とテーマが不一致か・・・。
久しぶりに純文学新人賞受賞作を読んでみたくなり、購入。奥付をみると著者の米田氏は、早稲田の文芸出身とある。どんなカリキュラムなのかは知らないが確か創作コースのはずだ。その経験に裏付けられてか、冒頭からの書き出しは上手い。しっかりストーリーの像が描けているし、文章も研鑚をした技術に裏打ちされたものだろう上手さがあり、なかなかのものだ。この点だけで言えば、新人賞レベルの一枚も二枚も上のレベルだろう。が、問題はテーマと手法なのだ。 書き方自体はオーソドックスなリアリズム。だが、テーマは現実そのものの不確かさ、といういわゆる前衛で扱われるタイプのものだ。その点で読んでいくと、ミステリー小説を超えないというか、純文学として成立するかどうかを疑問に感じる。本書で扱われるテーマをあぶり出すのはかなり難しく、もっと言えばリアリズムで書くこと自体が不可能なのではないかと思う。面白いか否かで言えばミステリー的なストーリー展開がしっかりした文章で描かれているので、なかなか面白い。だが--言い方が難しいが--現実の危うさそのものを伝え、読み手である私達の現実感覚が揺らぐ虚無感のようなものを伝えきったかどうか・・・。こういったテーマには例えば、ロブ=グリエの 迷路のなかで (講談社文芸文庫) であったり、ドン・デリーロの ボディ・アーティスト (ちくま文庫) のような手法を選ばないと困難、というのが読後感として残った。
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よい
文章と描写の仕方に独特な感性を感じました。 内容は不思議な話ですが、 私は、現実に起きた不思議な出来事というより、 不思議な話を通して現実を捉え直す試みとして読めました。
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透明な通信を受信したら
忘れたくない。 忘れようとするのが、予め決められた思考回路なのか?それとも本当に誰かが塗り替えるのか。 『トロンプルイユの星』雑貨などの選び方がお洒落で拝読中の気分が良い。ストーリーは始め淡々と進み中盤に向けじわじわ上げその後一気に駆け、またはじまりの鉱石のような静けさに戻る。作者はこの現実世界のアレについて最早明確な確信があるのだろう。余りにもシンクロナイズした所が多く、放心をしたし涙もながした。読後感は切ない。メンソール。
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騙し絵?
どこが騙し絵なのか、さっぱりわからなかった むしろ、コンバート(ポジション変更)の星という感じがした トロンプルイユを最後に持ってきて、無理やりくっつけた感じがして残念だった 小説としては面白く、一気に読み進めることができた 出てくるキーワードが上手い 今を生きている女性の生活を切りとられていて "女性"作家が書いた本、というのが良い意味で目立っている
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小説の自由に改めて驚く
トロンプルイユ(騙し絵)よろしく、読者の平衡感覚が巧みに崩されます。 語り手の周辺から次々と物や人が消えていくという現実的にはありえない話ですが、怪奇小説という印象ではありません。時に整合性を欠くストーリー展開は書きっ放しというのか、意図的にまとめきっていないというのか。不思議なストーリーは手品のように、種明かしがされることもないまま、終わります。中盤以降のスピード感は見事です。小説って自由なんだなあ、と改めて思います。
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