日本の文学賞

← 受賞作品一覧に戻る
ミーツ・ザ・ワールド

柴田錬三郎賞

ミーツ・ザ・ワールド

金原ひとみ

歌舞伎町で出会ったキャバ嬢ライと暮らし始めた由嘉里が、恋愛と孤独、推しへの愛のあいだで新しい世界を見つけていく小説。

歌舞伎町恋愛孤独出会い自己探索

作品情報

夜の新宿での出会いが、由嘉里の世界を開いていく。

集英社から2022年に刊行された金原ひとみの長編。キャバ嬢ライとの同居をきっかけに、主人公の価値観が少しずつ揺らいでいく。

レビュー要約

  • 会話の軽快さと、由嘉里が他者とつながっていく過程が支持されている。恋愛観や孤独の描き方に共感する声が目立つ。

書籍情報

出版社
集英社
発売日
2022-01-05
ページ数
240ページ
言語
日本語
サイズ
13.3 x 1.7 x 19.2 cm
ISBN-13
9784087717778
ISBN-10
4087717771
価格
1650 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

【第35回柴田錬三郎賞受賞作】 死にたいキャバ嬢×推したい腐女子 焼肉擬人化漫画をこよなく愛する腐女子の由嘉里。 人生二度目の合コン帰り、酔い潰れていた夜の新宿歌舞伎町で、美しいキャバ嬢・ライと出会う。 「私はこの世界から消えなきゃいけない」と語るライ。彼女と一緒に暮らすことになり、由嘉里の世界の新たな扉が開く――。 「どうして婚活なんてするの?」 「だって! 孤独だし、このまま一人で仕事と趣味だけで生きていくなんて憂鬱です。最近母親の結婚しろアピールがウザいし、それに、笑わないで欲しいんですけど、子供だっていつかは欲しいって思ってます」 「仕事と趣味があるのに憂鬱なの? ていうか男で孤独が解消されると思ってんの? なんかあんた恋愛に過度な幻想抱いてない?」 「私は男の人と付き合ったことがないんです」 推しへの愛と三次元の恋。世間の常識を軽やかに飛び越え、幸せを求める気持ちが向かう先は……。 金原ひとみが描く恋愛の新境地。 【著者プロフィール】 金原ひとみ(かねはら・ひとみ) 1983年東京生まれ。2003年『蛇にピアス』で第27回すばる文学賞を受賞。04年、同作で第130回芥川賞を受賞。ベストセラーとなり、各国で翻訳出版されている。10年『TRIP TRAP』で第27回織田作之助賞を受賞。12年『マザーズ』で第22回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。20年『アタラクシア』で第5回渡辺淳一文学賞を受賞。21年『アンソーシャル ディスタンス』で第57回谷崎潤一郎賞を受賞。

レビュー

  • 信じるものに出会うこと

    きっと誰にでも忘れられない人たちがいると思います。会わなくなって久しいけど、その人たちにはその人たちの居場所があるはず。 過去に出会った全ての人たちが、自分の人生を生きている。少なくとも生きていたのであり、忘れてしまった人たちにも、その人たちを忘れない人がきっといたと思います。 落合陽一さんがある本の中で「みんな違って、みんなどうでもいい」ぐらいの感覚がちょうど良い、と語っていました。それを私なりに翻訳すると「たとえ分かり合えなくても、理解できなくても、その人たちがその人らしかったらそれでいい」になります。 また、この考えに似たものとして、『ゲシュタルトの祈り』というものがあります。長くなりますが引用します。それは、 「わたしはわたしの人生を生き、あなたはあなたの人生を生きる。 わたしはあなたの期待にこたえるために生きているのではないし、あなたもわたしの期待にこたえるために生きているのではない。 私は私。あなたはあなた。 もし縁があって、私たちが互いに出会えるならそれは素晴らしいことだ。 しかし出会えないのであれば、それも仕方のないことだ」 本書のなかで、主人公はまさに自分を貫きながらも、そのなかで素晴らしい沢山の出会いに恵まれます。彼女が「自分らしく」生きることで、それを理解し、尊重してくれるかけがえのない他者に出会うのです。 ありとあらゆるものが複雑化し、人びとの考えや価値観が多様化する現代で、このような自分と他者を同じように等しく尊重する考え方は、一種の救いとなると私は考えています。それは宗教の次元であれば、例えばキリスト教の「(汝自身を愛するのと同じように)隣人を愛せ」となるでしょう。そして金原ひとみさんも本書のなかで、 「全ての人がその人らしく、そして彼らに居場所と祝福を」 と言っている気がします。ですが、同時にまた 「あなたが信じられるものは何ですか?」 彼女はそんなことも問いかけているような気がします。それはなぜかと言うと、主人公の数々の素晴らしい出会いはまさに「信じられる」人びととの出会いであり、それが彼女にとっての「世界」を変容させる体験になるからです。 そしてまた、人間というものは、信仰の有無に関わらず、またその対象がなんであれ、何かを「信じる」ことができなければ生きてはいけない生き物です。そして「信頼」したり「尊重」したりすることと「愛する」こととの距離は、実はそれほど遠くはないということに気が付きます。なによりも、私たちは同じ人間なのです。つまり、今のこの世界に求められているのは寛容さです。というわけで、この本を読むときっとどこかで 「まあ、いろいろあるけど、とりあえずみんなでハイボールでも飲みながら乾杯!」 と、登場人物の誰かが言い出してそうでワクワクしてしまいます。ついつい、私もその飲み会に加わりたくなってしまいます。 コロナ禍や戦争などこの世界には様々な困難が有りますが、みんながそんな気持ちになれたらどんなに幸せでしょうか。そんなことを考えてしまう、祈りのような小説です。全ての人におすすめします。

  • 僕らを救う金原ひとみ

    さまざまな愛の形を描く金原ひとみによって、僕らはいつも救われる。今回の作品も言葉に出来てない僕らの言葉を紡いでくれてそれでまた僕らは救われるのだ

  • 泣けるとこもあります?じんわり、涙しませんか?

    段落が少なく、よくも悪くも一気に読むしかないから、読書が早くなりました笑面白い!好きです!

  • やはりこの人はすごい

    27歳の銀行員(腐女子)が主人公。 てっきり、自己肯定感が低くて自分軸がブレブレなつまらない女だと思っていたら、意外とそうでもなかった。 彼女には『ミート・イズ・マイン(略してM・I・M)』という愛すべきコンテンツがある。 ミートイズマインのことならすらすらと饒舌に話せるし、ライやアサヒなど、自分とは全く違うカテゴリ(作中では『バイアス』と表現されていた)の人にだって布教することができる。 ライを失っても、『私には、逢えない人を愛すことができる才能があるんです』と頼もしい発言をし、実際、これからも彼女は銀行で楽しくもない仕事をしながら推しにお金を落としつつ、推し活中心の人生を自分なりに楽しんでいくのだろう。 『好きなものがある』は人を強くする。 とてもいい小説だった。

  • 知らない世界

    歌舞伎町、腐女子など、私には、縁遠い世界の話でした。実感は湧かなかったけど、この世界の人たちの生活を垣間見れたような気がします。毒もありますが、主人公を巡る人間関係、仲間意識の濃厚さは、うざったいとも、羨ましいとも感じたお話でした。消え去ったレイのことも気になります。

  • 色々な特性を持った人々

    腐女子のオタクで男性との付き合いが分からない普通のOLが、死ぬことになっていると思い込んでいるキャバ嬢と出会う事から周囲の個性ある人々と関わっていく。 オタクの生態にもクスッとさせるが、登場するホストやゲイバーのママなどすべてのキャラクターが際立っている。 理解が難しいちょっと特殊な人達という色眼鏡がある部分を著者の描写で軽々と乗り込め、表面的には分からない人の心の内の複雑さを表現していく。 ラストの展開も現代の若者らしさを表現している。 際立った展開があったり感動や驚きとは全く別であるが、なぜか登場人物みんなの人生が気になってしかたない。

  • ナマモノにつき

    私は金原氏と同年代だからなのか、金原小説を読むと身体に染み込む様な、グルーヴに乗せられている様な感覚になり、コメディー部分ではネタが分かりすぎて爆笑できるような人間です。 同年代全員にはオススメしないが、親愛なる友にはオススメする。 今しか体感できないかもしれないナマモノ小説。

  • 腐女子の大部分はもっと普通

    人はバイアスを通して物を見ている。作家とは、ホストとは、恋愛とは、女とは、男とは、幸せとは、、、もうなんでもそう。そういうバイアス(自分の中にある概念)を通してじゃないとものを見ることが出来ないし、考えることすら出来ない。わかる。 でもね、私は腐女子なんです。腐女子でありつつ金原さんが大好き。それは私の中で共存している。 だから、この主人公の腐女子には共感できない。不自然さを感じる。複雑さに欠けるっていうか。腐女子って意外と普通なんです。それも自分の中の一部でしかないというか。うーん、この主人公は個人ではなく腐女子代表みたいな書き方に感じるからなのかな。身に迫ってこないというか、なんか想像して書いてますって感じがするっていうか。最後まで違和感が抜けなかった。 この作品は若い人向けに書かれたのかな? 最終的なメッセージ性もはっきりしているし、読みやすいといえば読みやすい。 でも私はこの作品の中の小説家ユキの独白部分のような、人間の乖離性とか複雑さ、どうしようもなさを読みたいんです。

関連する文学賞