日本の文学賞

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巨食症の明けない夜明け

すばる文学賞

巨食症の明けない夜明け

松本侑子

母親との関係や恋人とのすれ違いを抱えながら、過食にのめり込む若い女性の孤独と不安を描く小説。第11回すばる文学賞受賞作として発表された。

摂食障害孤独家族青春女性の内面

作品情報

満たされない気持ちが、食べることの終わらない夜明けへとつながっていく。

集英社から1988年1月に刊行された版。過食に向かう21歳の女子大生を主人公に、身体感覚と心の揺れを静かに掘り下げた、すばる文学賞受賞作として知られる。

レビュー要約

  • 食べることへの執着や食品売り場の細かな描写が印象的で、内面の空洞を食欲として描き切った点が受け止められている。一方で、物語の着地点については好みが分かれる。

書籍情報

出版社
集英社
発売日
1987-12-01
ページ数
157ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784087726305
ISBN-10
4087726304
価格
1 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

女子大生、21歳。恋が終わると同時に襲われた猛烈な過食症。やけ食いとともに体重も増え、心を重くする…。都会で一人暮らしをする若い女性の不安と孤独を描きだす。第11回すばる文学賞受賞。

レビュー

  • ありがとうございました

    ずいぶん前の出版されたものにもかかわらず本は思っていたよりきれいで、とても感謝いたしています。

  • 共感はしましたが・・・

    私も失恋がきっかけの拒食と過食に苦しんでいて、この本の内容には とても共感しました。 どうしてこうなったか、どういうふうに過食が進んだか・・・など 「わかる!私と同じ!」と何回心の中で叫んだことか。 でも結論としては、どうしたらよくなるのか、よくなったのか・・・ までは書いてなかった。 私はそこを知りたかったし、そこを期待していたのに。 でも苦しんでいるのは自分だけではなく、同じ人もいるんだって わかって興味深い本だったと思います。

  • 摂食障害の怖さと辛さ。

    こちらは文庫版だが、1987年に出版された本書は、まだ日本で「過食症」なんて、一般的にはまだ、知られていなかった時代だったと思う。 中学時代にハードカヴァーで読んだ時、ついに日本でも「摂食障害」が小説の中で扱われるようになったことが、帰国子女だった私は、海外で同い年の子たちの苦しみと葛藤を見てきただけに「危機感」を抱いたものだった。 本書の主人公は、母親との関係と、恋愛が原因で「過食」するという摂食障害を抱えているが、私自身、母親が「育児ノイローゼ」だったために、兄、妹とともに「父子家庭」状態で育ったこともあって、海外生活から帰国したあと、無自覚でいた実母との関係から摂食障害を発症して苦しんだ経験があるだけに、共感するものがあった。 私は主人公と同じく、「拒食」ではなく「過食」で始まり、食べて食べまくって下剤で出す、嘔吐する、というタイプの摂食障害を起こした。 本書には、どうやって主人公が摂食障害から抜け出したのかは書かれていない。 小説なのだから、という問題ではなく、摂食障害はある日突然、気づいたらおさまっていた、ということがあるからだ。 私自身、あれだけの過食から、いつ、どうやって抜け出たのか記憶にない。 ただ、海外で暮らしていた時に摂食障害などに苦しむ同級生を見てた時、どうにも解決できないことに執着して前に進めないか、あえて後ろ向きに親に復讐心をあてつけて身勝手な親を攻撃する、という子が多かった。 今じゃ映画でも「17歳のカルテ」やら「ヴァージンスーサイズ」とか、パーソナリティー障害や摂食障害の少女たちを扱った作品があるため、珍しい障害ではなくなったが。(それでも、日本での劇場公開時は、こんな障害があるのかという風潮だった。) こういった障害が、「日本でも珍しくなくなった」ことが、大変困ったことなのだ。 親が親の責任を果たさないか、親が子を、自分の自己満足のために「自分が、かなえられなかったことを果たす道具や手段」として無自覚に我が子を育ててしまう親が増えたことでもあるからだ。 親と子の関係はすべての「基本」となるために、そこに問題があると、子はやはり何らかの障害を発症してしまう確率が高くなる。 自己肯定感が持てない子というのは、大概、親から否定されたり、親の思うとおりにできないことで叱られたり暴行を受けて育ってきた者が多く、生真面目な子供ほどこういった障害を発症しやすくなる。 自分が親になった今、自身が我が子に同じような過ちをしていないかどうか、「自戒の書」として、たまに読み返している本である。

  • 何も伝わらない

    体験していないことを書くな、とは言いません。小説ですから。 でも、覚悟をもって書いてほしい。 参考資料をたくさん読んで、それをもとに想像し書かれたものと思います。 参考資料の寄せ集めとしか感じませんでした。 愛に飢え、食べて食べて食べて、太って太って太っていく主人公の悲しみも心も感じられませんでした。 たくさんの過食症の人たちが現実にいるのですよ。 作り物めいた、心を感じられない作品は、出すべきではないと思います。

  • 人生経験と釣り合わないと思いました

    大食個所はリアルなすごみを感じましたが、摂食障害の多くは未成熟さからくるものなので、恋愛経験がある人がなるのはちょっと違うなあと思いました。

  • 青春の思い出

    拒食症から過食嘔吐になって苦しんでいた頃を思いだせれる私の一番好きな本です。 筆者は摂食障害には詳しくないと巻末に書いていましたが母、母、母、でいっぱいの侑子さんに当時の私そのものです。 母になり、思い出してレビューしました。

  • 拒食症の怖さ

    よく、女性の精神疾患は、母親との関係が大いに関係ある、ということは言われているようだが、拒食症も例にもれず、母親との関係が上手くいっていない時に起こるのだろう。この作品では、主人公が「巨食症」で、病院にかかったり、また、食べ物を食べまくってしまい、戻してしまうシーンなど、リアルに書かれている。いかに、女性の心理と、この病気は、深い関係があるかが伺える。そのような意味でも、この作品は、ドキュメンタリータッチで、衝撃的な作品であったと思う。

  • 心を埋めるなにか。

    物を食べ続けることでしか、心の安定を得られない21歳の女子大生時子。その心の奥底にあるのは、幼い頃母に捨てられた過去、恋人との別れ。誰にも頼れず、甘えられない彼女が唯一無心になれるのが食べ物に向かっているときだった。 食べては吐き、すべてが吐き出されたことに安心する。女性ならではの「綺麗でいたい」という心理が、ますます彼女を追い込んでいく。 摂食障害と一言で言うけれど、そこに見え隠れするのは、深く重い現実。ありのままの彼女を丸ごと受け入れてくれる何かがないと、抜け出せないものなのだろう。 松本氏の書き方は、散文的で、これといったストーリー性はないのだけれど、思いついたままに書かれたような文体にきらりと光るものがあって、新鮮だった。

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