作品情報
木山捷平文学賞で評価された『遠き山に日は落ちて』は、作品名の印象を手がかりに読者を引き込む。
『遠き山に日は落ちて』は、佐伯 一麦による集英社から1996年に刊行された作品で、木山捷平文学賞の受賞作として知られる。純文学の領域で評価された一作で、題名が示す主題や人物の動きを軸に読ませる。
書籍情報
- 出版社
- 集英社
- 発売日
- 1996-08-01
- ページ数
- 227ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784087742121
- ISBN-10
- 4087742121
- 価格
- 2791 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
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レビュー
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妙に暖かい後味
皆に親しまれているドヴォルヂャークの歌をタイトルに冠したこの作品は、佐伯が今の奥さんと再婚し、仙台に近い寒村で暮らした実体験を基にした私小説だ。 北国での貧乏生活が描かれているわけだが、滑稽にも思える田舎暮らしと人々や自然との関係が淡々とした筆致で書かれ、妙に暖かい後味を残してくれる。やはり、後妻の影響が大きいのであろう(というか、前妻の呪縛から解き放たれたというべきか)。それまでの作品に見られる、悲惨でぎすぎすした暗黒面はすっかりなりを潜め、新たな環境の下で、静かにゆったりと壊れた自身を再生していく様子が、読み手を優しい気持ちにしてくれる。
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日本人の生活スタイルの本質が見えます
田舎の古い一軒家に住み、男は小説を書き、女は染色をする。 晴れた休日には家の修繕をし、近所の住人達と酒を飲んだり、温泉につかるのが何よりの楽しみ。 大きな事件は起こらないけれど、のんびりとした田舎の生活を描くことによって 「本質的な幸福」とは何かを思い出させてくれる良質な作品でした。 この本によって、長い目で見ると自分はどう生きたいのかが少し見えたような気がします。 シンプルに主人公である2人の生活を描くだけで十分に訴えてくるものがあると思うのですが、 斉木の過去などが少々ゴタゴタしていて、なにもそこまでの詳しい設定をしなくてもよかったのにと思ったりもしました・・・。 過去に傷を持った斉木が今はここでこうして元気に生きていることを描くことによって、 この土地と生活の“癒し効果”“再生効果”が感じられるのは事実ですが、このテの作品はシンプルに限ります。 あえて記さなくても読者にはちゃんと伝わっていると思います。 このヒロインの奈穂という女性は同じく佐伯一麦さんの「草の輝き」のヒロインの柊子と名前は違れど同一人物のようです。 「草の輝き」は草木染の修行をする柊子、 「遠き山に日は落ちて」では染色家として独立した奈穂という女性がヒロインですが、 「遠き山~」の中で奈穂が過去を回想する場面は「草の輝き」の中での柊子のエピソードそのままでした。 そんなこともあり、この2冊はあわせて読むことをおすすめしたいです。
関連する文学賞
- 木山捷平文学賞 第1回(1997年) ・受賞