作品情報
声を失った先で、世界との距離と回復の気配を見つめる。
第25回すばる文学賞受賞作。2002年に集英社から刊行された単行本で、声を失った青年がホテルで働きながら生き直しを試みる姿を描く。
書籍情報
- 出版社
- 集英社
- 発売日
- 2002-01-04
- ページ数
- 136ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784087745665
- ISBN-10
- 408774566X
- 価格
- 1124 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
選考委員奥泉光氏、島田雅彦氏、高樹のぶ子氏らの圧倒的支持で選ばれた第25回すばる文学賞受賞作。自ら「声」を失った青年の苛立ちと怒り、魂の再生を鮮烈な言葉の力でうがつ。期待の大型新人の衝撃作。
レビュー
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儚さと美しさと強さ
表紙を開いて読み始めた瞬間から惹き込まれる。静かな空気の中で物語が幕を開けたかと思えばページを捲る手が止まらなくなる。ひとつひとつの文が情景を脳裏に刻み込んでくる。読み手が入り込もうとする努力は不要。作品が殴り込んでくる。本を読む時は必ず脳裏に映像が浮かぶ。しかし、これほどまでに鮮明な映像が浮かぶ作品は少なくとも私の記憶にはない。作品として素晴らしいのは言うまでもなく、作者の言葉選び、それらを巧みに操る技術に賛辞を送らずにはいられない。
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素晴らしい表現力
自分を殻に封じこめながら、失声症になってしまった主人公の『僕』はホテルで働き始めるが、理不尽な虐待を受け、復讐を計画するが... そんなストーリーで物語りは淡々と進んでゆく。すばる文学賞受賞作は必ずしも面白い作品ばかりではないけれど、これは読ませる作品です。とにかく作者の非凡な表現力が素晴らしく、最後まで退屈せずに小説世界に堪能することができる。個人的にはたいへんお気に入りの作品です。
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凡庸
失語症とあるが、「地球の回転する音が聞こえる」という、ある種の精神の病にかかった少年の話で、これは治療するべきものだろうが、何か文学的病気とも言うべき展開で、最後には不良とつきあったりして、しまいには精神錯乱に陥る。特に感心はしなかった。
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割とリアル
何不自由ない家庭に却って抱く閉塞感、それがために理由の見いだせない病や不幸へと自らを追い込み、軌道を外れていくという心理は割とリアルかも知れない。声を失ったから徹底して周囲の音に耳を奪われるというのも一貫していていい。表現もいちいちすんなり入ってくる。けれどやっぱり何かもう一つ足りないなあ。多分きっと、経験とか年期とか、そんなのなんだろうなあ。決して嫌いじゃない、むしろ頑張って欲しい作家さんです。
関連する文学賞
- すばる文学賞 第25回(2001年) ・受賞