日本の文学賞

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ファンタジスタ

野間文芸新人賞

ファンタジスタ

星野智幸

サッカーを軸に、身体、国家、熱狂、個人の生を重ね合わせる星野智幸の長編。競技の躍動を借りながら、現代社会の暴力性と欲望を鋭く照らし出す。

サッカー身体ナショナリズム暴力現代社会

作品情報

サッカーの熱狂が、身体と社会にひそむ暴力をあぶり出す。

集英社から刊行された野間文芸新人賞受賞作。サッカーの身体性と群衆の熱狂を用いて、星野智幸が現代の政治性と欲望を描く。

レビュー要約

  • スポーツ小説の枠を越えて、社会と身体の関係を問う作品として読まれている。熱量の高い語りに引き込まれる一方、批評性の強さを重く感じる読者もいる。

書籍情報

出版社
集英社
発売日
2003-03-26
ページ数
232ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784087746419
ISBN-10
4087746410
価格
2000 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

フットサルとリフティング占いに依存している、わたし。ダキマクラに夢中のリョウジとの同居。そんななかで行われる首相選挙。性・家族・職業・国家の“らしさ"に違和感を抱える人間を描く作品集。第25回野間文芸新人賞受賞作。

レビュー

  • わざと思わせぶりな書き方をしているのではないか?

    ○この作家の他の作品(俺俺、呪文など)は良いと思うのだが、この短編集はよくわからなかった。 ○砂の惑星。作品全体にゆとりがないが、読ませる。作者に何らかの主張か想定があって、それを簡潔に表現すれば誰も足を止めないようなものであったとしても、それを思わせぶりに表現できれば、もっともらしい小説になる。そういう意味ではオペラに似たところがある。この作品は、作者の主張(それが何であるかはいまだにわからないが、それほど深いものではないように思う)をドミニカのエピソード、小学生の失踪のエピソード、ホームレスのエピソードを纏わせることによって、飽きさせない読み物に仕立てた。よく言えば読み手に考えさせる作品になっている。魅力は、何よりもドミニカのエピソードと、言葉遊びだ。ありふれたストーリーに風変わりなアリアとひねりを加えたオペラのようなものだ。良いと思う。 ○ファンタジスタ。同棲する二人の会話を通じて物語は展開する。きちんとした状況説明は読者に与えられず、それぞれの会話や独白のなかに断片的に提供される情報から掴める仕組みになっている。時間はいまだけれども、政治状況は大きく変わって、中国の経済力が支配的になっている架空の日本に生きていて、それぞれが家族との関係で問題を抱えている二人が、明日にせまった首相選挙をどうするか饒舌に語り続ける。作者のメッセージは200字で書けるはずであるが、そのように表現してしまえば浅薄なステイトメントになるところを、饒舌の煙幕で覆うことによって、考察するに値する思想と呼ぶべきものが潜んでいるような気になる。さらに饒舌の隅々に難しい言葉をちりばめて、何らかの意味ある思想の断片が込めているようにも思える(当然ながら作者は本気でそうしているつもりだ)。思わせぶりの勝利だ。悪くない。読者に考えさせれば良いのだ。ただ、砂の惑星には、読者を前に引っ張っていく題材の面白さがあったのだが、いかんせんフットボールと選挙ではそこまでの魅力はない。短編ならごまかし切れる。長編だと限界が見えてしまう。 ○ハイウェイ・スター。16歳の少年が悪友とともに穴掘りのアルバイトをする物語。退屈ではないが、意図がよくわからない。思わせぶりが過ぎる、と思った。

  • 独特の雰囲気をしっかりもったホシノワールド

    3つの中編小説の1つが「サッカー小説」=「ファンタジスタ」。他2編のうち1つは芥川賞候補作である。 どの作品にも幻想的と呼ぶにはやや泥臭い、というかややチープな、それでいて独特の雰囲気はしっかりもった〈ホシノワールド〉が存在している。 「ファンタジスタ」は近未来というよりはむしろパラレルワールドに同時並行的に存在する〈もう一つのニッポン〉の数年後の姿のよう。 「大統領」に立候補したサッカー界の大物。階層化が進み隊列が長くなる社会。 「国際化」に埋没していく大多数の中下層〈ニホンジン〉。フットボールと呼ばれるようになった〈ニホンのサッカー〉。主人公の恋人?が愛用する異様な「抱き枕」。 キーワードとして使われているボールリフティング。 リアリティーがあるようなないような。幻想的であるようなないような。 そこに〈サッカーの真実〉はあったか?〈人生の真実〉はあったか? 〈閉塞感〉だけはあった。 「現代社会を覆う閉塞感」などとこの作品世界の〈閉塞感〉を対置させるのはあまりに陳腐に過ぎよう。〈閉塞感〉はそのものとして受け入れよう。 そのうえで、その〈閉塞感〉を突き抜けた向こうにある〈ナニモノか〉の存在を本書のなかに感得できたか?僕は感じることができなかった。存在の暗示すらも。 閉塞され、その向こう側に待つ〈ナニモノか〉を感じ取れない世界。それもまた〈サッカーの真実〉なのか。

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