作品情報
女たちの日常の奥に、逃れがたい関係の痛みが潜んでいる。
橋本治の集英社刊短編集。『ふらんだーすの犬』『ごはん』『ほおずき』『浅茅が宿』『金魚』『白菜』を収録し、現代の人間関係を鋭く描く。
レビュー要約
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家庭内の不穏を静かに掘り下げる筆致が印象に残る。人物を断罪するより、関係の歪みが生まれる過程を見せる点が読者に重く響く。
書籍情報
- 出版社
- 集英社
- 発売日
- 2004-11-26
- ページ数
- 256ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784087747171
- ISBN-10
- 4087747174
- 価格
- 2497 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
橋本治が現代を見ると、こうなります。 児童虐待、注意した若者に殺された男の妻、恋愛にふりまわされる女性…「普通」のはずの人々の心の動きを淡々と追ううちに、現代の荒廃した世相が浮かび上がる。鬼才の小説集。
レビュー
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もう読めないのか
正統的な短編小説集、もう読めないのか。
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奥深い
蝶のゆくえ、短編が何話か入った文庫本です。最初の話「ふらんだーすの犬」が特に強烈な印象でした。産みっぱなしで自分の女の部分が大事な母親、子どもの立場に立つと息苦しいほどな描写。最近ニュースで聞くことも多い事件をテーマにしています。 橋本治さんは、物語の登場人物の背景をものすごくリアルに書いています。人の心理、発達はおいたちや環境に深く関わるのですね。
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リアルな内容でした。
陰惨な記述もありましたが、ニュースなどを見ていると実際はこんなケースもありうることが、想像できました。
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一人社会化の極みの結集
橋本治の若い頃の著作には読む人に 「この著者は長生きできるのか」 とうならせるような才気があった。 実際,物の弾みで,この本が世に出る前に橋本治の執筆物に触れられなくなるような危機はたくさんあったのだろう。 そんな橋本治の向かった先がこの小説からはにじみ出ている。 一人社会化である。 才気が自己へ向かうと破滅への一歩なのだろうが, 橋本治は自己の中に社会を築き上げることに,専心したのであろう。 自己の中に世に生きる人々,背景にある歴史,美,全てを構築する,それも実体験に基づくだけの浅薄に縛られることなく。 彼は自身の中に世界を作った。 この本の中には,橋本治社会に生きる女性たちが著されている。 ただただ,「そのようなものです」という視点でいとおしんでいる。 本の帯に記された 主人公は、あなた。というあおりは半分本当で半分的外れであろう。 半分本当というのは,彼の視点が極めて実世界を忠実に見据えているからである。 彼の仮託した現実は,身震いがするほどに私たちを照射する。 半分は的外れと感じたのは,この本の中の世界は,実世界とつながりを持つようなものではないからだ。 ひたすらに著者自身が建設した世界がそこにはある。 ともあれ,読者の立場からすると 「女の現実」 を感じさせ,考えさせ,肯定し,元気にさせる,好著であることには間違いがない。
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人はそれぞれ物語を持つ。
人それぞれ物語を持ちながら生きているんだと思ったら、 周りの人たちが人間味を帯びてきた。
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低体温な筆致で日常を客観視する、橋本流秀作短編集。
橋本作品の短編に共通して言えることは、非常にひんやりとした筆致で、 鋭く日常をえぐっている、ということ。 例えて言うなら、まるで「かまいたち」のように、切られたことにも気づかず、血も出ない、 それなのに確かに傷跡だけが残る、そんな作風を感じずにはいられない。 文章に用いられる言葉は決して難解な熟語などではなく、 平易なものなのに、とてもソリッドなイメージを作り出し、 それで日常を描くとき、そこには一服の毒が盛られ、何か特別な非日常の世界へと引きずり込む。 冷たい文体は、特に「ふらんだーすの犬」では冷酷とも言えるほど。 (子どもが悲惨な目に合う話だけに、正直、読んでいて辛くなる) 「白菜」は誰にでも似たような煩事を経験しているだけに、ひりひりした気分を共感できる。 非常に読み甲斐のある作品集。
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小説、下手だな
橋本治の小説を読むのは『桃尻娘』以来だが、こんなに小説下手だったのか、と思う。全部いきあたりばったりに書いている。それに中間小説誌に書いているのに半分くらい純文学で中途半端なのもいけないが、「ふらんだーすの犬」の主人公が子供だとか、あるいはところどころに「人間は酷薄なものだ」という橋本理論の解説が入る。柴田錬三郎賞受賞、功労賞的なものだろうが、もしかすると橋本のもっといい小説がよそにあるのかもしれない。『巡礼』を読んでみよう。
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様々な年齢の女性心理に的を絞った傑作短編集
私は橋本氏のエッセイは良く読むが小説は本作が初めて。橋本氏の作品は独特の論法で斬新な"ものの考え方"を読者に優しく提示し、読者にも"考えさせる"のが特徴だが、小説でも同様の手法が活かされている。 「ふらんだーすの犬」は最近良く報道される若い母親による幼児虐待を扱ったものだが、母親やその情夫の"考え方"を執拗に追って心を寒々とさせる作品。小説と言うよりは実録記に近いドライな描写が印象的。ラストは「フランダースの犬」より哀しい。「ごはん」は26才と言う微妙な年齢の独身女性会社員の"考え方"をシニカルに綴ったもの。やはり「白いご飯」がイイです。「ほおずき」は18才(子供)と20才(大人)の狭間で悩む女性の心境を、純粋な母子愛の世界で生きる同年齢の女性との対比で描いた作品。ヒロインの独白が大半を占めるので、エッセイの香りがする。「浅茅が宿」は定年退職直後に暴力で突然死した男の妻の心境を追う事で、実は男を中心とした一家の姿を浮き彫りにした技巧的作品。"家族とは"を考えさせる。「金魚」はバブル崩壊後を舞台にして、ポスト・モダン生活に敗れた夫妻が、夫の実家のフランス文学名誉教授一家に転がり込むものの、一家全体が理解し合えず崩壊する様を写実的に綴ったもの。特に老妻の描写は秀抜で、プライドと狂気が紙一重だと言う事をマザマザと見せ付けてくれる。「白菜」は57才になる女性が、実家で老母が倒れたと言う知らせを聞いて、故郷に駆けつけるが、母親、同級生、そして故郷に戸惑いと共に思ってもいなかった懐かしさを覚えると言う話。ヒロインを男性に変えれば私と同じ境遇で、しかも亡父が国鉄職員と言う点までソックリで妙な親近感を覚えた。 様々な年齢の女性の心理に焦点を絞って、人間関係を周到に考察した傑作短編集。
関連する文学賞
- 柴田錬三郎賞 第18回(2005年) ・受賞