空をゆく巨人
現代美術家・蔡國強と、福島県いわき市で桜を植え続ける志賀忠重の友情と実践を追ったノンフィクション。震災後の土地、アート、記憶、境界を越える行動が重なり、型破りな二人の長い関係から希望を描く。
作品情報
九万九千本の桜と現代アートが、震災後の福島で奇跡のように結びつく。
集英社から2018年に単行本として刊行、2022年に集英社文庫版も刊行。受賞時の単行本の識別子を採用する。
レビュー要約
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二人の人物の規格外の行動力と、芸術が地域に残す力に心を動かされる読者が多い。アートに詳しくない読者にも、人間の底力を感じさせる作品として受け止められている。
書籍情報
- 出版社
- 集英社
- 発売日
- 2018-11-26
- ページ数
- 372ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 13.1 x 2.3 x 18.8 cm
- ISBN-13
- 9784087816716
- ISBN-10
- 4087816710
- 価格
- 2739 JPY
- カテゴリ
- 本/ノンフィクション/アート・エンターテイメント/アート・芸術
●内容紹介 現代美術の世界的スーパースター蔡國強と、世界最大99000本の桜を植える福島の男。夢に挑み続けるふたりの“巨人”の奇跡の実話。 福島県いわき市の実業家・志賀忠重と、中国福建省出身の世界的現代美術家、蔡國強。二人は、1980年代にいわきで出会い、数々の驚くべき「作品」を生み出してきた。 砂浜に埋もれた木造船を掘り出した作品、海に導火線を置いて走らせた炎……蔡が描いたスケッチを、日頃アートに縁のない志賀らが頭と体を使って形にしていく――いわきは蔡が世界に羽ばたくきっかけとなった。 そんな二人の最大の作品が、東日本大震災後に制作した「いわき回廊美術館」だ。美術館周辺の山々では、志賀が、99,000本の桜を250年かけて植樹する「いわき万本桜プロジェクト」を進めている。 原発という「負の遺産」を残したことを激しく悔いて、未来のいわきを世界に誇れる場所にするために。 二人の「巨人」の足跡を辿りながら、美術、ひいては「文化」というものの底力を問う。こんな時代だからこそ伝えたい、アートと人間の物語。 読み終えたあと、一歩を踏み出す勇気が湧いてくる! 第16回開高健ノンフィクション賞受賞作! 【スタジオジブリ 鈴木敏夫氏 絶賛!】 ひとりの人間が出来ることなど、たかだか知れている。しかし、ふたりになると奇跡が起こる。 中国福建省出身の蔡國強と福島県いわきの会社経営者志賀忠重。ふたりは、80年代末にいわきで出会い、数々の作品を生み出して来た。 そして、蔡國強は、現代美術の世界的なスーパースターになった。ぼくは、この話を他人事として読むことは出来なかった。蔡國強と宮崎駿が折り重なった。 ぼくは、この長い物語をたった2日間で一気に読んでしまった。ちなみにぼくは、川内有緖さんの事を子供のころから知っている。 恵比寿にある小さなマンションの8階にぼくの一家が、9階に彼女の一家が暮らしていた。ぼくはいまでも彼女のことをこう呼ぶ――あっちゃん、やったね! 開高健賞、おめでとう! ●著者プロフィール 川内有緒(かわうち・ありお) 1972年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒業後、米国ジョージタウン大学で修士号を取得。米国企業、日本のシンクタンク、仏の国連機関などに勤務後、フリーのライターとして評伝、旅行記、エッセイなどを執筆。 その傍ら小さなギャラリーも運営。『バウルを探して 地球の片隅に伝わる秘密の歌』で、第33回新田次郎文学賞を受賞。著書に『パリでメシを食う。』、『パリの国連で夢を食う。』、『晴れたら空に骨まいて』など。
1972年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒業後、米国ジョージタウン大学で修士号を取得。米国企業、日本のシンクタンク、仏の国連機関などに勤務後、フリーのライターとして評伝、旅行記、エッセイなどを執筆。その傍ら小さなギャラリーも運営。『バウルを探して 地球の片隅に伝わる秘密の歌』で、第33回新田次郎文学賞を受賞。著書に『パリでメシを食う。』、『パリの国連で夢を食う。』、『晴れたら空に骨まいて』など。
レビュー
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人は、誰でもアーティストだ。
最近は、福島県のいわき市に何度もおとづれた。時間があれば行きたいと思っていたのが「いわき回廊美術館」だった。その経緯を書いてある本書にたどり着いて、蔡国強という現代アーティストと、彼を支えた志賀忠重を知り、いわきにはステキな人たちがいるなぁと感心した。 蔡国強は1957年の福建省生まれ。父親は墨絵画家であり、書家だった。幼年期に文化大革命に遭遇する。火薬画という新しい分野を切り拓いた現代アーティスト。1988年から1995年に福島県いわき市を情報発信の地とした。それを支えたのが志賀忠重らのいわきチーム。 蔡国強は、体験、体感、そして一緒に作ることを大切にした。全ての人がアーティストだという考え方を実行する。火薬は中国が宋代に発明されたとする。その火薬は「永遠と瞬間、時間と空間を曖昧にし、混沌を作る。火薬は私を解放してくれるための起爆剤」と蔡国強はいう。火薬というコントロール不能な巨大な火のエネルギーで、絵と自分を生まれ変わらせる。 1986年に日本に来て生活を始める。美術評論家の鷹見明彦に評価された。1991年「原初火球ーThe project for projects」でインスタレーションでアーティストとして表現。1993年宇宙から見た視点で、「万里の長城プロジェクト:万里の長城を1万メートル延長する」を行う。砂漠で火薬を爆発させる。そこに何の意味があるのかとも言われた。 漁港にあった木造の廃船を使った作品をいわきで生み出す。組み立てる人も作品の一部。その組み立てる人のリーダーが志賀忠重のいわきチームが作られる。それが、世界各地の美術館で飾られ、「いわきからの贈り物」となる。 1995年アメリカでは、キノコ雲のある風景:20世紀のためのプロジェクトを発表。この作品が、いいなぁ。1996年、ゲッゲンハイム美術館ソーホー別館で、「龍がきた。狼がきた。チンギスハンの舟」を発表。 1999年のヴェネツィア・ビエンナーレで「ベネチア収祖院」で、金獅子賞を受賞する。パフォーマンスとコンセプトが評価される。2001年上海のAPECの首脳会議のフィナーレとなる花火大会を演出した。中国においても評価されるようになる。2008年北京オリンピックのヴィジュアルディレクターとなり、花火を使ったパフォーマンスで、ビックフットの演出をした。 2008年ゲッゲンハイム美術館で、蔡国強展「I Want to Blieve」を発表。それが、いわきからの贈り物 Reflection-Gift From Iwakiとなった。 蔡国強は、目に見えないもの、科学では解明できないもの、人類には手が届かぬもの、人間にはコントロールできないものを作品の中に取り入れていく。アートは、社会を変えることができるかという根源的な問いをする。創造と実践によって未来の社会を構築する「社会彫刻」を提唱する。 志賀忠重は、2011年のフクシマ原発メルトダウンが起こって、一時期は避難したが、福島に桜の木を植えることを決意した。99000本の桜を250年かけて、福島に植えるという広大な計画。それに賛同する蔡国強。その植樹を進める中で、いわき回廊美術館が作られるようになる。でっかいスケールで、人の賛同、共感を得られるように、インスタレーションをする。形にはこだわらない人の参加を得て、アートを構築する。面白いなぁ。とにかく、蔡国強のスケールの大きな発想と志賀忠重のサポートが融合している。「好きなことをやらないと最後に笑って死ねない」と志賀は思っている。北極徒歩縦断の大場満郎へのサポートについても、意気に感じるというのが才能でもある。
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未来を見据えた希望と挑戦の物語
芸術と人間の絆が描かれたこの本は、読後に深い余韻が残る作品だった。特に、未来の世代へ向けた桜の植樹プロジェクトや、震災を乗り越えた地域の再生の姿勢が感動的で、前向きな気持ちをもらえた。登場人物の情熱と信念が、ページを追うごとに伝わってきて、彼らの生き方に心を揺さぶられた。 一方で、記述がやや細部に踏み込みすぎている箇所もあり、テンポが遅く感じる部分があった。ただ、それも物語の深みを増す要素とも言えるかもしれない。 全体的に、挑戦や希望をテーマにしたノンフィクションとして非常に読み応えがあり、次への一歩を踏み出したい人におすすめの一冊だと感じた。
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欲しかったものが安く早く入手できた
欲しかったものが安く早く入手できた
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1人から2人そして未来の世界を巻き込んだ物語
まずは1人の芸術家の為にから始まった物語。そこから世界へ。そして最終的には100年先の人々へ、関わった人全員の思いが伝わっていくプロジェクトに。。壮大で深い友情と愛と平和がつまったノンフィクション。発売当初読みましたが、またふと、生きるとは何かということを探したくなったときに読みたくなる本です。
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勇気をくれる本
恥ずかしながら、この本を読むまでお二人のことを知りませんでした。だがこの本を読んで、知れてよかった。世界が歪みゆく中で、9年前、その前からこうした友情があったこと、いつの時代にも諦めずに未来を見据え希望を絶やさず走っている人がいることを、この本を読んで改めて感じました。何よりもお二人がとてもカッコいい、私もこんな大人になりたいと心から思いました。これからの時代、不安なことだらけですが、諦めない、やってやるという励ましにもなりました。
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素直で情熱的な生き方
自分の心に素直に向き合いながらも、奇しくも出会った[日本のいわき]という縁故の地と人々からの恩義を常に大事にしながら、自身のアートを通じて人間にとって[夢]や[希望]の大切さを秘めながら、今なお世界に伝導し続けている姿は本当に 感銘です。
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いいなぁ〜♪
二人の主人公のうち一人のことは知っていたが、もう一人の人物はノーマークであった。現代美術の巨人が、もう一人の巨人と出会う。とにかく、いいなぁ〜♪、と思えるお話だ。人間にまだまだ希望をもっていていいんだ。そう思わせてくれた一冊。私は、サイさんを中心に読んでしまいがちだったが、いろんな読みが可能だ。震災ものとしても読める。
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中国から来た発想豊かな芸術家と、意気に感じやすい近所のおっちゃんの物語。
類まれな才能を持つアーティストが、頼りになるおっちゃんにあったら…。そんな化学反応が描かれたノンフィクション。まずは土地や生活を傷つけられても、心折れずに前を向く諸氏にエールを贈りたいと思う。桜を植樹することで次世代に夢や希望を託すという理念にも大変共感できた。 登場する方々はパワフルだが、もう少しライトな「おらが町の頼りになるおっちゃん、おばちゃん」は、気付かないだけで案外身近にいて、我々に勇気や力や思いやりを与えてくれているのかもしれない。(ふと空き家となった我が実家の庭を何も言わずに剪定してくれている近所のおじいさんを思い出した。) 著者の諸作同様、無駄な文章、大げさな描写などを徹底して避けた感があるものの、最も感情がほとばしった作品なのではないか。多くの方にお読みいただきたい名著。