日本の文学賞

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海峡のアリア

小学館ノンフィクション大賞

海峡のアリア

田月仙

在日コリアンのオペラ歌手・田月仙が、自身と家族の半生をたどるノンフィクションです。歌を通じて越境してきた人生と、朝鮮半島と日本の歴史に翻弄された家族の運命を描きます。

ノンフィクション在日コリアン声楽家族史

作品情報

歌は海峡を越え、家族の記憶と歴史の痛みを呼び起こします。

北朝鮮、韓国、日本にまたがる家族の歴史と、オペラ歌手として生きる著者の歩みを重ねた作品です。母と兄たちの苦難、歌うことへの祈りを通じて、分断が個人の人生に刻むものを描きます。

書籍情報

出版社
小学館
発売日
2006-12-15
ページ数
282ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784093797450
ISBN-10
4093797455
価格
1650 JPY
カテゴリ
本/エンターテイメント/音楽/音楽理論・音楽論/音楽史

「海峡を越えた歌姫」が明かす衝撃の半生 北朝鮮で金日成を前にアリアを歌い、韓国では日本の歌を禁じられた「海峡を越えた歌姫」。その衝撃の半生が初めて明かされる。父の事業倒産、音大での受験差別……幾多の苦難を乗り越えて、身一つでオペラ歌手への道を歩んだ著者には、幼い頃に生き別れた4人の異父兄がいた。だが「地上の楽園」を信じて北朝鮮に渡った兄たちは、あろうことか「強制収容所」に入れられ、塗炭の苦しみを味わっていた。祖国に裏切られた母は、怒りと哀しみを胸に、息子たちを救うべく奔走する。しかし、兄たちは次々と息絶え、ついに母も力尽きた……。母が死の間際まで抱き続けた思いと、海峡に横たわる人々の数奇な運命を綴る、2006年「小学館ノンフィクション大賞」優秀賞受賞作。

レビュー

  • 祖国分断を越え、差別を超え、歴史に根ざす恨みを超える歌姫

    在日朝鮮人二世として生まれ、クラシック音楽のオペラ歌手をしている著者が家族の歴史、日本と朝鮮の不幸な歴史を語り、その中で日本と韓国と北朝鮮がよい関係を構築していけることを念願し行動してきた自身の活動を語っています。 田さんは、大学に願書を提出したところ、「受験資格がありません」と拒絶されました。田さんが通っていた朝鮮学校を卒業しても、高校卒業の資格が与えられなかったのです。 受験を認めてくれた桐朋学園大学短期大学部芸術科の受験に合格し、学生生活を送るようになると、日本人以外の学生が一人しかいなかったので、良くも悪くも目立ちました。 田さんは、芸術の世界では目立つことは良いことだ、と前向きにとらえます。 私は単なる音楽好きなお嬢様ではない。 私は必ず、なにものかになってみせる。 そう心の中で思っていました。 卒業し、声楽家としてのキャリアを積みながら、田さんは北と南に分断された祖国の両側で、そして日本で、最高指導者・首相の前で歌う機会を得ました。 1985年平壌公演では金日成主席の前で、2002年ワールドカップの際は、小泉総理、金大中韓国大統領の前で歌いました。 こんな輝かしい経歴を持っていますが、田さんの胸の中には、自分の家族や多くの同胞達が受けた悲しい仕打ちが影を落としています。 特に、田さんの異父兄たちは、理想の楽土と信じて北朝鮮に帰ったものの、スパイの疑いをかけられて収容所に送られるという経験をしています。2番目の兄の死のあと、他の兄弟も後を追うように亡くなっていきました。 壮絶な経験をした家族の苦しみだけではなく、田さんは北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの両親の思いも受け止め、歌を通じて人々の心を癒す活動を開始しました。 朝鮮と日本の近世の歴史をよく知らない人にこそお勧めしたい本です。

  • 感動しました

    友人からの勧めで読み始めて、のめり込むように一晩で読ませていただきました。胸がつまり、深く感動しました。人間として、もっとも大切なものが何であるのかを考えさせられました。この本に出会えたことを心から感謝します。今までよくわからなかった日本にある朝鮮学校の話や、在日の人たちの苦悩がよく伝ってきました。文中にいろんな歌が登場し、まるで歌劇のように著者の哀しみや喜びが紡がれているのが印象的です。最近は北朝鮮の暴露本や悲惨な話はいくらでも出てますが、そういった次元でなく、日本と朝鮮半島を客観的に、しかし、いとしみながら書かれている点、そして自身の道のりを正直に顧みる筆は、読むほどに心に迫ってきました。お勧めします。

  • 凄い本だと思います

    予約していた「海峡のアリア」が昨日届き一気に読ませていただきました。受賞にあたってはさまざまな議論があったと聞きますが、ノンフィクションとして秀逸だと思います。むしろ独特の文体と感性が感動を誘います。私は泣けました。北朝鮮の話だけかと思ったら、かなりのメッセージが散りばめられているのにも驚きました。凄い本だと思います。

  • 歌は国境を超えて

    満月の夜、月の光が一直線に湖を照らし、そこに一輪の水仙の花が咲いていた。 母親は生まれてきた彼女に「月仙ウォルソン」と名付けたという。生まれたところは東京の立川である。歌好きな母親に育てられ、歌好きな子として育てられた。祖国朝鮮の言葉や歴史を学び、朝鮮人として生きるようにと、両親は朝鮮学校(チョソンハッキョ)に通わせた。父親は自分で作詞作曲もこなすほど、音楽や詩が好きで芸術家肌だった。 学校生活は日毎に北朝鮮金日成の「唯一思想体系」の波が押し寄せてきた。学校では革命歌謡を習い、「イムジン江」をみんなで歌った。朝鮮高校を経て短期大学桐朋学園・同研究科に進み、四年間の音大生活を送った。卒業後、在日オペラ歌手としてデビューした。 1985年4月15日、平壌、金日成主席の前で革命歌劇「血の海」のアリアを歌う。様々なおもいを封印して、ただ歌うことに集中した。その後、二人の兄が政治犯収容所で命を落とすことになる。 1985年、韓国ソウル「芸術の殿堂」で歌劇「カルメン」公演が成功。父母の故郷・晋州訪問。その時知った歌「高麗山河わが愛」に心惹かれ、これは私が歌うべき歌だと思う。歌は国境を超える… 南であれ北であれ いずこに住もうと みな同じ 愛する兄弟ではないか 東や西 いずこに住もうと みな同じ 懐かしい姉妹ではないか 山も高く 水も清い 美しい高麗山河 わが国 わが愛よ

  • 途中で涙がこぼれ、止まらなかった

    北朝鮮を地上の楽園と信じ込まされて、十代で「帰国」した兄たちとの再会場面では、 涙がこぼれてきました。 4人の兄たちは、スパイ扱いされて刑務所に入れられ、一人はそこで亡くなりました。 母親の生涯続いた無念の思いが、この文章を書かせたのだと思います。 在日コリアンとしての自身の苦労や、自分のアイデンティティーを求める姿を厳粛な思いで読みました。 どうして在日コリアンや朝鮮半島の人々が、こんな悲惨な苦労をしなければならなかったのか、 世界の政治や力関係が、一般庶民をいかに支配し苦労を強いるのか、改めて意識させられました。 田月仙さんの歌を実際に聴いてみたいと思います。 歌に込められた願い・祈りを聴かなければ、この作品を読み終わったことにならない気がします。

  • 一気に読めてしまうほど引き込まれる

    著者の並み大抵ではない努力・勤勉さに感心するとともに、 随所に紹介してある唄の歌詞・背景も楽しめた。 南北朝鮮・在日朝鮮人の事はほかの本などを読んで多少知っていたけれど、 本書によってより身近な事としてさらに理解できた気がする。 著者の兄弟が北朝鮮に行ってからどういう暮らしをしていたかとか、 その事実を知って、著者の母がどれほど苦悩の日々を送ったのか、 の記述を読みながら涙が止まらなかった。

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