日本の文学賞

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弩

中山義秀文学賞

下川博

下川博の歴史小説。日本では武士が好まなかった弩という武器を手にした百姓たちを軸に、因幡の地で起こる戦いと共同体の運命を描く。名のある武将ではなく、土に生きる人びとの視点から戦乱を捉える。

歴史小説百姓の戦い因幡共同体

作品情報

弩を手にした百姓たちが、戦乱のただ中で生き残ろうとする。

舞台は因幡。百姓たちは、武士の美意識から外れた弩を武器として手にする。支配する側の合戦譚ではなく、土地を守り、生き延びるために戦う人びとの物語として展開する。武器の特異さを入口に、戦乱の時代における民衆の選択と痛みを描く作品。

レビュー要約

  • 武士中心ではない戦国の見方と、武器としての弩に着目した設定が印象的に受け止められている。戦うことを選ばざるを得ない民の側から歴史を見直す読み味がある。

書籍情報

出版社
小学館
発売日
2009-05-11
ページ数
288ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784093862486
ISBN-10
4093862486
価格
1 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

「読み始めた途端、これは傑作である、と確信する小説が時にある。そしてそれは多くの場合、裏切られない。こういう小説は年に一作しかない、ことは書いておく必要があるだろう。2009年はこれだ。」【北上次郎氏(文芸評論家)・読売新聞6月14日付より】。 家族を、そして村を豊かにするために、わったい(因幡方言=規格外の自由人)に道を切り拓いていく因幡の百姓・吾輔の生きざまを、悪党との戦いを交え描いた時代小説。映画「七人の侍」の舞台(1586年)から遡ること240年、南北朝時代の動乱期を生き抜く、強くたくましい民衆像が明らかになる。青い目の侍や農民、日本ではなじみの浅い武器、この本のタイトルにもなっている弩(クロスボー)が活躍したりと、驚きの設定だが、それもまた、日本の史実なのだ。

レビュー

  • その村は今も昔ながらの田舎です

    父親が舞台になっている村の出身なので、どう転がっても贔屓目なレビューになりそうですが、作中に出てくる道等リアルに想像できるから大変楽しく読めました。特に終盤の戦いの場面の智頭口とか津山口とかは、きっとあの道だなとか思いながらあっと言う間に読んでしまった。

  • 作り出す快感

    古文書の記述を元にして、推理を織り込め、物語を作る快感・・それも小説の快感ですね。 ここにある物語は、文字通り「物語」で事実か史実かなどは問わない作り物の世界。 黒沢監督の「7人の侍」とダブらせながら読むのは、致し方ないことでしょう。

  • 日本の中世史観が根本的に変わる

    近代まで、日本の農民は、貧しく、弱く、知恵のない者だった、という定説を根本的破る画期的な小説。 映画『七人の侍』にヒントを与えた実話とも言われています。 横浜の金沢文庫等の資料を駆使した大作。 読み応えは十分あり。

  • 今までと全く違う鎌倉時代が見えてくる

    小作人の農家の主人公が、村のために柿渋の商売を始め成功する話を軸に、鎌倉時代の荘園制度、農家、武士、寺の関係、農民が商業を起こし財をなし、武士を雇うに至る歴史の流れを、描いた物語。 時代小説は、武士など、が多く、農民など地味な主人公もので、村の経営まで描いたものは少ない。

  • 堅実な人間ドラマで読ませる

    作者はNHKドラマなどの脚本を手がけていた人らしいが小説はこれが初めてか。 黒澤明の映画『七人の侍』にあるような、農民が侍を雇って村を守る戦いをする、というパタンを、 史実に則って南北朝に取材して設定した物語。 戦いで使われた武器がクロスボー、「弩」である。 小説として問題を感じないわけではない。 全体にもっとメリハリがあればもっとよかった。 前半第一部と後半第二部とでは、人物設定では同じでも別の物語だから、 全体の題としての『弩』というのも必ずしもしっくり来ない。 が、一部二部ともそれぞれ村の物語としては面白いし、とにかく読んでいて面白いのである。 なぜ面白いかといえば、それはアクションがどうとかいうよりも、 やはり人間が描けているからだ。 あっと驚くようなものではないものの、十分満足。

  • 映画化したら活きるのではないか

    著者は言う。悪党対策に侍を雇う百姓がいたと。 十四世紀の百姓を貧しく哀れな存在と決め付けるのは 問題が多過ぎる。実態は侍を雇えるくらいには豊かで、 その程度にはこの時代の百姓たちはたくましく力強く 自立していた。(P6) 著者は言う。史実をもとにつくった小説であると。 称名寺文書を当代風に読み直して 新しい物語を作ってみようと試みた。(P6) 主人公は、吾輔(ごすけ)という百姓。 鍵となるのは、柿、風呂、弩(ど)という武器だ。 西洋のクロスボーに近いその武器は、 本の中盤過ぎに(P168)現れる。 人物の掘り下げが、やや浅く 幸運を前提とした展開に、少し戸惑う。 この題材は、小説よりも映画化したら活きるのではないか。 第二部の戦闘シーンは特にそう。 地形を使った戦略、時間との闘い、人の心の動揺は 小説の行間をかなり補足しないと(映像をイメージできないと) 臨場感を感じられない。 最後に裏表紙の略歴を見て納得した。 著者はNHKの脚本家だったのね。 どうりで、どうりで。

  • 帯にやられましたね。

    今年一番の触れ込みでしたから思わず購入しましたが、ちょっと期待外れでした。 書き出しは力が漲っていたけれど、途中何度か中だるみがあって全体的に厚みがないというところでしょうか。

  • 確かに面白い。

    冒頭で紹介している中世史の素材を十分にかみ砕いて 各所にちりばめ、その上で自在なストーリーが展開しま す。おまけに、話しの進め方のテンポがよいので飽きる ことはありません。 なんといっても、最後の悪党達との決戦が読ませます。 そして戦いが終わった後、先頭に立った僧侶・光信の気 が触れてしまうという結末も気が利いています。因果応 報というべきなのでしょうか。 難しい漢字熟語も頻出します。「微醺」「瞋恚」など、電 子辞書で調べてしまいました。和田竜氏の諸作と並んで、 新しいタイプの活劇調時代小説という趣きです。

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