日本の文学賞

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北京陳情村

小学館ノンフィクション大賞

北京陳情村

田中奈美

「北京陳情村」は、対象に粘り強く近づき、個人の経験と社会の構造を結びつけて描くノンフィクション。具体的な現場から時代の歪みを浮かび上がらせる。

ノンフィクション社会記録

作品情報

「北京陳情村」は、対象に粘り強く近づき、個人の経験と社会の構造を結びつけて描くノンフィクション。

「北京陳情村」は、対象に粘り強く近づき、個人の経験と社会の構造を結びつけて描くノンフィクション。具体的な現場から時代の歪みを浮かび上がらせる。

書籍情報

出版社
小学館
発売日
2009-02-26
ページ数
208ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784093897136
ISBN-10
4093897131
価格
2485 JPY
カテゴリ
本/ビジネス・経済/経済学・経済事情/各国経済事情/中国

「中国共産党へのクレーマー」大集合! 五輪で沸き立った中国北京に、土地の強制収用、冤罪、役人の腐敗などを中央政府に訴えるために、 中国全土から「陳情者」が集まった村がある。解決率わずか0・2%の「陳情制度」に 命を賭けた彼らの姿を、女性ルポライターが追う。 第15回小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作。 「陳情者たちが隅に追いやられて、静かに『発狂』していく様が仄見える」(選考委員・桐野夏生氏) と評された取材力と表現力で、中国が抱える混沌と不条理を浮き彫りにする傑作ルポ、待望の単行本化。

レビュー

  • 重くのしかかるドキュメンタリーです。

    陳情村といわれる中国政府に訴え続ける集団、解決率0.2%、陳情制度の混沌とした部分に自らの身を挺した迫真のルポルタージュです。 一見淡々とした口調で陳情村全体の情景からマイクを持って歩きながらルポする姿が垣間見え、陳情者にインタビューを行うといった切り口なのですが、中国の経済発展と栄華の極め付けを世界中に知らしめた2008年に開催された北京オリンピックの裏側、中国の暗部が広がる実態を忠実に伝えようとしたものです。 そのため内容はすごく重いものであり、ひと言で済まされるようなものではありません。 同情するといった感情に走るものではなく、陳情者たちは国の陳情制度に則り、地方行政で虐げられた苦情を上申しているのです。ただ、解決の糸口は到底見えず、それでいて後戻りもできない人びとなのです。

  • 発展する中国の影の部分の実情がわかります

    陳情村とは、中国政府に不満を聞き届けてもらいたい人々が身を寄せる村のことです。 村といっても、人口二千万人の大都会北京にあります。 それも、高速鉄道(日本でいう新幹線)発着駅である北京南駅のそば、 天安門広場から5キロの距離に過ぎません。 そこには中国・中央政府の陳情局があり、 陳情のため上京した人々が、問題が解決しないまま周辺にすみつき、集落化したのだそうです。 中国版のドヤ街とでもいいましょうか。 「村人」が陳情村にたどり着くまでの様子を田中さんに語っています。 ここは中国の影の部分が具体的に記されており、貴重な見聞です。 普通の日本人ならまず足を踏み入れない場所でしょう。 記者である田中さんにモノをねだるような人もいるところからすると、 普通なら街であっても目をそらすような、そんな風体の人々のように思います。 よほど好奇心が強くないと話しかけることなどできないというか。 「村人」との会話の合間の独白がいいです。例えば、 ・・・格差の元凶は、利権が一極集中する一党独裁の政治体制に、市場経済が入り込み、 監督機能も不十分なまま、大いに花開いてしまっているところにあるのではと思わなくもない。 中国の影の部分というのは、政府が意図的に人々を虐げるというより、 統治する国土も人口も多すぎてリソースが足りず、 手当ての肌理(キメ)を追求することなどとてもできないことによって生じているような気がします。 中国政府は、優先順位の付け方、切り捨て方がはっきりしているので、 底辺の人々の実情が残酷であることに変わりはないですが。 本書は中国の暗部を描いているのですが、 それが中国社会の実に多様な諸相の一部であることを著者が自覚している感じがします。 著者の独白部分にうなずくことが多かったのは、そのせいかもしれません。

  • お笑い陳情村

    「陳情者=悲惨」という日本人の思い込みを、ある意味裏切ってくれる一冊。 劣悪な環境に3年以上通いながら、作者は陳情者たちを「悲惨な中国の象徴」と安易にひとくくりにしない。陳情者一人一人に人格があり、人生がある。その人格と人生のひだに、作家はおそらくは作家の個性である愛情とシニカルさと「笑い」をもってアプローチしていく。 しかし、陳情者は単なる「お笑い」の対象ではない。陳情者同士の話の齟齬から、作者は信頼するタンおばさんやバイ姐が陳情の続け過ぎで「狂っている」のではと疑い始める。それはある意味、我々が想像する「悲惨」よりもっと悲惨である。 取材がほぼ陳情村だけにとどまっているため、やや複層的な視点に欠ける。ただ北京陳情村について真正面から取り組んだ、おそらくは世界最初の本のはずだ。

  • メディアが伝えない陳情者たちのディテイルに迫る秀作

    中国在住の女性"ライター"である著者が北京市南部にあるいわゆる「陳情村(直訴村)」を足掛け3年にわたって足繁く通い、地方行政の"腐敗"を中央政府に訴えるため住み着いているクレイマーたちの生き様を描いた秀作です。 "中国の光と影"の「影」の部分として陳情村(或いは直訴村)を取り上げるメディアやジャーナリストは数多くありました。その大半は、共産党独裁政権による行政の腐敗や経済格差の拡大の縮図としてステレオタイプに伝えています。中国当局による人権弾圧の象徴として、民主化を圧し付けるためのエビデンスとして、陳情村(或いは直訴村)が、海外の人たちに認識されるようになりました。 しかし、敢えて不謹慎な言い方をすれば、『北京陳情村』に登場するクレイマーたちは、貧困の底で震え独裁政権の弾圧に怯える弱者でもなければ、行政の腐敗を暴き民主化を叫ぶヒーローやヒロインでもありません。私自身が中国で接してきた中国のフツーの人たちと差ほどかけ離れている存在とも思えません。他人の足をひっぱったり、自己主張が強かったり、話が突然飛躍したり、そういう人たちが日本と比べると圧倒的に多いと、私自身感じています。『北京陳情村』に登場する人物のやり取りは、馮小剛監督が描く現代中国の社会派コメディー映画と非常に良く似た感じですらあります。 『北京陳情村』でも触れていますが、陳情をビジネスとして捉えている人たちもいるのでしょう。中央からの評価が悪くならないように地方政府がお金で解決している例もあり、身近なクレイマー仲間がそこそこの解決金を手に入れた、というような噂を聞きつけ、達成可能な目的のため陳情活動をしているケースもあるのでしょう。そのためには、当局の手下にボゴボゴになるまで殴られるリスクも覚悟の上で。 もちろん、そうではないケースもありますが、田中さんの『北京陳情村』は、既製メディアやジャーナリストが築き上げてきた陳情(直訴)=共産党支配の暗部という幻想を見事にぶち破ってくれた作品だと思います。

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