書籍情報
- 出版社
- 新潮社
- 発売日
- 1974-02-26
- ページ数
- 400ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-13
- 9784101117027
- ISBN-10
- 4101117020
- 価格
- 693 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
平穏な日々の内に次第に瀰漫する倦怠と無力感。そこから脱け出ようとしながら、ふと呟かれた死という言葉の奇妙な熱っぽさの中で、集団自殺を企てる少年たち。その無動機の遊戯性に裏づけられた死を、冷徹かつ即物的手法で、詩的美に昇華した太宰賞受賞の表題作。他に『鉄橋』『少女架刑』など、しなやかなロマンティシズムとそれを突き破る堅固な現実との出会いに結実した佳品全6編。
レビュー
-
危険な文学
いくつかの小説集ですがどれも暗いです。死が一貫したテーマとしてあります。特にタイトルの小説は、No.1危険小説です。映画化したら社会現象になりそうで恐ろしい内容。だけど何か忘れられないというか、度々読み返してしまいます。羊文学の音楽と重なってしまうのはなぜか?
-
いろいろ気になった箇所があった。
木箱が燃え崩れて、私の体は、焼却炉の中に広がった。火の色は、華やかで美しかった。初めは単純であった炎の色が、私の体に火がつくと、にわかに多彩な紋様を描き始めた。脂肪が燃えるのか、まばゆい明るい黄味を帯びた炎が立ち、時々はじける音がして、その度に金粉のような小さな炎があたりに散った
-
初期の作品は表現がかたいようだ
昭和33年から昭和42年にかけて発表された短編6編を収録したもの。 「鉄橋」(昭和33年) 「少女架刑」(昭和34年) 「透明標本」(昭和36年) 「石の微笑」(昭和37年) 「星への旅」(昭和41年) 「白い道」(昭和42年) の6編である。「死」をテーマにした作品が多い。最初の「鉄橋」や表題作の「星への旅」は自殺がテーマとなっている。 「鉄橋」は死にそうもないプロボクサーが鉄橋で轢死する。自殺か事故か、その謎解きをするサスペンス仕立ての小説だ。 また「少女架刑」は、病死した少女が献体をし、自分の身体の部分部分がそれぞれ切り取られていく様子を、あたかも少女の魂が冷静に観察している。 「星への旅」は、若い少年少女たちが集団自殺へ向かっていく様子を、その仲間の一人の目を通して見つめていく。 吉村の作品は「漂流」「破船」「島抜け」「三陸海岸大津波」などのドキュメンタリー・タッチの作品を多く読んでいる。それらに比べるとここに収録されたものは、それ程面白いとは思えなかった。表現がくどく解りにくいと感じた。 流石に昭和中期の作品で「ガソリンカー」などというのが出てくる。電化される以前の鉄道気動車のことか。この辺でもつい最近まで「ディーゼルカー」なるものが走っていた。国鉄に勤める親を持った友人から聞いた。
-
5つ星のうち5.0 良
良品
-
命の確かさと儚さ
読みようによってはむごたらしい内容なのだが、淡々とした筆致は初期も晩年も変わらない。 著者の一貫した姿勢と根底にある「生と死」への思いが貫かれているそれぞれの短編である。 「少女架刑」と、奇妙につながる「透明標本」など、吉村作品を通して読むと腑に落ちることが多々ある。 昔は解剖を「腑分け」と言ったが、なるほど、若い少女の遺体を特段の感慨もなくそれぞれ標本として取り出し、あるいは医学生の実習に使わせる。それを「少女自身」が見ている。 「星への旅」は満ち足りてなお生きる目的を持てない少年少女の、あまりにも命を粗末にした内容と言えばそうなのだが、どの時代もそういう類の人はいる。 読む側が試される場面も数多いが、作品は50年以上も前に書かれたとは思えない、著者のぶれない視点の確かさが感じられて圧巻ですらある。
-
過ぎた静寂は一層深くなり星の数だけ無言の思いが聴こえてくる✨️
罪の意識なくただ駆けた。過ぎた静寂は一層深くなり星の数だけ無言の思いが聴こえてくる。雫を見失うほど昼間の雨音に満ち、細い流れが瑞々しく消えた。さよなら。意識は痙攣した。森閑とした和らぎの霧が体内に広がっていく。気づけば草の青さも炎のような枯葉さえ去っていた。星の光さえも。これが本当の静寂というものか。寂寥感がなぜか安らぎを生み崩れ去っていく。今日も無数に煌めいている。輝きを失った冷たい星がそこにあることを知らずに私たちは空を見上げている。自然の流れに抗えないほど濃い闇の中に、夜色残る瞬きが東の空に見えた。
-
この作品で直木賞??
吉村氏の初期短編小説類は、自身のご経験から「死」に焦点を当てた暗い作品が多いように感じますが、何か元気を貰おうという気持ちで読み始めると後悔します。
-
張りつめた神経、描写のこまやかさ。やっと読了です。
吉村先生の実質的なデビュー作ですので、ファンの方は必須の短編集です。先生の初期の短編集は、後半の歴史ものと違い、死を強く意識、というか、生と死がほとんど同居するようなぎりぎりの、しかし張りつめた緊張感を持った作品が多いです。この作品も、ものすごく敏感な感覚で、死の周りの微妙な雰囲気をきめ細かく描写されています。やはり、表題作の「星への旅」が一番すばらしく、若者の死への憧れ、それを、メルヘンチックにも思えるように美しい文章で描写されています。 先生の、あの崖(鵜の巣断崖)を持つ北の村への愛情は終生変わらなかったようで、津村節子先生の田野畑村への津波後の激励のコメントが3月7日の日経夕刊に掲載されていました。 「鉄橋」は好き嫌いが分かれると思いますが、汽車のシーンは鋭くとがった神経が張りつめたようで良く書けています。「石の微笑」は、悪に惹かれる女性たちの姿を描いて印象的。ちょっと時代がかってしまいました。「少女架刑」や「透明標本」はホルマリンの臭い満載です。 軽めの作品はなく、重い作品ばかりですので一気に読みきることができず、半年以上かけて読了しました。
関連する文学賞
- 太宰治賞 第2回(1966年) ・受賞