日本の文学賞

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留学 (新潮文庫)

新潮社文学賞

留学 (新潮文庫)

遠藤周作

フランス留学の経験を背景に、日本人が西欧文化とキリスト教に向き合う時の隔たりを描く小説。遠藤周作が生涯追究した、信仰と日本の精神風土のずれが物語の中心に置かれる。

留学信仰西欧と日本孤独

作品情報

異国で学ぶことは、知識を得るだけでなく、自分の内側の距離を知ることでもある。

『留学』は、遠藤周作のフランス体験と宗教的主題が結びついた作品である。異国に身を置く主人公の視線を通して、西欧への憧れと違和感、信仰の受け止め方、日本人としての孤独が描かれる。新潮文庫版で ISBN/ASIN とページ数を確認できる。

レビュー要約

  • 異文化体験を単なる成長物語にせず、信仰と自己認識の問題として掘り下げる点が評価されている。静かな語りの中に、遠藤作品らしい痛みが残る。

書籍情報

出版社
新潮社
発売日
1968-09-27
ページ数
320ページ
言語
日本語
サイズ
14.8 x 10.5 x 2 cm
ISBN-13
9784101123035
ISBN-10
4101123039
価格
737 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

時代を異にして留学した三人の日本人学生が、 ヨーロッパ文明の壁に挑みながらも精神的風土の絶対的相違によって挫折してゆく――。 十歳で洗礼を受け、後にカトリックの留学生としてフランスに暮らした作家が、その本質を模索する。 カトリック神学生の工藤、日本最初のヨーロッパ留学生である十七世紀の荒木トマス、仏文学者の田中の三人を、それぞれ主人公とした『ルーアンの夏』『留学生』『爾(なんじ)も、また』の三章から成る。 時代は違っても、三人の留学生の悩みは共通であり、それぞれにヨーロッパ文明の壁に挑んで懸命に生きるが、宗教や文化その他の精神風土の絶対的な相違によって空しく挫折してゆく姿を描く力作。 【目次】 第一章 ルーアンの夏 第二章 留学生 第三章 爾も、また 解説:村松剛 本書「解説」より 文化伝統というもののもつ意味を、ヨーロッパは――とりわけフランスは――いやでも考えさせる国である。(略) 遠藤はとりわけその彼我の文化伝統の相違に敏感なのだが、それにはいうまでもなく、彼がカトリックであるというそのことが、大きく作用している。フランス文学を学び、しかもカトリックである彼にとっては、フランスは第二の母国と思われたろう。だが彼が見たのは、予感していたのとはちがったフランスだった。 『留学生』の荒木トマスも『爾も、また』の田中も、彼らが訪問した国への愛情と違和感とのあいだに、身を裂かれるのである。 ――村松剛(評論家) 遠藤周作 (1923-1996) 東京生れ。幼年期を旧満州大連で過ごし、神戸に帰国後、11歳でカトリックの洗礼を受ける。慶応大学仏文科卒。フランス留学を経て、1955(昭和30)年「白い人」で芥川賞を受賞。一貫して日本の精神風土とキリスト教の問題を追究する一方、ユーモア作品、歴史小説も多数ある。主な作品は『海と毒薬』『沈黙』『イエスの生涯』『侍』『スキャンダル』等。1995(平成7)年、文化勲章受章。1996年、病没。

レビュー

  • グローバル化以前の留学とは何かを考えさせられました

    現在は技術の発展によって、海外旅行が一般化し、遠くの国にいてもインターネットを使って交流が可能です。しかし、そんな技術がなかった時代において、留学がどのようなものだったのか、考えさせられました。

  • 作者の研究の深さが伝わってくる。

    作者の深い洞察力・研究の深さをいやと言うほど分からせる内容。

  • どうしても手に入らないもの

    今まで読んだ中で一番好きな小説です。 最初に読んだ頃、私は大学生でした。 どんなに努力しても、人生で手に入らないものは必ずある。 そんなことを思い始めた年頃だったせいか 読み終わってから、ひどく泣けました。 生には限りがあり、限界もある。 それでも私たちはこの世に生を受け、 日々を生きている。 そのことを、ふと思い起こさせてくれる小説です。

  • 「留学」という経験について、本質を抉るような小説集

    「留学」をテーマとするいくつかの短編を集めたもの。今のように通信手段が発達しておらず、ヨーロッパに対しては圧倒的に経済的弱者であった日本からの留学。留学にまつわる優越感、挫折感、鬱陶しさなどがしっかりと書き込まれていてとても興味深く読んだ。

  • ちっちゃなプライドが生み出す苦悩

    メインテーマは、ヨーロッパ文化の前で挫折する留学者の苦悩である。 中でも、主人公のひとりである田中の心情が、読んでいて心に突き刺さる。 留学前の彼は、井の中の蛙で、自身の周りでだけ通用するちっちゃなプライドを持っていたのだと思う。それが、留学でフランスに来た途端、西洋の文化の壁に打ち負かされ、挫折感に悩みながら生活することになる。さらに、彼が持つ劣等感は、ライバルの後輩に対する嫉妬心を生み出し、また、他の日本人たちを避けるがゆえの孤独感をも生み出す。 このような嫉妬心や孤独感は多かれ少なかれ、留学者に限らず、多くの人が持ちうるものだと思う。この苦悩を取り払うための処方箋が本書に示されているわけではない。しかしそれでも、自分以外にも同様な悩みをもつ人がいるんだ、という救いにはなる。

  • けっこう好きなんです

    ヨーロッパに留学した日本人たちの屈折した想いをテーマにした三部作です。 遠藤氏の個人的な体験から来る心情らしきものもかなり感じられます。 確かに今となっては時代背景も社会事情も大きく異なっていて(西洋のどこにでも、24時間あれば行ける世の中になりました)、多少古臭くなっているような描写もあるかもしれませんが、西洋に留学をした経験のある人なら、今でもかなり共感できる作品集ではないかと思います。 特に三番目の“爾も、また”は、かなり深刻な話で、留学―というテーマを別にしても、不器用で世渡り下手なインテリの悲哀を扱った作品としても佳品であると言えるのではないでしょうか。 主人公・田中のように、西洋にあこがれつつも、自分が決して西洋人ではないことを西洋に来てはっきり認識させられるー、かと言って西洋に比べて劣った国である(彼はそう思い込んでいます)日本社会の中にどっぷり浸りきって生きていくことも出来ない人間、これはある意味で日本のインテリの一つの典型であり、経済的に西洋を追いこしてしまった今日においても決して消えてなくなったタイプの人間とは言えないと思います。 結局西洋文学者という己の生き方さえ根底から揺さぶられた田中はフランスの地で体を壊し、帰国を余儀なくされるのですが、物語は唐突と思えるほどそこで終わっています。 たしかに尻切れトンボの感は否めないのですが、そこに至るまでの田中の挫折感、疲労感、屈辱感の描写には嘘が無く、なんとなくこのへん、人間のネガティブな面を赤裸々に描いた、という点で、夏目漱石の“こころ”を思わせる異様な迫力があると思います。 そう言えば漱石も西洋と日本の葛藤に苦しんだ経験のある人でした。 決して気持のいい作品ではありませんが、興味のある方はぜひ読んでみてください。

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