新潮社文学賞 しんちょうしゃぶんがくしょう
第12回(1965年)
受賞者
5名場末のキャバレーで働く女、気弱な男、三流週刊誌の記者である語り手をめぐる関係を、抑えた筆致で描く短篇。出来事の派手さよりも、人間関係のずれと偶然の残酷さが静かに残る。
不意に起こる出来事が、曖昧な関係の均衡を静かに崩していく。
354ページ
偶然都会の孤独男女関係短篇小説
旧幕臣を率いて戦い、明治政府に降った榎本武揚を、時代の先駆者とも裏切者とも見える存在として描く歴史長篇。安部公房は史実の人物を通じて、忠誠、転向、近代化の不安を問う。
榎本武揚という維新の奇才を通して、歴史の勝者と敗者の境目が揺らぐ。
355ページ
歴史小説明治維新忠誠近代化
フランス留学の経験を背景に、日本人が西欧文化とキリスト教に向き合う時の隔たりを描く小説。遠藤周作が生涯追究した、信仰と日本の精神風土のずれが物語の中心に置かれる。
異国で学ぶことは、知識を得るだけでなく、自分の内側の距離を知ることでもある。
320ページ
留学信仰西欧と日本孤独
丸岡明の長篇小説で、静かな日常の陰影を通して、人間関係のゆらぎと内面の孤独を描く。大きな事件よりも、淡い記憶や影のように残る感情が作品の重心になっている。
影絵のように輪郭だけを残す感情が、静かな時間の中で浮かび上がる。
216ページ
記憶孤独日常の陰影心理小説
物語戦後文學史
戦後文学の出発点から展開を、同時代を生きた批評家の視点でたどる文学史。作家論、論争、時代状況を物語るように結び、戦後文学の精神を思想として読み直す。
戦後文学とは何だったのかを、同時代者の記憶と批評の言葉で問い直す。
230ページ
戦後文学文芸批評思想史同時代証言