日本の文学賞

← 受賞作品一覧に戻る
侍 (新潮文庫)

野間文芸賞

侍 (新潮文庫)

遠藤周作

藩主の命を受けた侍が、ローマ法王への親書を携えて太平洋を渡り、メキシコ、スペイン、ローマへ向かう歴史小説。宣教師ベラスコに導かれた長い旅の果て、キリシタン禁制と鎖国へ傾いた故国が待ち受け、政治と信仰の狭間で男の生が揺さぶられる。

信仰支倉常長慶長遣欧使節キリシタン禁制運命

作品情報

七年に及ぶ旅の果て、侍は信仰と権力の渦にのみ込まれた故国へ帰る。

『侍』は、慶長遣欧使節を想起させる旅を通じて、日本人とキリスト教、政治的使命と個人の信仰を描く遠藤周作の歴史小説。長谷倉六右衛門とベラスコ神父の対照的な生き方を軸に、世界へ向かった者が帰国後に直面する断絶を描き出す。遠藤が『沈黙』以後に追い続けた弱さと信仰の主題が、壮大な歴史の中で結晶している。

レビュー要約

  • 遠藤文学の後期代表作として、歴史の闇に消えた人物の生を通じて人生と信仰を問う重厚さが読みどころ。弱さと強さ、憐れみと信念が交差する構図が深い余韻を残す。

書籍情報

出版社
新潮社
発売日
1986-06-27
ページ数
512ページ
言語
日本語
サイズ
14.8 x 10.5 x 2 cm
ISBN-13
9784101123257
ISBN-10
410112325X
価格
1045 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

キリスト教文学の傑作『沈黙』から14年。 『イエスの生涯』『キリストの誕生』と書き続けた著者の後期代表作。 藩主の命によりローマ法王への親書を携えて、「侍」は海を渡った。野心的な宣教師ベラスコを案内人に、メキシコ、スペインと苦難の旅は続き、ローマでは、お役目達成のために受洗を迫られる。七年に及ぶ旅の果て、キリシタン禁制、鎖国となった故国へもどった「侍」を待っていたものは――。 政治の渦に巻きこまれ、歴史の闇に消えていった男の“生"を通して、人生と信仰の意味を問う。 著者の言葉 私は、そんな信念を守り通す強虫の生き方も書いてみたいと思ったのです。弱虫、つまり憐憫という感情に従う人間と、強虫、つまり自分で自分の運命を作りあげていくような人間、そんな二人を小説に書いてみたくなった。 では、その二人がどこで何をすれば小説になるのか? 『沈黙』は長崎で踏み絵を見たから書けましたが、今度はなかなかいい材料にぶつかりませんでした。ところが、仙台へ行った時、支倉常長(はせくらつねなが)の肖像画を見たのです。(略) 一方、常長についてローマへ行った宣教師のソテロは、日本に布教するためには何でもしてやろうという野心家でした。日本人を騙し、常長を騙した強虫です。彼は禁教令が敷かれた日本へわざわざ帰ってきて、捕まって処刑されます。 運命にただ従っていった弱虫の支倉常長と、自らの運命を作り上げていこうとした強虫の宣教師ソテロ。「あ、この二人なら、ずっと考えてきたテーマにぴったり合うんじゃないか」と思って、『侍』を書き始めたのです(注・『侍』では、それぞれの名前は長谷倉六右衛門とベラスコ神父)。(「波」2016年10月号) 本書「解説」より 本書はヨーロッパへの航海という単なる外面的な次元をこえて、さらに自伝的である。地球をめぐって旅をする自分に、つねにつきまとってくるように見える十字架を見て、(主人公)長谷倉の味わう不可解さと、強い反感さえも含む感情は、著者が若い時代の自分の中に見出すものと異質ではない。『侍』の中で、長谷倉がマドリッドで洗礼を受ける場面があるが、これは十一歳のとき遠藤自身が体験した洗礼の儀式を、不気味なまでに正確に再現したものである。長谷倉と同じく、遠藤もまた、みずからの意志でキリスト教を選んだのではなかった。 ――ヴァン・C・ゲッセル(カリフォルニア大学助教授) 遠藤周作 (1923-1996) 東京生まれ。幼年期を旧満州大連で過ごす。神戸に帰国後、12歳でカトリックの洗礼を受ける。慶応大学仏文科卒。フランス留学を経て1955年「白い人」で芥川賞を受賞。結核を患い何度も手術を受けながらも、旺盛な執筆活動を続けた。一貫して日本の精神風土とキリスト教の問題を追究する一方、ユーモア作品や歴史小説、戯曲、映画脚本、〈狐狸庵もの〉と称されるエッセイなど作品世界は多岐にわたる。『海と毒薬』(新潮社文学賞/毎日出版文化賞)『わたしが・棄てた・女』『沈黙』(谷崎潤一郎賞)『死海のほとり』『イエスの生涯』『キリストの誕生』(読売文学賞)『侍』(野間文芸賞)『女の一生』『スキャンダル』『深い河(ディープ・リバー)』(毎日芸術賞)『夫婦の一日』等。1995年には文化勲章を受章した。

レビュー

  • 外国での経験を通じて自己の信仰とアイデンティティを見つめ直す物語

    世の中の流れに翻弄される個人のどうしようもないやるせなさを描きつつ、個人の信仰とは何かをおしえてくれる素晴らしい一冊

  • 面白い

    とても気にいった。後半は少々やぼったい展開が否めないが、概ね面白かったと言ってよいだろう。ぜひ一読あれ。

  • 必読

    誠実で愚直な人間が報われない世界。会社生活でも同じことが起こる。いろいろと考えさせてくれる小説。

  • 遠藤の好作品

    外国との貿易を求めての侍達の旅。西回りでなく、東回りであったこと、驚きました。 帰国してみると切支丹禁制に変わっていて、処刑が待っていた。処刑場に向かう侍に、従者が言う。「これから先はあの方がお供いたします。」遠藤作品らしい作品。

  • 個人的には今一つ

    素晴らしい情景描写でした。ただ運命に翻弄されながら静かに受け入れるのが「侍」というものなのか…クライマックスがどうも受け入れ難かった。

  • 高いサービス

    本の状態が良く、お買い得でした。個人的に書き込みさえなければ古本で問題ないので、状態をしっかり開示してくれて、その通りの商品だととても助かります。

  • 壮大な魂の物語だと思いました

    江戸時代初期、仙台藩からメキシコ経由、スペイン、ローマまで行った侍たち。 仙台藩、宣教師の野心? 貿易も布教も何もなし得ず 帰国すると… 全てが無駄だったのか? 悲しいお話でした 同時に、壮大な魂のお話だとも思いました

  • 選んでよかった。

    書籍にこめる愛を感じる梱包、配送でした。 遠藤文学が好きで、どうしても手にしたかった「侍」単行本。 数ある中から選ばせていただいたのは、 遠藤さんの想いが引き寄せたのか、、と思うほど感激し涙がでました。 添えらたコメントにすっと支えていただけ、久しぶりに心がときめきました。 大切にします、ありがとうございました。

関連する文学賞