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娼婦の部屋・不意の出来事 (新潮文庫)

新潮社文学賞

娼婦の部屋・不意の出来事 (新潮文庫)

吉行淳之介

場末のキャバレーで働く女、気弱な男、三流週刊誌の記者である語り手をめぐる関係を、抑えた筆致で描く短篇。出来事の派手さよりも、人間関係のずれと偶然の残酷さが静かに残る。

偶然都会の孤独男女関係短篇小説

作品情報

不意に起こる出来事が、曖昧な関係の均衡を静かに崩していく。

『不意の出来事』は、吉行淳之介の短篇集『娼婦の部屋・不意の出来事』に収録される代表的短篇である。場末の人間関係を大きな事件として誇張せず、会話や沈黙の間にある温度差を通して、都市に生きる人々の孤独を描く。

レビュー要約

  • 人物の関係を淡々と描きながら、読後に苦みを残す構成が評価されている。派手な説明を避けることで、登場人物の弱さやずるさが自然に浮かぶ。

書籍情報

出版社
新潮社
発売日
1966-11-14
ページ数
354ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784101143026
ISBN-10
4101143021
価格
100 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

一娼婦の運命の変遷と、“私"の境遇の変化を照応させつつ描いて代表作とされる「娼婦の部屋」。他に洗練された筆致の多彩な作品集。

レビュー

  • 「娼婦の部屋」

    わたしが好きなのは表題作の「娼婦の部屋」です。 これに尽きます。 主人公の男から見たある娼婦の物語で、お互いに好きとか嫌いとかいうのは出てきません。しかし、ただ男と女の微妙な恋愛とも違いますし、心に欠落がある男と女の慰めあいとも違います。 どういう二人なのかという説明がうまくできないのですが、ここにはとても大きななにかがあって、心を離れません。 簡単に言ってしまえば、女の性(さが)みたいなものでしょうけれど、何度読んでも心に引っかかるし、何かどうしようもない強い気持ちが湧き上がってくるのです。 短い作品ですが、一瞬で人生をずばりと切り取られてしまったみたいな作品です。

  • カス文学

    活字になるなど信じられない。かくした虚無文学があるから、文芸は沈滞するばかりだ。 娼家に通う編集者兼大学生、その娼婦がとあるパトロンに身請けされその職業を辞めるという話。永井荷風先生に掛かれば、かのようの花柳界の艶話も、風雅にまとめられるが、下劣にしか描かれない。墨東綺譚と比較してみるがいい。

  • 好き、何となく

    吉行淳之介さんの作品、好きです、何となく。 濃密な文体。でも全部を書ききらない物足りなさ。みんながよく知っている「もの」を幻想的にとらえる視点。全体から漂うやるせなさ。それらがいろんな想像をかきたてる。そこが好きなのかなあ。 どの作品も、特別結論が出ているわけではない。だから、「え?それで何が言いたいの?」と言えなくもないんだけど、そのほうけたような空間が何となく好き。 あえて順位をつければ、私は「紫陽花」と「不意の出来事」により魅かれるかな。

  • 無機質な文体で人間心理をえぐる

    表題作の他、「青い花」、「紫陽花」など吉行氏の、わりと初期の作品11編が収められています。 睡眠薬自殺を図ろうとした妻を置き去りにして、子供のころ訪れていた湖畔の別荘地に逃げる男、街の全てが石膏色に見えてしまう男、高級料理店に場違いで入ってしまった学生の話などなど。半分幻想的で、半分はざらっとした現実を硬質な文章で書き上げていきます。 吉行氏の素晴らしさは、対象に感情移入することを極力避け、一歩離れて無機質な文体で、人間心理を深くえぐるところだと思いますが、この作品集でも、それは如何なく発揮されています。読後に考えさせられてしまう本。

  • 短編の宝石箱

    「鳥獣虫魚」という短編を読んで、何か胸が熱くなりました。渇いた心境の主人公と、似顔絵描きの女性との出会い。吉行さんの小説は無機的なイメージを抱いていたのですが、「鳥獣虫魚」では渇いた都会で心を通い合わせて行く男女の姿が、とても愛しく感じられる筆致で描かれていて、とても好きな小説です。男娼との哀しいやり取りを描いた「寝台の舟」も、沈滞した中に豊饒なイメージが広がっていて、印象深いです。

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