作品情報
異文化の家族儀礼を前に、自由を求めた女性の孤独と葛藤が浮かび上がります。
芥川賞受賞作「過越しの祭」と「遠来の客」を収める作品集です。アメリカで暮らす日本人女性の視点から、家族という制度と個人の自由の緊張を描きます。
書籍情報
- 出版社
- 新潮社
- 発売日
- 1991-02-01
- ページ数
- 168ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784101213118
- ISBN-10
- 4101213119
- 価格
- 200 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
第94回(昭和60年度下半期) 芥川賞受賞
レビュー
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本音炸裂の純文学
平文のディーテイルが小説として成立させている。強いもの言う女性の心理描写がおもしろい。
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思わず笑っちゃう場面も。
私自身もユダヤ人の方の家で過ぎ越しの祭りを祝った時に感じたことが書かれていたりして、思わずふっと笑ってしまったり、懐かしくなることもありました。 一人の日本人女性が、自由の国と憧れて行った地で経験した現実を、ユーモアも交えながら書いている本です。
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鮮やかな
本の帯に「国際結婚、障害児の誕生・・・闘い続ける女の本音」とあるのを見かけて、なんとなく手に取った一冊だった。私も障害児を育てる母親であるので、こういう説明文には自然と引き寄せられてしまう。芥川賞作家の書く「障害児の母」は、どんなふうだろうと、なかば興味本位に読み始めたのだが、あっという間に物語の修羅場つぐ修羅場にひきずりこまれ、作者の分身らしい主人公道子の気性の強さや、修羅場に飲み込まれて沈没しない絶妙のバランス感覚に魅せられていき、気になる部分を何度も読み返し、ふと気づいたら夜が明けていた。 短いが、壮絶な物語である。おそらくは重度の自閉症児と思われる息子のケン。自閉症児に勝るとも劣らない癇癪やこだわり性格を持つ夫のアル。夫婦の間にはどうにもならない異文化間ギャップまであり、摩擦や怒鳴りあいは日常茶飯事である。 自由に生きようとして日本を離れ、アメリカにきた道子が、思春期に入った自閉症の息子に髪をむしられ頭皮まで引き抜かれそうになり、理不尽な夫が絶えず投げてよこす癇癪の受け皿になり、嫁ぎ先のユダヤ文化に個の尊厳まで圧迫され苦しみながら、決して自分を見失わず、母語である関西弁で、強くやわらかく、そしてどこかおかしみさえ漂わせながら、物語っていく。すごい、というほかは無い。
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読みごたえある私小説
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逆境の中の快活さ
ユダヤ系アメリカ人と国際結婚をし、米国で暮らす日本人主婦の日常を切り取った二作品からなる作品集。著者の実体験に基づくのだろうか。 女性の自立を望み渡米したものの、二人の10代の息子のうち弟は、脳の障がいのため介助が必要であり、旦那は瞬間的に怒りを爆発させる癇癪持ちで理想からは程遠い生活だ。 「遠来の客」は、身体が大きくなって手に余るよる息子を遠い施設に預ける家族の道中と、その後が描かれている。一抹の寂しさを感じる主人公ら。出口の見えない辛さはあるものの、負けん気の強い主人公の関西弁が、深刻さを和らげる。理不尽に沸騰した旦那との言い争いは快活さすら感じる。 「過越しの祭」は、そんな一家の家族旅行の一コマ。13年振りに訪れたニューヨークで自由を満喫するはずが、夫の親戚筋の儀式に参加するハメに陥った主人公。散々に意地悪をされ、こんなはずではなかった渡米からの日々を振り返える。読み進めながら、主人公と共にムカっ腹が立つこと必定だろう。ラストは、痛快さすら感じる。 【芥川賞】
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ちょっと奥さん、聞いて下さいよ~
小説というより、主婦のオバサンの愚痴日記です。 作者が、そこら辺の普通の主婦よりは文章力があり、観察眼もあり、語彙も豊富であること。そして夫がユダヤ人で文化的宗教的価値観が全く違う上に、次男には脳障害があるということで、フツーの主婦よりは遥かに苦労を経験していること。 そういったポイントが重なり、『過越しの祭』という作品は、恐らくこれが主婦のグチ日記としては最高峰の一形態といえるでしょう。確かに凄まじい世界です。 主婦のオバサンが読めば、ある所では共感できたりある所では反発したりと、読み応えがあるかも?