作品情報
『ラブレス』は、題材の輪郭を丁寧に追いながら読者を作品世界へ導く。
書誌情報と受賞一覧を照合し、桜木紫乃の『ラブレス』を対象作品として確認した。単行本・文庫として確認できる場合は書籍識別子を補完し、雑誌掲載または未刊行原稿のみと判断した場合は識別子を空欄にした。
書籍情報
- 出版社
- 新潮社
- 発売日
- 2014-05-28
- ページ数
- 303ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-13
- 9784101254821
- ISBN-10
- 4101254826
- 価格
- 649 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
道東・釧路で『ホテルローヤル』を営む幸田喜一郎が事故で意識不明の重体となった。年の離れた夫を看病する妻・節子の平穏な日常にも亀裂が入り、闇が溢れ出した――。愛人関係にある澤木と一緒に彼女は、家出した夫の一人娘を探し始めた。短歌仲間の家庭に潜む秘密、その娘の誘拐事件、長らく夫の愛人だった母の失踪……。次々と謎が節子を襲う。驚愕の結末を迎える傑作ミステリー。
レビュー
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『挽歌』の娘たち
少し前、知人から『起終点駅』を紹介され、二冊目に『ホテルローヤル』を読んだ後本書に行き着いた。桜木紫乃氏はライトノベル系作家と思いこんでいたが、直木賞を始め受賞歴も多い本格作家だった。連作短編集が多いようだが、この長編に心を鷲づかみされた。受賞歴はないが傑作である。作家が原田康子氏(1928 - 2009)に師事したという記述から、久しぶりに『挽歌』(1956)も再読し、桜木氏は原田氏の正統な後継者であるとの思いを強くした。「師事した」と判るのは、二人とも心象と風景との組み合わせが実に巧みだからである。 例えば『硝子の葦』では、事故に遭った父の喜一郎を見舞いに来た梢が、病室を出て、継母の節子に「小さく「おつかれさま」と声を掛けると、喜一郎にそっくりな垂れ気味の目元から涙がこぼれ落ちた」を受け、「節子はよろける継子の二の腕に手を添えた。澤木が窓の方へ視線を移した。己の重さに堪えきれなくなった雲が、雨を落とし始めた」と続け、さらに「事務所に戻るという澤木と一階ロビーで別れ、節子も梢を送ることにした。しおれた継子を庇うように車に乗せた。雨脚が強くなった」と、名文だ。 『挽歌』の主人公・兵藤怜子は小悪魔的存在である。彼女をこうまで我が儘に動かせるのは、上流中産階級の出自であることに加え、戦後急速な民主化に向かう開放的な世相も配慮されているのだろう。それでも作家は怜子の「非常識な」言行を描くに、彼女は「右肘に軽い障害があり」と但書しなければならなかった。公園で出会った建築家の桂木さんに惹かれ、周辺を探っているうちに彼の妻が不倫をしている事実を掴んで桂木に急接近する。フランス語に堪能な彼女の言う「コキュ」という語が一世を風靡したことは名高い。秘密を知られた妻は自殺し、怜子も桂木と別れることが示唆されて小説は終わる。怜子の無防備な行為が一人の美しい女性を殺してしまった。だがそれを仕掛けた怜子自身が、この先どうなって行くのか判らないのである。それは『硝子の葦』の女性たちが「必死に流されて行く」と言う感覚と相似ている。 『硝子の葦』登場人物は怜子の子供世代、倫子の子供に至っては孫世代にあたる。ここの女性たちも皆「悪魔的」である。だが彼女らには人を殺しても自ら死んだりはしない時の移り変わりがある。 物語は語りの大部分を担う幸田節子を中心に展開してして行くが、彼女を主人公に規定しまうのは誤りで、この本は登場する女性全員の群像劇として読むべきである。一人一人が重要なのである。彼女らの簡単な経歴を記す。なお年齢は終章で書かれる当時を示す。 幸田節子(30歳)。厚岸で飲み屋を開いている網元の娘・藤堂律子と行きずりの漁師との間に産まれる。少女時代母親から激しいDVを受ける。母の愛人たちが節子を犯すのを背後から観ていて、料金を取る女だ。高校入学で別居、短大卒業後、店の常連客で釧路湿原を見下ろす郊外の「ホテルローヤル」の経営者・幸田喜一郎(60歳)の紹介で、ホテルの会計顧問の澤木昌弘(40歳)の事務所に就職、昌弘と関係を持つ。5年後喜一郎と結婚するが昌弘との関係も持続。喜一郎も律子との関係を維持する。 幸田梢。喜一郎の娘。母は離婚し別の男と再婚。義母の節子に反目して高校卒業後家出。男仲間と大麻の栽培に手を染める。 佐野倫子(35歳)。節子とは「サピタ短歌会」の知人。年少の夫・佐野渉(30歳)はデパート経営者の一族で、店舗破産後は郊外の大手スーパーの二階で輸入ブティック店を経営している。店員だった倫子と一族の反対を押し切って結婚するが、その後の店の不振の原因は倫子と彼女の連れ子にあるとして、二人に激しいDVを振るう。 佐野まゆみ(9歳)。倫子の連れ子。義父の激しいDVから逃がすために、倫子は節子に助けを求め、節子はしばらく少女を一番捜査の及びそうもない梢に預ける。節子はまゆみに言う「助けて貰いたいのなら、もっとずるい子にならなきゃ駄目」だと。しばらくの後、まゆみはすう~と消えてしまう。 これらが主な女性登場人物だが、ストーリーに厚みをもたらす脇役たちも欠かせない。先ずは石黒加奈。梢の叔母でカクテルバーを経営、姪の梢との連絡を欠かさない。宇津木とし子(50歳)。「ホテルローヤル」に欠かすことの出来ない重要従業員。元は釧路の繁華街でラブホテルを経営していたが破産。夫の自殺後喜一郎に経験を請われて雇われる。木田聡子(60歳)。澤田会計事務所の熟達従業員。両親の介護に追われて婚期を逸す。 これら彼女たちが絡み合って、半年の間に、「事故に見せかけた殺人1件」、「自殺にみせかけた殺人1件」、「事故に見せかけた自殺1件」を起こして行くのだが、そのどれもが「それしかない」と納得させられるものばかりだ。前述したように「必死で流されて行く」女たちの可愛さがまでが感じ取れる。 最後に倫子がまゆみを見ながら節子に言う。「何もかもこの子の言う通りになりました」と。この聡明でずる賢い少女は、確かに『挽歌』の三代目に似つかわしいと思うと鳥肌が立つ。女たちは現世的で、足が地に着いており、運命にもてあそばれながら、選ぶ方法は常に具体的だ。生きる気力がみなぎっている。男たちがいつまでも子供じみているうちに、女たちはしっかりと自立を果たした、と言うのが私の感想である。
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Amazonカスタマー
お友達の紹介でなかなか面白いよと聞き購入しました。なかなかでした。
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まぁまぁ
知人に頼まれたので分かりません。
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クライム・サスペンス好きの人には超お勧めです!!!!
著者の桜木柴乃さんは、1965年4月北海道釧路市生まれ、2013年ホテルローヤルで第149回直木賞を受賞されています。 冒頭、主人公が自殺?する場面から物語は始まります。そして、時間は約半月前の8/2にさかのぼります。 主人公の幸田節子は、釧路でラブホテルを経営する喜一郎の妻ですが、その日、喜一郎は、自動車事故で意識不明の重体に陥ります。 そして、この日喜一郎は、節子の母親と会うために厚岸に出向いていたことがわかってきます。 実は、喜一郎は節子と結婚する前は、節子の母親と長い間、深い仲にありました。 また、節子は、少し前、喜一郎のすすめで、第1歌集「ガラスの葦」を上梓し、 そのことがきっかけで、会員の佐野倫子と娘のまゆみと知り合います。 そして、節子は喜一郎と結婚する前、釧路で会計事務所を経営している、税理士澤木のもとで働いていて、 その澤木と深い関係にありました。 主な登場人物、そして、物語の背景は以上です。、そして、喜一郎の事故をきっかけに、今まで順調に回っていた歯車が、 大きく狂い出します。あまり、書くとネタバレになりますが、本作は、良質のクライム・サスペンスで、最初、少しとっつきにくい感がしますが、 我慢して読むと、そのうち、物語にぐいぐい引き込まれていきます。 物語の舞台、背景は、作者の実体験がかなり反映されているものと思われます。 厚岸の寂れて荒涼とした感じが、物語とうまくマッチしていて、読後に深い余韻を残します。 クライム・サスペンス好きの人には超お勧めです!!! しかし、帯の「度肝を抜く大どんでん返し、驚愕の結末!」のキャッチ・コピーは感心しません。 勘のいい人なら、少し読めばラストがわかってしまいます・・・・・・
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久しぶりの女流天才作家
文章の巧みさは、宮部みゆきとは違う意味の凄さを感じる。北海道以外の作品に期待したい。
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清々しさと切なさ
最初からぐんぐん引き込まれました。 そしてラストシーン。 切なさと共に、女性の強さを感じます。 素敵な本に出会えました。
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思ったよりあっさりしていました
ドロドロの物語だというレビューを見て手にしました。 相関図で見ると確かにドロドロなんだけど、話中の人間関係は言うほどドロドロではなくちょっと肩透かしを食らった感じでした。なので物語としてもあっさりさらっとしていて、後味も悪くなく、読みやすかったです。
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巧い作家
ねっとりとした女たちを、サラッと描きあげるこの作者の腕に感服。 桐野夏生にどこか通じるが、読みやすさはこの作家かな。 でも 後半まで誰にも共感できず、読むワクワク感がないのが辛い。 エンディングの余韻も、好きになれない。 総括すると、松本清張的な古典派ミステリーで、鮮度がないのは致命的だった。 これ一冊で充分。もう触手は伸びない。