作品情報
平林たい子文学賞で選ばれた石原慎太郎の『生還』。
『生還』は石原慎太郎による作品で、平林たい子文学賞の1988年回で選ばれた。受賞作として、作者の関心や表現の特徴を伝える一作である。 新潮社の刊行物として読者に届けられた。
書籍情報
- 出版社
- 新潮社
- 発売日
- 1988-09-01
- ページ数
- 245ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784103015055
- ISBN-10
- 4103015055
- 価格
- 138 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
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レビュー
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死を目の前に人はどう生きるのか
表題作である、生還が面白い。 末期癌で余命幾許の主人公が療養をしながら死と向き合っていく。一人称で書かれた描写が非常に面白く、ここまで生きている人間が生と死の瀬戸際を描けるのかと思いました。
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生き返ることは幸せなのか…
石原慎太郎氏の「天才」を読んだあと、もっと彼の作品を読んでみたいと思い、この作品を手に取った。 ある40代の男が末期癌の宣告を受け、治療法として、ある島のマンションに一人籠り生活をすることになる。仕事を片付け、家族と別れ、生きる望みのない生活を送ることになる。ところが、その治療法が功を奏し、男は生還する。一度捨てた仕事、家族を取り戻すことになるはずが、仕事はともかくとして、家族には受け入れてもらうことが難しい。もう生きる望みがないものと別れを決意した妻は、様々な相談を持ち掛けていた夫の友人に思いを寄せるようになっていた。再婚を考えていた矢先に、夫が生きて帰ってくる。 もがき苦しんだ末に生還を果たしたものの、その先に待っていたのは喜びではなく、絶望だったという話。この構図は、実は戦争の時の話に酷似している。戦争に出兵するということは生きて帰ってこられるかどうかはわからない。つまり、出兵とは死別を意味することであり、つらい思いをするのならば、いっそのこと新しい生活に希望を見出す方がいいのかもしれない、と残された家族は思う。別れを決意する男も、自分の死後、いつまでも自分のことを引きづって待つよりも、新たな幸せをつかんでほしいと願うのかもしれない。生きて帰るという保証がなければ。 この作品は昭和63年に執筆されたものだが、癌という不治の病と戦争という絶望の淵を重ね合わせて、その死の淵から帰ってきたもののその結果が決して喜ばしい状況にあるかと言えない、その複雑さを描いたものである。と考える。
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奇妙な佳作
フィクションである。製薬会社の社長をしている40代後半の男の、ですます調での自分語りの形式をとっている。1987年8月『新潮』に掲載された中編で、それまで政治家として知られた石原の、作家としての復活作とされ、不遇な文学者に与えられる平林たい子文学賞を受賞した。 男は体の異変を感じ、医者から、末期の胃癌だと診断され、一時は抗がん剤治療を受けるが、田沼という獣医の勧めもあり、田沼が開発したがん治療薬を飲みながら、妻子とも別れて、海辺の家に一人とじこもり、三年半、遂にがんは完治してしまう。だが家へ帰ると、妻は男の友人の川野と結婚したいと言いだす。しかし川野は、男が死んでしまうという思いから妻とできたので、離婚は成立するが、川野は結婚を拒否する。男は、何か自分が自然の摂理を犯してしまったように思う。 佐伯彰一、竹西寛子、河野多恵子、奥野健男らが絶賛しての受賞だったが、とにかく奇妙な作品だ。石原はその後、弟裕次郎を描いた『弟』がベストセラーになるが、こちらは売れた様子もない。人はこんなおとぎ話は、さほど興味がないのだろうか。1970年代に書かれた二つの短編を併録。
関連する文学賞
- 平林たい子文学賞 第16回(1988年) ・受賞