作品情報
壊れた世界を、それでも旅は進んでいく。
新潮社刊の小説。マフィアの死と残されたヒョーの旅を通して、世界の壊れ方とやさしさを同時に見せる。
書籍情報
- 出版社
- 新潮社
- 発売日
- 2022-02-18
- ページ数
- 192ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 13.4 x 1.6 x 19.5 cm
- ISBN-13
- 9784103398738
- ISBN-10
- 4103398736
- 価格
- 1980 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
「字が読めるのが、そんなに重要なわけ? 世界は文字に書けないことでいっぱいなんじゃないのか?」 アザラシのヒョーはたったひとり、世界を漂流する。 唯一無二の奇才が放つ、不条理で不可思議、そして深々と胸に突き刺さる、最新長編。 猫のまたぐらよりも暑い夏の日の午後、ヒョウアザラシのヒョーの飼い主、マフィアのチェレンコフが銃殺された。ひとりのこされたヒョーは、チェレンコフの亡霊に促され、アザラシ用ゴルフカートで、荒廃した町へと繰り出す。 汚染された土地、プラスチックの雨、奇妙な人々、破壊された次の地球、そして海底の町――。 ふくざつな世界の大きなかなしみをめぐる、比類なき物語。
1974年2月生まれ。山形大学人文学部卒業。福島県在住。2015年、『レプリカたちの夜』で新潮ミステリー大賞受賞。他の著書に『ざんねんなスパイ』『動物たちのまーまー』がある。
レビュー
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ドタバタ動物珍道劇かと思いきや……
※オチについて触れています。未読の方はご注意ください。 ドヤ顔アザラシが描かれた可愛い表紙、「猫のまたぐらよりも暑い夏の日の午後」という書き出し、ギャグ漫画みたいなあらすじ。なるほどドタバタ動物珍道ファンタジーね、と思って読んだらどっこい超絶ダイハードディストピアで面食らった。 動物好きやペットと暮らしてる人が読むと結構なダメージ受けるんじゃなかろうか。カオスな設定とコントじみた会話劇が麻酔薬の役割を果たしているので「鬱小説」ではないけど、所謂「ハートフルボッコ」モノではあると思います。 私は冒頭の銃撃戦だけで号泣した。幸せな誕生パーティーからの皆殺しって辛すぎるよ。 ストーリーは始終陰鬱で、登場する人間はどいつもこいつも悪辣欲張りセット。こいつらが「普通の人」扱いで、ヒョーにゴルフカートのキーをドッキリプレゼントしちゃうゾ☆と考えてたチェレンコフ達が「極悪人」カテゴリにいる世界おぞましくない?(チェレンコフも相当やばい男だけどさ) 合間に入るサブカル消費や環境汚染への問題提起めいたパートは説教臭く感じられてちょっと怠かったけど、これ現実に起こっている事なんですよね。 アザラシのフラットな視点から炙り出される人間社会の「矛盾」と「綺麗事」のあくどさにゾワリ。 基本暗いんだけど、唯一の救いはアザラシのヒョーが可愛くしたたかだった事。 相手の身体をあむあむ噛んだり、コインランドリーの中に入って顔を覗かせたりする姿は想像するだけで大変キュート。金と欲に目の眩んだ悪意たっぷりな人間達にも歯向かってくれます。まぁだからこそ余計辛いんだけど……図太かったヒョーがどんどん疲弊し、破壊し尽された自然を前に自信喪失していくのが切なかった。可愛いは正義が通用しない世界。 でも、人間の悪徳に負けず、最後まで無垢性を貫き通したのは凄い。本人は「マフィアの血が流れている」「何の価値もない」と自分をネガるけど、狂った社会に反発したのも、無残に死にゆく動物や人間を想って激怒したのも作中ではヒョーただ一頭。ドブの様な世界における「優しさ」というのは、なにものにも替え難い「価値」では? それゆえに、給仕にも歌手にも絵師にもなれず、第二の地球も壊し、どこにも行けなくなってしまったのが何ともやるせない。 面白かったんですけど、個人的にラストだけどうにも納得いきませんでした。 あんだけ苦労してこのオチて……! ヒョーの顛末は「解釈は皆さんにお任せ」ではなく、最後までちゃんと書ききってほしかった……!! 海底の町の話は投げっぱなしの様に放置されてしまったし、直前のカオス過ぎる膨張描写も理解が追い付かず。アザラシの歌が一つのキーワードなのに、歌うシーンがやたら少なく、結局チェレンコフにも歌わず仕舞いで、やや無理矢理感のあるバッドエンドなのが腑に落ちない。 まぁ不条理モノだし、重い題材を扱っているがゆえ、軽率なハッピーエンドには出来なかったんだとは思う……でも救いがあってほしかったね! せめてチェレンコフには歌聴かせて終わろうや。後悔に苛まれ、顔をくしゃくしゃにして泣くアザラシ同様に、読者の私も号泣した。 かなりぼかされてるけど、この話は「わたし」が見聞きしたヒョーの噂だったのかな? 消息不明やチェレンコフの台詞を鑑みると、あの後ヒョーが海に入ったってのは想像つく。チェレンコフに促されて外へ出た時同様に、花の咲く海底の町に向かったんでしょう。 想像しかできなくてモヤモヤするが、その町で残りのアザラシ生を少しでも幸福に過ごせていたら……チェレンコフの亡霊と再会して一緒に暮らせていれば……と願ってしまう。キャラの幸せをここまで願ったの初だよ。こういうの込みであのオチにしたんだとしたら、一條次郎恐ろしいやっちゃで。 個人的・心に刺さって抜けない本&思ってたんと違う本&嗚咽するほど泣ける哀しい本の三冠を無事獲得しました。 退廃的世界観やブラックユーモア好きにオススメしたい作品です。ヒョーは絶対海底の町でチェレンコフと再会してるし、幸せになってるね。
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なんてかなしいの!
こんな世界になってしまったら、人間も動物も地球も爆発するしかないんだろうな。 読みはじめから、アザラシのヒョーがかなしく泣いてる姿が、思い浮かんでつらかった。 とにかくかなしい物語でした。 今ごろ、ヒョーが、青い海の絵を描いていてくれたら、いいな。
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楽しくも切ない
非現実感が否めないが、コミカルで切ない。 印象に残る一冊。
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