作品情報
都市伝説の「カゲロボ」は、追い詰められた人の罪と赦しを静かに照らす。
『カゲロボ』は、学校や家庭、会社に潜む問題を監視する存在の噂を通じて、人が誰にも言えない弱さや後ろめたさを抱えて生きる姿を描く。各短編は危機のただ中にある人物をめぐり、告発ではなく、共に怒り、見届ける存在への願いとして読ませる。
レビュー要約
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生活の手触りを丁寧に描きながら、いじめや虐待といった重い問題へ自然に目を向けさせる点が評価されている。やさしさと痛みが同時に残る読後感が特徴。
書籍情報
- 出版社
- 新潮社
- 発売日
- 2019-03-22
- ページ数
- 256ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 13.7 x 2.5 x 19.7 cm
- ISBN-13
- 9784103524311
- ISBN-10
- 4103524316
- 価格
- 1540 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
今日も、誰かがささやく。「あいつがカゲロボらしいよ――」。いつも、誰かに見られている……。最初は他愛のない都市伝説の筈だった。しかし、イジメに遭う中学生、周囲から認知症を疑われる老人、ホスピスに入った患者、殺人を犯そうとする中年女性など、人生の危機に面した彼らの前に、突然現れた「それ」が語ったことは。いま最注目の作家が描いた、救いをめぐる傑作。
レビュー
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再読したくなる読後感
いつもつるんでいた友だちグループでの楽しかった思い出や、いじめっ子、いじめられっ子、噂話や陰口。子どもの頃によくあった幼稚さ故の残酷な言動は大人になった今も心の隅にあり続ける棘のような記憶。大人になった登場人物たちそれぞれの棘は、時や場所が変わってもあり続けどこかでこうしてつながっているんだな、、心に染みる短編集というカタチをとった大作ドラマのよう。再読したくなる読後感。
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深刻な「現代」の話
そんなとき、突然、「なに見ているのよッ」と声をかけられたのだった。チカダには、不機嫌そうな顔でにらんでいるその女子が、生々しく思えた。ようやく生きている者に出会えたと思った。しかし、それでもまだ本物かどうか確信を持てなかった。オレをだまそうとそうとしているのではないか。やっぱりすべては、映画のようにスクリーンに映った幻のようなものではないか。チカダは、そのまやかしのスクリーンを切り裂いて、その向こうにある本当の世界を見たかったのだ。切りつけるというより、目の前にあるホットケーキのような太股に線を引くようにカッターナイフを走らせただけだった。(197p) 今朝、14歳の少年が小さな女の子をカッターで切りつけたというニュースを見た。「誰でもいいから殺すつもりだった」と言っているらしい。この「あせ」という短編とのつながりは一切ない。けど、この近未来を描いているような不思議な短編集は、今朝のニュースを見たあと「つながっている」と思った。 読む前は、リード文を読んで近未来の監視国家を描いた小説かと予想していたが、違っていた。近未来ではない、もっと広く、そして深刻な「現代」の「傷ついた人たち」を描いていた。 全ての短編に通じているのは、何故か日常の中に変なロボットが存在している「らしい」ということが描かれていることだけだ。それは、大抵は一つの回答のない問題を解くための「1本の補助線」である。いじめにしても、社会福祉にしても、運命にしても、それはいつもそれ「らしい」けど、よくわからないものだ。 カッターの少年のホントの「心」はわからない。けれども、チカダのようなお父さんが居れば良いな、と思った。 2019年11月14日読了
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その他大勢への愛
AIを軸にした連作短編集です。 SFというよりも、十数年後には手が届きそうな近未来のストーリーだと思いました。 読み始めたときの印象は、以前の木皿作品に比べれば、シナリオらしさがなくなっていて、 「本格的に小説の世界に行っちゃったのかな」と、少しさみしく思いました。 短編『あし』では、残酷な描写についていけず、『ゆび』では、これ以上、読むのは やめようとすら思いました。 しかし、最終話の『きず』で、この本全体のテーマのようなものが見えたとき、 最後まで読んでよかったと、しみじみ思いました。 木皿さんはきっと、その他大勢のような目立たない人生や、道を踏み外した人に、 光を当てたかったのでしょう。 第一話の『はだ』では、主人公に名前すら認識されていなかった女の子が、 最終話の『きず』では主人公となり、影のように生きてきたその苦悩が浮き彫りになります。 ネタばれするので内容は書けませんが、彼女の結末に、涙せずにはいられませんでした。 団塊ジュニアの自分と、重なる部分がありました。とにかく子供の数が多くて、 よほど目立ったことをしないと、先生にも親戚にも名前を覚えてもらえず、 その他大勢として過ごすしかなかった幼少時代。その頃の心の痛みを埋めてくれるような 結末でした。 世代ごとに、また違った感想を持つ作品だと思いますが、いくつかある短編のどれかに きっと、救われるはずです。
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見守ってくれるもの
木皿さんの作品にずうっと長いこと慰められたり励ましてもらっていた気がします。 ドラマであったり、エッセイであったり、小説であったり・・・。 カゲロボは可愛らしいイラストが描かれた本で、今までの本とは感じが違う。 しかし中身が可愛らしいお話なのかというとそうではなく、読み進める間、いつもの木皿さんとは違うなと思った。 だけども最後まで読み通して、それぞれの短編が少しずつ繋がってきて、最後の“きず”というタイトルの作品に思わず泣きました。 見守ってくれるもの、きっと誰にもそれは存在しているのだ。 やはりこの作品にも木皿さんらしい人への想いと励ましが詰まっていました。
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面白かった
木皿泉さんの作品を続けて読みたくて購入しました。カゲロボってなかなかユニークな発想で面白かったです。堅苦しくなく、優しい柔らかい文章が木皿泉さんのイメージで読みやすいです。
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再読させる力を持ったお話
木皿泉さんの小説を読むのは三冊目です。 私の個人的な都合で、前の二冊のように一気に読むことができず、九つの物語のうち、三つを読んでから、一か月以上手をつけられませんでした。 やっと読む時間ができて、最初から読み返せばいいものを四つ目のお話から読み続けたわけです。 七つ目のお話に出てきた猫はどこかで読んだような? 八つ目のお話の主人公の名前に聞き覚えがあるぞ。 最後のお話は最初のお話と繋がっている! そう思ったら、読み返さずにはいられませんでした。そして、また七つ目から最後のお話へと、不思議な旅をさせてもらいました。 木皿さんの『すいか』を観て、脚本を読んだファンですから、小説の中にも、登場人物が放つ珠玉の一言を期待している自分がいます。 この一冊の中にも、それは散りばめられていました。 『すいか』を観ていた夏を忘れないように、お盆の三日間、冷房の効いた部屋に横になって『カゲロボ』を読んだ夏をずっと記憶しているでしょう。僕の中の記憶データが消えない限り。
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木皿泉なのにブラック!?でも心に響く
心に響くあったかい作品の多い木皿泉さんにしては珍しいダークサイドな作品でしたが、読み進めていくと、さすがだなと思う心に響く内容でした。
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切ない。温かい。
切ない。温かい。 知らない間に人々の中で生活しているAI(ロボット)に救われる人たち(子供が多い)の短編連作。 救われるといっても、心温まるいい話ではなく、他人には秘密にしておきたい心の奥の闇や傷を、表面にさらして本当の自分と出会うような話。 SFとかファンタジーの要素があるが、心の描写は真実を描いてるなあと思う。 ふっと自分の心の奥も覗いて、昔の傷ついた自分を撫でたくなってしまうような話でした。
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