作品情報
「あたしって、何、」真っ赤になった両脚をティッシュで拭きながら、涙が、言葉があふれ出して止められない。
第57回新潮新人賞受賞作。選考委員の上田岳弘、金原ひとみ、又吉直樹らが絶賛した18歳のデビュー作。香港で生まれ日本語しか話せない星瑤が、国籍・言語・家族・恋という揺らぎを読点でつながれていく独特の文体で描く。2026年3月25日に新潮社より四六判変型ハードカバー96ページで刊行。電子書籍版も同日配信。
レビュー要約
-
選考委員の金原ひとみは「句点で閉じていないブツ切れにも見える文章だが、主人公の混乱や、閉じられない思いが積み重なっていく様がこの書き方で余すことなく表されている。親友との間に起こる混乱、気だるさ、明け方の徘徊、若者の逡巡とセンチメンタリズムが躍動感と共に描かれていて、高校生の物語としては満点。制御を心得ているところにも天性の才能を感じた」と高く評価した。
-
書評(久栖博季、作家)は「世界の狭間で痛みを抱えながら、言葉を重ねていった先に辿り着くのはきっととても広々とした明るい場所であると私は信じている」と評し、独自の文体とユーモアを交えた軽やかな語りを評価した。
書籍情報
- 出版社
- 新潮社
- 発売日
- 2026-03-25
- ページ数
- 96ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 18 x 12 x 2 cm
- ISBN-13
- 9784103566618
- ISBN-10
- 4103566612
- 価格
- 1760 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品
あたしは香港人?中国人?日本人? 18歳、鮮烈な新潮新人賞デビュー作。 「あたしって、何、」真っ赤になった両脚をティッシュで拭きながら、涙が、言葉があふれ出して止められない――。国籍とは何か? 母語とは何か? 性的指向とは何か? 香港で生まれ、移民の養父母のもと日本で育った女子高生、星瑤はアイデンティティの揺らぎを全力で駆け抜ける。絶望よりも速く。新世代の才能登場!
レビュー
-
はざまで揺れる感情のリアル
主人公は香港生まれの高校一年生。 日本の養父母の元で生きる彼女が、 自身のアイデンティティに思い悩みながら、 ままならない日々を懸命に駆ける姿を活写した物語です。 葛藤のあまり頼りなく揺れ動く心象風景が、 ときにくどく感じられる語り口で 見事に表現されていましたね。 遠き香港の統制強化が生み出す問題に戸惑い、 近き友との間に生じた事態に 思いあぐねる少女が、紛れもなく そこに実在するように感じられましたよ。 なんたるリアリティ! 末恐ろしい作家さんだと言うほかありません。 刹那的に今を生きれば未来を生き抜けない。 だから多くの人が毎朝、奴隷船のような 満員電車にぎゅうぎゅう詰めで運ばれてゆく というくだりは本質を突いていて、妙に刺さりました。 科学技術が発展しようが、 いつになっても平和を作り出せない 先人たちへの皮肉はさらにグサッときた! (対象年齢は13歳半以上かな?)
関連する文学賞
- 新潮新人賞 第57回(2025年) ・受賞