聖なる春
『聖なる春』は、久世 光彦の受賞作として注目された作品。題名が示す中心的なイメージを軸に、人物や出来事の変化を追う。
作品情報
『聖なる春』は、受賞時の時代感覚と作者の関心が交わる作品。
『聖なる春』は、久世 光彦の作品として文学賞で評価された。受賞対象となった魅力は、題材そのものだけでなく、人物や場面を通して読者に余韻を残す構成にある。
レビュー要約
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題材の切り取り方と語り口に関心が集まる作品。読者には、人物の置かれた状況や作品が描く時代性を読み解く面白さがある。
書籍情報
- 出版社
- 新潮社
- 発売日
- 1996-10-01
- ページ数
- 168ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784104101023
- ISBN-10
- 4104101028
- 価格
- 2420 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
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レビュー
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すべてが「死」に覆われた詩小説
文章が美しい。端正である。例えば、 ・・人は誰も、長い人生の中で、黙って一つ一つの石を積み上げ、 それぞれの悲しみの城を造っていく。・・ とか。さすがに芸術選奨文部大臣賞受賞作。 「聖なる春」とはウィーン分離派(クリムトを中核とする若手芸術家集団)の 機関紙の名前である。待てども来ぬ春を象徴している。理想や夢は簡単には手に 入らないということだろうか。 登場人物は4人(日本人)と1匹 〇 主人公 クリムトのニセ絵の製作者、戦火で顔にあざ 〇 キキ 画学生、主人公の恋人 〇 フランソワ 画商、むくつけき男 〇 キキの母親 狂った老婆 〇 フランソワーズ フランソワの飼っている雌猫 とりたてて筋はない。全体にアートっぽい雰囲気と、「同潤会アパート」とか 「土蔵暮らし」とか江戸川乱歩的昭和感覚、それとどうしようもなく昏い「死」の 香りに満ちた作品である。 聖なる春がいつかやってくるのを待ち焦がれながら、そのうちみんなが死の 世界に誘われるのを、静謐な文章で書いている。久世の感性や文章が好きじゃ ないと退屈するかも。クリムトのニセモノばかり書いていた主人公が最後に キキの(ホンモノの)絵を描く。同時にキキも主人公のあざのない顔を描く。 このふたりにやっと「聖なる春」が巡ってきたのだろうか。それともこれは 死の直前の妄想なのか。