日本の文学賞

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ポーの話

三島由紀夫賞

ポーの話

いしいしんじ

泥の川と橋の町に生まれた少年ポーが、盗人や不思議な存在との出会いを通して世界を知っていく神話的な長篇小説です。

寓話少年の成長再生

作品情報

ポーの話は、受賞作として読まれるにふさわしい特色を持つ作品です。

泥の川と橋の町に生まれた少年ポーが、盗人や不思議な存在との出会いを通して世界を知っていく神話的な長篇小説です。

レビュー要約

  • 作品の素材と文体の個性が評価され、読後に残る余韻や構成への関心を集めている。

書籍情報

出版社
新潮社
発売日
2005-05-28
ページ数
435ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784104363018
ISBN-10
4104363014
価格
409 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

無数の橋が架かる泥の川。その流れにのせて運ばれる少年ポーの物語。いしいしんじは、とうとうこんな高みにまで到達してしまった!待望の書下ろし長篇。

レビュー

  • 感動!!

    この作品を読むと、自分が今こだわっているものや執着しているものが、とても無意味に思えてくる。もっと大切なものがあるのではないだろうか?そんな気持ちにさせられる。この世の中の全てのものには、必ず表と裏がある。だが、ポーにはなかった。ポーは表も裏も、ポーのままだった。そのことに気づいたとき、なぜか泣きたい気持ちになった。 「心の奥底で、間違ったことをしないのが大事。」 「うれしい大切なことより、悲しい大切なことの方が多い。だから悲しい分、いっそう大切に扱わなくてはならない。」 「目の前に、くっきり見えてるものしか信じられなくなるのが、いちばんつまらないし、いちばん悲しい。」 この作品の中で語られる言葉の一つ一つが胸に迫る。読後も、静かな感動が余韻となって、いつまでも心に響いていた。 オススメです!

  • 土用のうなぎは食べられませんでした

    ほとんど小説、というか物語は読んだことがなかった私ですが、友人にこの本を渡され、ほんとに久しぶりに読んでみました。本自体は読みやすく、一気に読んでしまったのですが、なんというか、後半みんな死んじゃって、ポーの孤独さが妙に心に残ってしまってしばらくしんどい思いをしました。作者は「こころの奥底で間違ったことをしない」というのを全うして生きていくことは孤独なんだといいたいのかもしれませんが、もうちょっとなんとか後味のよいものにならなかったのかな・・と軽薄な私は思ってしまいました。私が物語を読みなれてないせいもあるかと思うので、今後はいろいろ読んでみて自分の感受性を広げてみたいです。

  • ファンタジック大河小説。

    現代寓話の名手、いしいしんじさんの書き下ろし長編作品。 泥の中に潜りうなぎを捕まえて生活するうなぎ女たち。そんな彼女たちの間にある日「ポー」という男の子が生まれて……。 ポーの一生をめぐる、大河小説と言っていいくらいの壮大なお話です。 読むと感じるのですが、作者のいしいさんはとてもやさしくて、でもとても残酷で、純粋です(読んだ感想です。ご本人のことはわかりません)。 たぶん、そのせいでしょう。ほかの作品同様、この本にも上手く言えない、でもすごく重いものが心の底にしっかりと根をはるような感じを受けます。 重い、とにかく重い。 文章は柔らかいのに重い。 「生きる」意味を考えるきっかけになる小説です。

  • 犬じいさんだいすき。

    小説家というのは、上手に嘘をつく商売だという言葉を聞いたことがあります。 今ちょうどこの「ポーの話」を読み終わったところで、この言葉が頭に浮かびました。 無数の優しいイメージの連鎖。詩のような文体。物語の根底を流れる神話的な世界観。 なんていう作者のまったく豊かな嘘も心地よいのですが、 小難しいことなんかより、登場人物がどれもすばらしく魅力的です。 あまりに純粋なポー。シャイなメリーゴーランド。 意地っ張りのひまし油。天気読み。犬じいさん。うみうし娘。 誰が読んでもきっと、頭のなかにそのひとだけの登場人物の 姿が活き活きと浮かび上がるでしょう! それだけでも、十分楽しめると思います。

  • 印象は残る、言葉の響きも、しかし、感動の質は…

    初めて読んだいしいしんじの作品を、心の中で数ヶ月暖めてみた。何か発酵・熟成する想いが自分にあるだろうかと考えあぐねて。読むことは一気にできた。この一気に読めるということが曲者だ。不思議な印象、何となく頭に響くフレーズ、言葉の響きにのせられて、それこそ河の流れに運ばれるように物語世界に浸り、その語り口に自分の感覚が半ば麻痺したようになる。 癒しと同時に呪いにも似た諦め、汚泥にまみれた神聖さと清潔さ、相矛盾するものが交錯して、何か高みに昇華する感覚。しかし、明確に意識される感動の質を探すことができない。 マクベスの魔女にだまされたかのような、実は実体があったのかなかったのか、今まで読んだ世界は何だったのか? という思いにさいなまれる作品である。こんな作品、こんな文体があったのかという驚きに比例した感動が得られないという、じれったい感覚を持つのは私だけだろうか?

  • 暖かくてぬるーい

    温かくてぬるい泥の河の中に ぷかぷか浮いたような気持ちで 楽しむことが出来ました。 宮本輝の泥の河は、冷たくて流れが速そうだけど ポーの話の中では、洪水の中でも、なんだか温かそうに思えるのです。 のんびり出来るときに読むのがおすすめ

  • 巡り巡る時のなか

    『ポーの話』という素朴なタイトルと、その装丁の美しさにまず目を奪われました。 黒の地に描かれた、カラフルなのにしっとりと柔らかな印象のイラスト。うなぎ、飛んでいるのは鳩?、花、裏表紙にはうみうし。作品の世界を象徴するかのような月。 <きれいはきたない。きたないはきれい>……いしいしんじさんの作品を読むと、いつもこの言葉が頭の隅に浮かんできます。 この話も混沌としていて、自分の頭がいつもよりもっと悪くなったんじゃないか?という気がしてきます。 ポーの母たちである、泥の川に生きる「うなぎ女」のありさまは一種異様です。でも、ポーが生まれる場面やポーに対するうなぎ女たちの愛情は、原始的な母性を感じさせます。愛され守られる存在として生まれたポーが印象的。 ポーという存在は何かに喩えることができません。純真無垢といえばニュアンスがちょっと違うと私は思いますし、空っぽというのでもない。あえていうならば“何も書かれていない真っ白な紙”だと感じました。 “メリーゴーランド”、“ひまし油”、“天気売り”などの人々との出会いによって、ポーは人間が持つべき「感情」や「思い」を少しずつ理解していきます。 このポーの変化も粘着質な感じで、遭遇する出来事を逐一見て触って、相手の言葉を反芻して心にしまい込んでというような具合です。 悲惨な出来事、汚く賤しい言葉や仕打ち。ポーは川の流れとともに変わっていきます。川から海へ。水、うねり、流れ。その中で出会う者たち。 時代や場所も不明な物語の中、ポーが感じることをなぞりながら、第三部の老人達の心根にぐっときました。 説教臭いと感じた天気売りの言葉も、読みおえてみればポーと物語に対して必要なものだったと納得です。 うなぎ女たちの「スフスフ、スフスフ」という響きがいつまでも心に残っています。

  • 力強く逞しく,今が旬!

    泥まみれのウナギを捕まえる生業の女たちから、泥の川に産み落とされた少年ポー。彼が川を下りながら、さまざまな出会いや経験をして、最後は、大きなウナギと・・・。さまざまな経験っていったって、いしいワールドでの出来事だから、目がまん丸、口はあんぐり。ところが、さすが京都大学文学部仏文学科専攻の語り口。丁寧な文章ですわ。なぜか、そこに自分がいて、ポーの横顔を眺めている気分になってくるから不思議。不思議。どこまでも優しいポーといしいさんの視線。母であるうなぎ女たちのポーを守り、愛する姿。真摯な瞳で、表裏なく他者と関わるポーの姿。 汚く、気持ち悪いと差別批判されるものにあえて光を当てて、どうどうと流れる水の存在が、力強く逞しく、どこまでも続く生命の持続を感じさせてくれます。今が旬の作家さんです。一度堪能あれ。

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