青柳瑞穂の生涯: 真贋のあわいに
『青柳瑞穂の生涯』は、青柳いづみこによる作品。日本エッセイスト・クラブ賞の2001年回で受賞に選ばれ、同時代の文学・出版の中で評価された。
作品情報
日本エッセイスト・クラブ賞で受賞となった、青柳いづみこの『青柳瑞穂の生涯』。
『青柳瑞穂の生涯』は、青柳いづみこによる作品。日本エッセイスト・クラブ賞の対象作として、作品の構想や語り口が評価された。読者は、評伝, 記憶, 人物像を軸に、受賞当時の文学的関心をたどることができる。
書籍情報
- 出版社
- 新潮社
- 発売日
- 2000-09-01
- ページ数
- 316ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784104399017
- ISBN-10
- 4104399019
- 価格
- 880 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
Amazon.co.jp: 青柳瑞穂の生涯: 真贋のあわいに : 青柳 いづみこ: 本
レビュー
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美しいものは気持ちをなごませる。
青柳いづみこさんのピアノ演奏をTVでみて、青柳瑞穂氏のささやかな日本発掘をおもいだしました。 なんだか20代のころのわくわくした気持ちで読み進むことができました。 いいですねー。
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著者が自分の内面を見据えるために取り組まざるを得なかった作業
本書では、フランス音楽の解釈者である著者が、祖父であるフランス文学者、骨董収集家の生涯を検証している。特に高校生の頃、晩年の姿を見続けてきた体験を基に、戦前戦後の文学者の集まりである「阿佐ヶ谷会」を中心とした様々な人たちとの交友を、書き残されたものや関係者の話によって再構成し、血のつながった者としての直感で総括を加える。 この作業は、著者の父ほどではないにしても、祖父の生き方に受け容れられないものを多く見る一方で、結果的にフランスと怪奇趣味という(いやもっと深い人間層での)共通項を持つ自身の「血」に対するあきらめの思いを見つめつつ、祖父の生涯を自分なりにまとめることで、著者自身の生き方、在り方に対する「納得感」を覚えているのではなかろうか。 ピアニストであるとともにエッセイストでもある著者は、本書の中で音楽家としての本音を吐いている。XIII章「マルドロールの歌」では、こう吐露している。 「欧米で西洋音楽を演奏する場合、日本的美徳は欠点となることが多い。・・・本当の在り方とは、西洋人と同じ土俵に立ち、エキゾティズムを武器に使うことなく、しかし我々でなければ表現できないもの、生の形ではなく、いわば普遍化されたエキゾティズムを高度に芸術的に昇華された形でもちこむことではないだろうか・・・いっぽう、日本で西洋音楽を演奏する場合、状況は一変する。ロマンティシズムは日本的感傷にすりかえられ、客観的な解釈よりも主観的なアプローチが求められ、論理性より直感力、構造より細部の彫琢、深い音楽思想より表面的な優美さが評価される。」 ここで著者は、明治生まれの祖父がフランス文学を翻訳する際に痛感したであろう文化間のせめぎ合いを、演奏家として表現している様にも思う。 本書を十分に味わうには、ここに登場する文学者の作品や生き方に触れ、自分なりに比較検討しつつ熟考し、また、骨董の世界にある程度分け入る努力が必要なのだろう。ただ、そこまでやろうとしなくても、本書を通して、ある孫娘が祖父に対して敬意とため息をない交ぜにしながら、自分の内面を見据えるために取り組まざるを得なかった作業を目にすることができる。