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京都

毎日出版文化賞

京都

黒川創

地図から消されようとする小さな場所を起点に、京都の町に積み重なる生活と記憶を描く連作小説。半世紀にわたる人びとの営みを、土地の奥行きとともにたどる。

京都土地の記憶連作小説

作品情報

京都は、京都を軸に読者を作品世界へ導く。

地図から消されようとする小さな場所を起点に、京都の町に積み重なる生活と記憶を描く連作小説。半世紀にわたる人びとの営みを、土地の奥行きとともにたどる。

レビュー要約

  • 古都の名所性ではなく、地名や町の記憶に潜む複雑さを掘り下げる点が評価されている。静かな語りのなかに、失われる場所への切迫感がある。

書籍情報

出版社
新潮社
発売日
2014-10-31
ページ数
256ページ
言語
日本語
サイズ
13.9 x 2.1 x 19.7 cm
ISBN-13
9784104444076
ISBN-10
4104444073
価格
2860 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品

「平安建都千二百年」が謳われる京都で、地図から消された小さな町。確かにそこにいたはずの少年の自分と履物屋の夫婦。四つの「町」をめぐりながら人の営みの根源に迫る連作小説集。

レビュー

  • 「京都」がよくわかる小説です

    京都によく旅行します。もちろん観光客ですので、寺社仏閣、古い街並み、さまざまな伝統文化、食べものなどを目当てに行きます。ところが、京都で私に一番強い印象を与えたのは、全く何の変哲もない、街はずれの雑然として立て込んだ住宅街の雰囲気でした。私は神奈川県郊外の、「あっけらかん」とした街に生まれ育ちました(もちろんそこにも弥生時代から人は暮らしていましたが)。郊外の雑然とした街並みは同じでも、京都のそこでは何か、重い印象、誤解を恐れずに言えば「暗い印象」を受けます。もちろん日本のどこの街に行っても、その土地と、そこを舞台にした人々の暮らしの積み重なりがあるわけですが、この連作小説は実に見事に「京都」のそれを表現していると感じました。

  • 素晴らしい

    黒川創 京都 観光客にはわからぬ京都、そこに生きた人々の息吹き。

  • 奥深い京都の裏歴史

    京都伏見出身で昭和30年代生まれの私にとっては、自分や自分の周りの人々が描かれているとしか思えなかった。関西弁とはいえない京都訛りがしっかり表現されていた。特に伏見区は伏見訛りという独特の言葉遣いがあり、その部分やニュアンスが懐かしかった。 細かい地名や通りや筋をストリートヴューで調べながら読むとその変化の大きさや逆に変化の無さにタイムスリップしたような京都を味わえた。 どの短編もオチは無い。これが文学らしい。現在のネタバレを極端に嫌い、推理小説のようになんでも論理的帰結を求める読み手にはおすすめできないが、観光都市京都では無い奥深い京都を知りたい方は是非一読を。

  • 観光都市「京都」とは違う一面を丁寧に描写

    作者の黒川 創さんは、本サイトの紹介にもあるように1961年生まれの京都出身の作家です。同志社大学卒で、多くの文芸賞の受賞歴、芥川賞、三島賞の候補歴があるのを見ても力量のある作家なのは間違いないでしょう。 感心したのは、登場人物の描き方の精緻さ、そして住まいや環境の描写の細かさで、まるで作者の自伝のような趣が伝わってきました。 多くの文芸賞受賞のプロの作家の筆力の確かさをアマチュアの一介のレビュアーが述べるのもおこがましいのですが、まるで映画やドラマの1シーンを文章で表しているようで、登場人物の心情を覗き込んだような深ぼりが随所で読み取れました。 何れも中編ですが、連作でした。そこには京料理も芸舞妓も登場しません。一部の社寺仏閣も少し描かれていますが、土地の背景描写の添えものといった趣です。美しい京都というイメージは描かれていません。またその印象を払拭するような生々しい描写が本書の持ち味なのです。 当然、観光ガイドの役割は果たせませんし、逆に京都の知られざる一面を伺い知ることにつながるでしょう。 作者と同年代の登場人物が住んでいる4つの町がある種の「主人公」と言えます。 伏見稲荷大社のすぐ近くの「深草稲荷御前町」、京都大学の西部講堂の付近にあった小さな池の出来事をモティーフにした「吉田泉殿町の蓮池」、桂川や鴨川の下流の合流付近の「吉祥院、久世橋付近」、そして京都駅近くで近年は再開発のため付近が空き地だらけになった「旧柳原町ドンツキ前」の4つの作品名が、京都を知る者にとっては唸らされました。 それぞれ土地の歴史や背景、背負っている過去があり、それを象徴するような地名が主人公の人生を表しているのです。「地図から消された小さな町」というだけでその意味合いの困難さが伝わりました。土地の歴史は、住む人の人生まで左右するという命題が付きつけられているのです。そしてそこには濃厚な人間関係が存在し、市井の人々は懸命に生きたわけです。日本の高度成長期に忘れられていった過去なのかもしれません。それでも人びとの記憶は生き続けます。 京都出身の作家だからこそ描ける話で、また逆に小説にするのが難しい題材を扱っているのは驚きをもって読了しました。ここまで登場人物の背景を描けるのは、作者の自伝でなくとも、友人なり、知人なりある程度生まれや素性を知っているモデルがないとここまでの精緻さは有り得ないと感じました。取材は丁寧にされているのでしょうが、描写力の確かさ、そして描いたテーマの難しさで記憶に残る小説となりました。

  • 痛い

    自分の才能の無さを棚に上げて発言すると、こんな小説が書きたかった お涙ちょうだいの話では無くありのままの京都 例えば岡林信康の「手紙」や「チューリップのアップリケ」のマイナーコードでは無く(もちろんこの2曲にはこの曲の価値があるのだが) あっけらかんとしたGコードのアコーステックでこの問題を歌いたいと思った 彼らや僕たちはけして可哀そうなだけの被差別者では無かったし、単純なマイノリティーではなかった 地域と時代に照らし合わせれば十分にマジョリティーでもあったし 時には加害者でもあり差別者でもあっただろう だがそれは地域や血縁、民族だけの問題じゃない どこだって天国でもなく地獄でもありえない、(あの沖縄だって矛盾にあふれている) だからこそ地縁や血縁、民族や人種や国籍で人を差別する事はナンセンスなのだし、突き詰めれば結局は自分にとって良い奴か嫌な奴かと言う個人的な価値観に頼るしかないのだと思う だが、この問題は痛いのだ 今も変わらず...どんなに明るいメジャーコードで歌おうとも、どれだけ冷静に書き綴ろうとも、誰かに痛みを与え自らも傷つくのは間違えない...いつかこの問題が痛くない日が来るのだろうか... だが、いつかその日を迎えるために、決してこの問題を無かった事にはしないようにし、色々な意見や表現で自由に語れる場所を作らねばと思うのだが...

  • 移民・被差別、貧困・犯罪...;重く・暗いと敬遠し勝ちたったが、じっくり読まされた。良かった。

    一般普通の観光客としてある程度京都を旅したことはあるし、ついでに隣りの滋賀県(比叡山・延暦寺) や兵庫県(神戸の南京街や六甲山)にも多少行ったことがある。 その際、京都の街の被差別・貧困の噂話を聞かぬでもなかった(と思う)が、このところ「京都特集」的 な、学生のハチャメチャ(?)物語(≒都市伝説や学生伝説)や『細雪』や『古都』を彷彿とさせる三姉 妹物語(≒京都特有の地霊・亡霊的心情や特有の因習・習慣が伺える)を読んだあげく、本書は暗さや重 さが先行するように想像されて読むのを敬遠していたが、この際一気に読んでしまおうと思い、買って読 んだ。 四つの物語は、ある意味で予想通りだったが、意外に暗い気にはならなかった。四編は場所も内容も互い に独立的であるが、一部の人物が重なっており、構想の質の高さを感じた。また作者の実話的イメージが さりげなく埋め込まれているのではないか?という感じもした。 寡聞にして作者がどういう人物か知らないので、ネット情報をちょっと調べてみた。読み違いがあるかも 知れないが、幼少の時以来、鶴見俊輔に誘われうんぬん...とあり、なるほど作風と構成への好い意味での 鶴見氏の影響があるのかも知れないと思った。月並なレビュー表現だが、読みごたえがあった。好いと感 じた。 ★追伸 京都で「鶴見俊輔没後10年」のシンポジウムがあるらしい。本書の著者も登壇されるようだ。拝聴したい ところだが...。

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